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神話系ミーティング ~その問題、神々が議論します~  作者: すばる ゆう
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特別編 『登場神(人)物紹介』 —オリュンポス本部—

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


議題:登場神(人)物紹介を作ろう

司会:テミス

書記:ムネモシュネ

参集メンバー:オリュンポス本部の皆さん


投書者:神々の名前を覚えきれない読者


投書:

「会議に参加している皆さんが、どんな神様なのか知りたいです。

見た目の特徴や、何を司っているのか、会議では何をしているのかなど、簡単な紹介をお願いします」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



◇紹介文にも秩序を


テミス:「本日の議題は、私たちの紹介文の作成です」

ヘルメス:「ついに広報に本腰を入れるんですね」

ゼウス:「うむ。わしの偉大なる功績を知る、よい機会じゃ」

テミス:「一柱につき、簡潔にまとめます」

ゼウス:「まだ何も言っておらんじゃろ」

アテナ:「既に長くなる気配がしました」

ムネモシュネ:「紹介は、見た目、神格や逸話、会議での役回り、その他の特徴に分けます」

テミス:「紹介文の読み上げ後、本人と関係者から補足を受け付けます」

ヘルメス:「異議申し立ても?」

テミス:「事実に基づくものであれば」

ムネモシュネ:「過去の発言記録も用意しています」

ゼウス:「……ずいぶん準備がよいのう」



◇テミス


ムネモシュネ:「最初は、司会のテミスです」


【紹介】

秩序と掟を司る女神。天秤を象徴とし、会議では木槌を手に進行を担う。

神話系ミーティングの発起人であり、論点整理から脱線の制止、結論の取りまとめまで引き受ける苦労人。

公平で責任感が強いが、そのため仕事が集まりやすい。今日も胃が痛い。


テミス:「最後の一文は、必要でしょうか」

ヘルメス:「本部の現状を端的に表しています」

ゼウス:「もう少し気楽にやればよいのじゃ」

テミス:「では、次回から事前資料を読んで来てください」

ゼウス:「紹介の議題ではなかったか?」

ムネモシュネ:「胃痛の原因について、具体例が得られました」



◇ムネモシュネ


テミス:「続いて、書記のムネモシュネです」


【紹介】

青紫色の長い髪と紫の瞳を持つ、記憶の女神。九柱のムーサたちの母としても知られる。

会議では発言と決定事項を正確に記録し、過去の経緯を必要に応じて提示する。

神経衰弱など、記憶力がものをいう遊びでは圧倒的な強さを誇る。


ムネモシュネ:「補足はありません」

ヘルメス:「忘れてくれることはないんですか?」

ムネモシュネ:「何をですか?」

ヘルメス:「ほら、会議中の些細な失言とか」

ムネモシュネ:「どの失言でしょうか」

ヘルメス:「選べるほどあるんですね」

テミス:「次へ進みます」



◇ゼウス


ムネモシュネ:「続いて、ゼウス様です」


【紹介】

立派な髭と威厳ある風貌を備え、雷霆を携える天空と雷の神。オリュンポスの最高神。

数々の武勇伝を持ち、会議でも大きな方針を示す立場にある。

一方、自身の功績や名誉に話が向かうと、議論が長くなりやすい。恋愛に関する逸話も非常に多い。


ゼウス:「最後の一文を削って、武勇伝を増やすのじゃ」

ヘラ:「なぜなの?」

ゼウス:「……紹介の文量を整えるためじゃ」

アテナ:「現在、全員ほぼ同じ分量です」

ゼウス:「最高神としての特別枠は?」

テミス:「ありません」

ムネモシュネ:「原案どおりとします」



◇ヘルメス


【紹介】

翼のついた帽子とサンダルを身につけた、快活な青年神。

伝令、商業、旅、機知などと関わり、会議では情報収集や他本部との連絡、新しい品物の紹介を担う。

