後日談 第XX回 『食べられるように腐らせる方法』
後日談――発酵食品の取り扱いにはご注意を
オリュンポス本部。
長きにわたった発酵食品の会議は、ようやく幕を閉じた。
酒造、乳製品、発酵調味料。
人類の食文化は大きく発展し、会議の目的と手段を取り違えてはならないという教訓も得られた。
さらに、ホーライ三柱の介入によって、会議室の秩序も回復した。
テミスは、ようやく平穏な日常が戻ってきたと信じていた。
――しかし。
会議室には、まだ一つだけ忘れ物が残されていた。
◇忘れられた発酵食品
数日後。
オリュンポス本部、会議室。
職員たちは、次回の会議に向けて備品の点検を行っていた。
職員A:「……あれ?」
職員B:「どうしました?」
職員A:「こんなところに箱が」
会議室の隅。
棚の奥に、小さな木箱が残されていた。
表面には、見覚えのある筆跡で文字が書かれている。
『世界の発酵食品・参考資料』
職員B:「前回の会議のものですかね?」
職員A:「おそらく。酒類と料理は全部回収したはずですが……」
職員B:「中身を確認してみましょう」
箱の中には、一つの缶詰が入っていた。
職員A:「……魚の缶詰?」
職員B:「見慣れない文字ですね」
缶には、こう記されていた。
『Surströmming』
職員A:「シュール……ストレミング?」
職員B:「それにしても、この缶……少し膨らんでいませんか?」
職員A:「確かに。何か異常があるのかもしれませんね」
職員B:「担当者に確認しましょう。勝手に開けるのは危険ですし」
二人が箱を片付けようとした、そのときだった。
職員C:「何をしているんです?」
職員A:「前回の会議の忘れ物を見つけまして」
職員C:「ああ、缶詰ですか」
職員B:「ただ、少し膨らんでいるんですよ」
缶詰の蓋は少し丸みを帯びていた。
職員C:「中にガスが溜まっているんですかね?」
職員A:「その可能性はありますね」
職員C:「だったら、少し穴を開けて抜けば――」
職員B:「待ってください!!」
プシュッ。
缶詰の中でたまっていたものが一気に会議室中に解放された。
数秒後。
すさまじい異臭が広がる。
職員A:「……何だっ、この臭い!!」
職員B:「…………っ!!」
職員C:「うっ……!」
職員A:「窓! 窓を開けてください!!」
職員B:「全員退避! 早く!!」
職員C:「す、すみません!!」
その直後。
オリュンポス本部に、緊急の館内放送が響き渡った。
『会議室付近に異臭が発生しました。職員の皆様は、速やかに当該区画から退避して
ください』
なお、膨張した缶詰を安易に開封したり、穴を開けたりする行為は危険のため、してはいけない。
今回の事象は、不適切な取り扱いによる事故である。
◇オリュンポス本部、異臭騒動
しばらく後。
会議室の前には、テミスとムネモシュネが立っていた。
扉には、大きな貼り紙が掲示されている。
『立入禁止』
『異臭発生につき、原因調査中』
テミス:「…会議室が死んだようですが」
ムネモシュネ:「現在、当該会議室は使用停止となっています」
テミス:「……原因は?」
ムネモシュネ:「前回の会議で持ち込まれた発酵食品です」
テミス:「……発酵食品?」
ムネモシュネ:「シュールストレミングと呼ばれる、スウェーデンの伝統食品です」
そこへ、ゼウスとアレス、アテナが駆けつけてきた。
ゼウス:「何事だ!? 敵襲か!?」
アレス:「この臭い……毒ガスか!?」
テミス:「違います」
ゼウス:「では何だ!?」
テミス:「……魚です」
ゼウス:「……魚?」
ムネモシュネ:「シュールストレミングと呼ばれる発酵食品です」
アテナ:「シュールストレミング、ニシンを塩漬けにして発酵させた食品だったか」
アレス:「……食べ物なのか?」
ムネモシュネ:「はい」
ゼウス:「これが食品だと!?」
アレス:「食べ物が攻撃してくる時代になったのか!?」
テミス:「攻撃ではありません」
ゼウス:「では、なぜ会議室が封鎖されておる!?」
テミス:「……取り扱いを誤ったからです」
ゼウス:「しかし、ポセイドンが管理を誤ったのか?」
テミス:「本件にポセイドン様は関係ありません」
そこへ、ヘルメスが現れた。
ヘルメス:「あれ? みんな集まってどうしたの?」
テミス:「…………」
テミスはジト目でヘルメスを見つめた。
ヘルメス:「……ん?」
テミス:「ヘルメス」
ヘルメス:「はい?」
テミス:「この缶詰に、心当たりはありますか?」
ムネモシュネが、現場で撮影された缶詰の写真を見せた。
ヘルメス:「ああ! シュールストレミングじゃないか!」
テミス:「…………やっぱり、あなたでしたか」
ヘルメス:「前の会議で紹介しようと思って持ってきたんだよ」
テミス:「……なぜ、会議室に放置したのですか?」
ヘルメス:「ああ……」
ヘルメスは、少し考えた。
ヘルメス:「……忘れてたよ」
テミス:「…………」
ヘルメス:「いや、これは、ちゃんとした伝統食品なんだよ。適切に扱えば食べられるものだから」
テミス:「それは分かりました」
ヘルメス:「だから、食品自体に問題があるわけじゃ――」
テミス:「保管方法が間違っているんです!!」
カン!カン!カン!
