協議機関『神話系ミーティング』発足
長い審議の末、テミスは決定事項を手元に揃えた。
コン、コン。
―木槌が二度、打ち鳴らされた―
テミス:「本会議は、神々、人間、英雄、精霊、怪物、その他の種族が抱える問題について、神話体系や勢力の垣根を越えて話し合う場とします」
神々が、テミスへ視線を向けた。
テミス:「目的は、特定の神の権威を高めることではありません。異なる立場から意見を出し合い、問題の解決策を探ること。そして――」
テミスは、机に積み上がった苦情の山を見た。
テミス:「神々の不用意な行動によって、新たな問題を増やさないことです」
数柱の神々が、静かに視線を逸らした。
テミス:「異議のある方は?」
誰も手を挙げなかった。
異議がなかったわけではない。
反対すれば、あの苦情を一件ずつ読み上げられる。全員が、その程度の先は読めた。
テミス:「では、承認とみなします。ここに『神話系ミーティング オリュンポス本部』の設立を宣言します」
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
その一打が、会議の始まりを告げた。
後にこの会議は、オリュンポスだけでなく、日本、北欧、魔界、そして異なる神話や宗教の領域へと広がっていく。
会議終了後――
会議終了後、テミスは一人、司会席に残っていた。
進行、発言整理、規則案の修正、採決。そして、議事録作成。
すべてを終えた頃には、用意されていたコーヒーはすっかり冷めていた。
エイレネ:「お母様、次回から書記を置いた方がよいのではありませんか?」
平和を司る女神エイレネ。テミスの娘であり、運営を補助するホーライの一柱が声をかけた。
テミス:「……検討事項に加えておきます」
この問題が正式に議題となるまで、テミスはしばらく司会と書記を兼任することになる。
こうして協議機関『神話系ミーティング』が設立された。
その前途は、発足初日から多難であった。