行動が早く、口も達者。その行動力によって議論が進むことも、別の騒動が始まることもある。


ヘルメス:「頼りになる感じだね」

アルテミス:「最後まで聞いていたの?最後の一言が特に重要じゃない?」

ヘルメス:「もちろん。何事にも多少の波はあるものだよ」

テミス:「多少の波で収まっていません」

ヘルメス:「…その説については件は反省しているよ」

ムネモシュネ:「細かな連絡に、引き続き期待します」

ヘルメス:「今更ながら、少し緊張してきたよ」



◇アテナ


【紹介】

兜をかぶり、灰青色の鋭い瞳を持つ、知恵と戦略の女神。槍と盾、梟が象徴的。

会議では条件を整理し、実行可能な策を考える参謀役。

冷静で合理的だが、勝負となれば采配にも熱が入る。


アテナ:「妥当な内容だな」

アレス:「もう少し、勝負に熱くなる部分を書いてもいいだろ」

アテナ:「勝つために必要な指示を出しただけのものだ」

ヘルメス:「勝負ごととか、になると全員の能力を比較してくるよね」

アテナ:「当然のことだ」

テミス:「紹介文から、特に修正する必要はなさそうですね」



◇アポロン


【紹介】

竪琴や弓、月桂冠が象徴的な、端正な青年神。

予言、音楽、医術、弓術など、幅広い分野と関わる。

会議では文化や芸術、専門知識の面から発言する。多才で自信に満ちており、理想を語る際には表現にも力が入る。


アポロン:「僕の担当分野だけで、かなり文字数を使ってしまうね」

ヘルメス:「削るなら、どこですか?」

アポロン:「どれも重要だな」

アルテミス:「では、今の長さでいいでしょう」

アポロン:「まだ補足していないんだけど」

テミス:「必要事項は入っています」



◇アルテミス


【紹介】

弓を携え、狩装束をまとった、狩猟と野生動物の女神。アポロンの双子の姉妹。

会議では動物や自然の立場から発言し、人間や神々の都合に偏った意見を見逃さない。毅然として率直。


アルテミス:「動物について話すなら、その扱いまで確認してほしいわね」

ヘルメス:「紹介文の確認ですよね?」

アルテミス:「あなたが持ってくる品物の話にも通じるでしょう」

ヘルメス:「仕入れ先への確認項目が増えました」

アポロン:「頼りになる姉妹だろう?」

アルテミス:「あなたも対象よ」



◇アレス


【紹介】

武具をまとった力強い体格の男神。戦争や闘争の激しさを体現する。

会議では武力や実行力の観点から、率直な意見を述べる。

考えるより先に動こうとすることもあるが、遠回しな議論に素朴な疑問を投げ込む存在でもある。


アレス:「よし。分かりやすい」

アテナ:「動く前に考える点は、改善の余地があります」

アレス:「考えた末に動かないこともあるだろう」

アテナ:「動かない方がよい場合もあります」

テミス:「お二人の議論は、別の機会に」

アレス:「俺の紹介なのに、もう止められたぞ」



◇プロメテウス


【紹介】

髭を蓄えた、誠実な紳士のような神。

人類に火をもたらし、その行いによって厳しい罰を受けた逸話で知られる。

会議では人間の生活や技術、文明の発展について助言する。人類への理解が深く、与えた力がどう使われるかにも目を向ける。


プロメテウス:「火を与えた後のことも、考え続ける必要があるからね」

ヘパイストス:「使い方と、扱う環境も重要だな」

ゼウス:「そもそも、わしに無断で――」

テミス:「過去の案件の再審議は行いません」

プロメテウス:「紹介のたびに蒸し返されては、困るところだった」



◇ヘラクレス


【紹介】

鍛え上げられた巨体を持ち、獅子の毛皮と棍棒を象徴とする英雄。

十二の難行を成し遂げた経験から、会議では実践する側、試練を受ける側の意見を述べる。

力仕事や競技では頼もしい存在。ただし「成長のための試練」という言葉には、少々思うところがある。


ヘラクレス:「少々?」

ムネモシュネ:「強い表現をご希望ですか?」

ヘラクレス:「十二もあったんだぞ」

アレス:「やり遂げたのだから、たいしたものだ」