テミスがどこから取り出したか、右手に木槌と左手に打撃板をもって、強く打ち鳴らした。
ヘルメス:「……悪かったよ、缶だけにカンカンだね」
テミス:「言ってる場合ですか!!会議室は食品保管庫ではありません!」
ヘルメス:「……はい」
テミス:「しかも、発酵食品の会議で衛生管理の重要性を議論したばかりでしょう!?」
ヘルメス:「……その通りだよ」
アテナ:「珍しく反論できないようだな」
ゼウス:「うむ。相当な失態だのう」
テミス:「ゼウス様も、前回の宴会騒動、忘れていませんからね」
ゼウス:「…………ワシもか」
アレス:「……巻き添えになったな」
◇入手経路
テミス:「……ところで、ヘルメス」
ヘルメス:「はい?」
テミス:「そもそも、その食品はどこで入手したのですか?」
ヘルメス:「北欧だよ」
テミス:「……北欧?」
ヘルメス:「この前、アースガルズに寄ったときにね。珍しい発酵食品の話になったんだ」
ムネモシュネ:「どなたから紹介されたのですか?」
ヘルメス:「ロキだよ」
一同:『…………』
ヘルメス以外の全員が押し黙った。
テミス:「…………」
ムネモシュネ:「…………」
ゼウス:「…………」
アレス:「……ああ」
アテナ:「…………なるほど」
ヘルメス:「何、その反応?」
テミス:「……続きをどうぞ」
ヘルメス:「いや、北欧にはこんな伝統食品があるんだって話になってさ」
少し前の出来事を思い出す。
――アースガルズ。
ロキ:「へえ、ヘルメス。世界中を飛び回ってるくせに、これを知らないのか?」
ヘルメス:「何だい、それ?」
ロキはニヤリと笑った。
ロキ:「北欧の伝統食品だよ。発酵食品に詳しいなら、当然知ってると思ったけど?」
ヘルメス:「……名前くらいは聞いたことがあるよ」
ロキ:「ははん、名前だけか?」
ヘルメス:「…………」
ロキ:「あれだけ世界中を旅してるのに?」
ヘルメス:「…………」
ロキ:「まあ、無理もないか。北欧の食文化は奥が深いからな」
ヘルメス:「……へえ。そんなにすごいのかい?」
ロキ:「そりゃあもう。一度体験したら、絶対に忘れられないと思うよ」
ヘルメス:「……なるほど」
ロキ:「オリュンポスの神々にも紹介してみたらいいんじゃないか? 発酵食品の会議をやってるんだろう?これは、確実に良いサンプルになるぞ」
ヘルメス:「それはいい!」
ロキ:「だろう?」
――回想終了。
ヘルメス:「……というわけで、手に入れてきたんだ」
テミス:「…………」
ムネモシュネ:「…………」
アテナ:「……煽られたな」
ヘルメス:「……え?」
ゼウス:「見事に乗せられておるのう」
ヘルメス:「…………」
テミス:「……ロキは、取り扱いについて何か説明しましたか?」
ヘルメス:「いや、特には……」
テミス:「…………」
ヘルメス:「でも、ちゃんとした食品なのは本当だし、ロキが何かしたわけじゃないだろう?」
テミス:「……それはそうですが」
ムネモシュネ:「なお、現時点でロキによる故意の関与を示す証拠はありません」
テミス:「ええ。今回の管理責任は、あくまでこちらにあります」
ヘルメス:「……だよね」
テミス:「特に、あなたです。」
ヘルメス:「……はい」
アレス:「しかし、あいつ……」
ゼウス:「……うむ」
二柱は顔を見合わせた。
テミス:「……何ですか?」
ゼウス:「いや、何でもない」
ムネモシュネ:「なお、アースガルズへの正式な照会は必要でしょうか?」
テミス:「……いいえ。今回は不要です」
ヘルメス:「そうだよね。ロキは紹介しただけだし」
テミス:「ただし」
ヘルメス:「?」
テミス:「今後、参考資料を持ち込む際には、入手経路だけでなく、保管方法と安全性も確認してください」
ヘルメス:「……はい」
テミス:「特に、誰かに煽られて持ち込むようなことはしないでください」
ヘルメス:「…………」
