最悪の夜
みここです。
まさかの本日三度目の初投稿。
薄靄のかかった意識がその音によって次第に覚醒していく。
ズサッズサッと何か重いものを引きずる音。それは不気味なことに僕の部屋にひどく反響した。
「んん……、こんな時間に誰なんだろ」
音は外から響いており、その音の主は廊下をゆっくりと歩いているような感じがした。
「ここの従者はみなゾンビだし、警備のゾンビでも徘徊しているのかな」
ここがナイトの住まう墳墓であったことを、はっきりし始めた意識で思い出しつつ、自分の身体が尿意を催していることに気づく。
「トイレって確か出て右だったな」
僕は、ベッドから足をおろし、部屋の扉の出口まで歩く。特に気にしているわけではないが、やはりこんな時間にゾンビを見るのは躊躇いがあったので、引きずり音が過ぎ去ったのを確認してから、ドアノブをひねった。
廊下はすこし寒かった。壁に立てかけられた松明の火も半分ほどまでに減っている。ナイトは倹約家でもあるようだ。まあこんなところに男一人で住まうのだ。貧乏性になるのも無理はない。
目的の部屋は出て右に曲がりその最奥に見つかった。道中、ヴァンやアートラスさんの個室の前を通ったが二人ともよく寝ているようで、音ひとつしなかった。もちろん先ほどのゾンビのように音を立てて起こすなんて無粋な真似はしたくなかったので抜き足差し足でトイレまで向かった。
洋式便座はひんやりとしていて、さらに体を冷えさせるには充分であったが、その放出した快感によって、不快感は相殺された。
そういえば身体は女の子なんだもんな。でもなぜか女の子の身体で困ったことないな、と。ちょっとした違和感を覚えたが、どうせあの神のおかげなのだろうとすぐに考えを切り捨てた。
用を済ませた僕は、来た道を同じく足音立てずに帰ろうとする。
すると、さきほど何も聞こえなかったヴァンの部屋から小さくうめき声のような声が聞こえる。ヴァンもここまで疲れてきたのだ、良くない夢でも見ているのだろうかと、少し心配になった僕はそっとヴァンの部屋を覗く。
半開きにしたドアからは、中が薄暗くてよく見えない。
仕方ないので僕はドアを開ききって中に這入る。視界が悪いのでヴァンの位置はうめき声だけを頼りに特定する。そうしておそらくヴァンの寝てるベッドの前に立つと、僕はそっと頭を撫でてやった。
そう、撫でてしまった。
ヌメリ、と。
その気持ち悪い感触を感じ、触れた手のひらを見る。
ようやく暗順応が昨日し始めたのか、手のひらに着いたそれを僕の脳は認識する。
それは――
それは、髪の毛と血がまじった人の皮膚だった。
「――ッ!!」
ぐるんと首を回したそれは、見開かれた眼球で僕の姿をとらえ、一言こういった。
「ミラ……助けて……くれぇ……」
かすれてはいたが、それはまぎれもないヴァンの声であった。
みここでした。
え、ヴァン、やばくね。
え、やばくね。