ヘラクレス:「ありがとう。ただ、それを次の試練を増やす理由にはしないで欲しい」

テミス:「その意見は、教育に関する記録にも追記しておきます」



◇ヘパイストス


【紹介】

槌や工具を携えた、職人らしい男神。

鍛冶と工芸を司り、神々の武具や精巧な道具を作り出す。

会議では製作、構造、保守などの条件を確認する実務派。


ヘパイストス:「作れるかどうかと、作った後に維持できるかは別だからな」

ヘルメス:「紹介文を入れた自動案内装置なんて作れます?」

ヘパイストス:「仕様は?」

ヘルメス:「質問すると、その神について答えてくれる感じで」

ムネモシュネ:「記録との連携が必要ですね」

テミス:「新しい案件を始めないでください」



◇ヘラ


【紹介】

長い黒髪と深い柘榴色の瞳を持ち、王冠や孔雀の意匠をまとう女神。

結婚を守護し、ゼウスの妻として神々の女王の立場にある。

会議では婚姻や家族、責任の問題に厳しい意見を述べる。ゼウスの言動を見逃さない。


ヘラ:「最後の一文だけ、妙に具体的ですね」

ムネモシュネ:「会議での特徴として記載しました」

ゼウス:「もう少し、わしを信頼してもよいのではないか」

ヘラ:「信頼に関する資料を読み上げましょうか?」

テミス:「紹介は、この内容でよろしいですね」

ゼウス:「うむ。次へ進もう」



◇ポセイドン


【紹介】

三叉槍を携えた、威圧感のある男神。

海と地震に関わり、馬とも縁が深い。

会議では海や災害、生き物について発言する。過去の神話が議題の原因に関わっている場合には、言葉が少なくなることもある。


ポセイドン:「最後の説明は必要か?」

ヘルメス:「ミノタウロスの案件のときは――」

ポセイドン:「……」

ムネモシュネ:「このような場合です」

テミス:「分かりやすい補足が得られました」



◇ハデス


【紹介】

黒髪に黒衣、目の下には深いクマを持つ冥界の王。

死者の世界を治め、地下の富とも関わる。

会議では死後の扱いや冥界の業務を説明する。死に関わる話だからと、何でも担当できるわけではない。


ハデス:「最後の一文は、目立つようにしてくれ」

テミス:「重要な点ですね」

ゼウス:「クマは少し休めばよいのではないか?」

ハデス:「休んでいる間も、死者は来る」

タナトス:「こちらの担当も止まりません」

ムネモシュネ:「業務体制の課題として、別途記録します」

ハデス:「紹介だけで仕事が増えた気がする」



◇タナトス


【紹介】

黒髪と青白い肌、黒い翼を持つ青年神。

死を体現し、眠りの神ヒュプノスとは兄弟。

会議では死に関する実務と、その担当範囲を説明する。業務の線引きは明確で、死後の秘密資料の処分は担当外。


タナトス:「その認識でお願いします」

ヘルメス:「追加料金を払っても?」

タナトス:「担当外です」

アフロディーテ:「大切な秘密でも?」

タナトス:「担当外です」

テミス:「誤解の余地はなさそうですね」



◇アフロディーテ


【紹介】

華やかな装いと、人目を引く美しさを持つ女神。

愛と美、恋の欲望に関わる。

会議では感情や魅力、恋愛、芸術表現の観点から意見を述べる。理屈だけでは整理できない、人の心の動きに敏い。


アフロディーテ:「紹介文には、肖像も添えた方がいいんじゃない?」

アポロン:「芸術的に仕上げるなら協力するよ」

アテナ:「まず、公認する表現の範囲を確認するべきです」

アフロディーテ:「そうね。勝手なものを作られても困るもの」

テミス:「紹介文の作成後に、別途検討します」



◇ヘスティア


【紹介】

生成り色の衣に朱色の肩掛けをまとった、温かな雰囲気の女神。

炉の火と家庭の営みを守護する。

会議では食事や暮らしに根ざした提案をする。近所のおばちゃんのような親しみやすさがある、口癖は「あらあら」。


ヘスティア:「あらあら。よく見ているのねえ」

ヘルメス:「今の一言で、紹介が完成したよ」

ディオニュソス:「食べ物の話をしているときは、特に頼もしい」

ヘスティア:「あなたは、食べる前に飲み始めないようにね」