アテナ:「……図星だな」
◇会議室、使用停止
その後、職員たちによる清掃と安全確認が進められた。
しかし、異臭の影響は予想以上に大きかった。
ムネモシュネ:「会議室の復旧には、もうしばらく時間が必要との報告です」
テミス:「……そうですか」
ムネモシュネ:「次回の会議は、別室での開催を予定しています」
テミス:「……時間を置いて、匂いが消えるまで寝かせるしかありませんね」
ヘルメス:「……発酵食品だけに?」
テミス:「笑い事ではありません」
ヘルメス:「……はい」
ゼウス:「しかし、あれだけの臭いを出せるとは……」
アレス:「戦場で使えば――」
テミス:「使わないでください!!」
カン!カン!カン!
アレス:「……まだ何も言ってない」
テミス:「言わなくても分かります」
ヘルメス:「……何だか、ディオニュソスのときと同じだね」
テミス:「あなたも反省してください」
ヘルメス:「……はい」
◇ヘルメスの謝罪
さらに数日後。
オリュンポス本部、テミスの執務室。
コンコン。
その扉をノックする者がいた。
テミス:「どうぞ」
ガチャ。
ヘルメス:「失礼するよ」
テミス:「ヘルメス。何か用ですか?」
ヘルメス:「この前の件、改めて謝罪に来たんだ」
テミス:「…………」
ヘルメス:「会議室の復旧も大変だったみたいだし」
テミス:「ええ。大変でした」
ヘルメス:「本当に悪かったよ」
テミス:「……分かりました。今後は十分に注意してください」
ヘルメス:「それで、お詫びにと思って」
ヘルメスは、小さな包みを取り出した。
テミス:「……何ですか?」
ヘルメス:「コーヒー豆だよ」
テミス:「コーヒー?」
ヘルメス:「珍しいものを見つけたんだ。テミス、コーヒー好きだろう?」
テミス:「……ええ」
ヘルメス:「コピ・ルアクっていうんだ」
テミス:「……聞いたことはありますが」
ヘルメス:「独特の製法で知られる、高級コーヒーだよ」
テミス:「……そうですか」
テミスは警戒しながらも包みを受け取った。
ヘルメス:「今回はちゃんと焙煎された豆だからね。缶詰じゃないよ」
テミス:「そこは評価します」
ヘルメス:「よかった!」
テミス:「では、せっかくですから淹れてみましょう」
しばらく後。
部屋に、コーヒーの香りが広がった。
テミス:「……いい香りですね」
ヘルメス:「だろう?」
テミスはカップを持ち上げた。
一口。
ヘルメス:「どう?」
テミス:「……美味しい」
ヘルメス:「よかった!」
テミス:「独特の風味がありますが、珍重される理由も分かります」
ヘルメス:「そうだろう?」
テミス:「ところで」
ヘルメス:「ん?」
テミス:「独特の製法、と言いましたね?」
ヘルメス:「うん」
テミス:「具体的には、どのような?」
ヘルメス:「ジャコウネコっていう動物がいてね」
テミス:「はい」
ヘルメス:「その動物がコーヒーの実を食べるんだ」
テミス:「なるほど?」
ヘルメス:「それで、消化されずに排出された種子を回収して――」
テミス:「…………」
ヘルメス:「洗浄して、乾燥させて、焙煎したものだよ」
テミス:「…………」
ヘルメス:「どうしたの?」
テミスは、静かにカップを置いた。
テミス:「……つまり」
ヘルメス:「うん?」
テミス:「動物の体内を通過した豆、ということですか?」
ヘルメス:「そういうこと!」
テミス:「…………」
ふと、先日の発酵食品会議が脳裏をよぎった。
オオゲツヒメが提供した味噌汁。
ヘルメスが投げかけた質問。
『それ、どこから出したの?』
テミス:「ヘルメス」
ヘルメス:「はい」
テミス:「あなた、以前オオゲツヒメに何を聞きました?」
ヘルメス:「……え?」
テミス:「食べ物をどこから出したのか、確認していましたね?」
ヘルメス:「…………」
テミス:「それなのに、なぜ今回は説明しなかったのですか?」