ディオニュソス:「まだ何も出していないんだけど」

テミス:「事前の注意は有効です」

ヘルメス:「お母さんかな?」



◇ディオニュソス


【紹介】

葡萄や酒杯を象徴とする、酒と陶酔の神。

葡萄酒、祭り、演劇などと関わる。

会議では酒造や酒文化について知識を提供する。ただし、酒の可能性を語るうちに、会議が宴会へ近づくことがある。


ディオニュソス:「紹介を聞きながら、少し味わえば理解も深まると思うんだ」

テミス:「試飲はしません」

ディオニュソス:「まだ勧めていないよ」

ヘスティア:「酒杯を出しているでしょう」

ディオニュソス:「……説明用だ」

ムネモシュネ:「紹介文の妥当性を確認しました」



◇モイライ


【紹介】

命の糸を紡ぐクロト、割り当てるラケシス、断つアトロポスの三女神。

糸や紡ぎ道具、鋏が象徴的。

会議の発足にあたり、神々に必要なのは話し合いであると助言した。短い言葉が、その後の大きな動きにつながる存在。


クロト:「始まったものが、随分と大きくなりましたね」

ラケシス:「各地に本部や支部もできました」

テミス:「ええ。相談できる相手が増えたことは、助かっています」

アトロポス:「会議時間の方は、なかなか切れませんね」

テミス:「……そちらにも、ご助力いただければ」



◇ホーライ


【紹介】

秩序、公正、平和と関わる、エウノミア、ディケ、エイレネの三女神。

季節の巡りとも結びつき、調和を保つ立場にある。

テミスの相談相手であり、会議の秩序を支える存在。場が荒れるほど、そのありがたさが増していく。


エウノミア:「まず、決めた規則を守っていただければ」

ディケ:「誰に対しても、公平に適用します」

エイレネ:「穏やかに終えられるのが、一番です」

ゼウス:「少しの余興くらいは――」

テミス:「本日は、紹介を終えることを優先します」



◇ニンフ代表


【紹介】

森や泉、山など、自然と結びついた精霊たちの代表。

会議では、神々の周囲で働く者たちの待遇や現場の問題を伝える。

穏やかな物腰だが芯は強い。


ニンフ代表:「紹介に、働く側の立場を入れていただけるのは助かります」

ゼウス:「日頃から感謝しておるぞ」

ニンフ代表:「ありがとうございます。では、保留中の待遇改善についてですが」

テミス:「その件は、紹介の後に確認しましょう」

ムネモシュネ:「保留案件を準備します」

ゼウス:「……記憶の女神は頼もしいのう」



◇サテュロス代表


【紹介】

獣の耳や尾など、人と動物の特徴を併せ持つサテュロスたちの代表。

酒や音楽、ディオニュソスの一行と関わりが深い。

陽気で酒好きだが、会議では宴を支える側、働く側の事情も伝える。待遇の問題まで笑って済ませるつもりはない。


サテュロス代表:「楽しそうに働いていても、休憩は必要なんだよ」

ディオニュソス:「それはそうだね」

サテュロス代表:「宴の最中と、宴の仕事中も別だからな」

ヘスティア:「飲み食いする人がいれば、準備と片づけをする人もいるものねえ」

ムネモシュネ:「業務と参加の区別について、記録します」



◇紹介文の取り扱い


テミス:「以上を、現時点の紹介文とします。今後、必要に応じて追記します」

ゼウス:「では、わしの功績の追加も――」

テミス:「新しく紹介すべき事実があれば」

ヘルメス:「今後の活躍次第ということだね」

アテナ:「会議での振る舞いも、紹介の内容に影響するということだ」

ゼウス:「むう……」

ヘスティア:「あらあら。それはいいわねえ」

ゼウス:「そうか。では、次回はわしが会議のお茶菓子を用意しよう」

ヘルメス:「急に周りに配慮し始めたね」

ゼウス:「部下たちに配慮もできるナイスガイ、……紹介の追記では?」

テミス:「まずは、実績をお願いします」


カン!

―木槌が強く打ち鳴らされた―


本日の紹介文は、ひとまず承認された。

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