ヘルメス:「聞かれなかったから……」
テミス:「…………」
ヘルメス:「……悪かったよ」
テミス:「…………」
再び、コーヒーカップを見る。
ヘルメス:「……飲まないのかい?」
テミス:「…………」
少し迷う。
そして、もう一口。
テミス:「…………」
ヘルメス:「……どう?」
テミス:「…………」
長い沈黙。
テミス:「美味しいのが一番納得いきません……」
ヘルメス:「…………」
テミスは葛藤しながらコーヒーを飲む。
その様子を眺めるヘルメスは微笑を浮かべ満足気であった。
なお、コピ・ルアクの生産には、ジャコウネコの飼育環境や動物福祉に関する問題も指摘されている。
後日、この件を知ったアルテミスから、野生動物の取り扱いについて別途確認するよう要請があったという。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
―議事録—
議題:食べられるように腐らせる方法 / 前後編・後日談統合記録
開催場所: オリュンポス本部
司会: テミス
書記: ムネモシュネ
参集メンバー: ゼウス、ヘルメス、アテナ、アポロン、アルテミス、アレス、プロメテウス、ヘスティア
参考人: ディオニュソス、大宜都比売神、松尾大神、ほか酒造関連の神々
投書者: 冬を憂う名もなき村人
一、投書内容
毎年、冬になると食べ物が足りなくなって困っています。夏や秋に採れた食べ物を冬まで保存しておきたいのですが、どうしても腐ってしまいます。
そこで思ったのですが、いっそのこと食べられるように腐らせてしまえば、長持ちするのではないでしょうか?何か上手い方法はありませんか?
二、審議概要
冬季の食料不足を解消するため、微生物の働きを利用した食品加工技術、すなわち発酵について審議した。
その結果、発酵技術は一部食品の保存性を高めるほか、酒造、乳製品、調味料などの発展を通じて、人類の食文化に大きく貢献することが確認された。
一方、発酵のみでは長期保存が保証されず、当初の目的である冬季の食料確保については、継続的な検討が必要と判断した。
三、審議内容と成果
区分 審議内容と主な成果
第一次技術提供酒造とアルコール発酵葡萄酒、蜂蜜酒、穀物酒などの発展
第二次技術提供乳製品の加工と発酵発酵乳、チーズなどの加工技術の発展
第三次技術提供発酵技術の料理への応用味噌、醤油、酢などの製法・活用方法
の共有
追加審議
日本酒の製法麹による糖化と酵母による発酵の仕組みを確認
保存性の検証発酵食品の長期保存食品の種類、塩分、水分、温度、衛生状態などによって保存性が異なることを確認
発酵は有益な食品加工技術であるが、発酵食品であることをもって、安全性や長期保存性が保証されるものではない。
四、会議運営上の反省と改善
① 目的と手段の混同
本会議では、投書者の提案した「食べられるように腐らせる」という方法に注目するあまり、本来の目的である「冬季の食料不足の解消」が十分に検討されていなかった。
これを受け、以下の原則を採用した。
『投書の提案ではなく、投書者が解決したい問題を見極めること』
② 会議成果の相互活用
ヘルメスより、食料生産、道具の改良、交易、物流など、過去の会議の成果を組み合わせることで、冬季の食料問題を補完できるのではないかとの提案があった。
関連議事録を照合した結果、複数の成果を相互に活用する余地が確認された。
よって、以下の原則を追加した。
『各会議の成果を相互に活用し、問題の解決につなげること』
今後、関連議題の照合および情報共有を強化する。
五、最終決議
1. 発酵技術の普及を正式に承認する。
2. 酒造、乳製品加工、発酵調味料などの発展について成果を確認する。
3. 発酵技術の長期保存への有効性は、食品および管理条件によって異なるものとする。
4. 冬季の食料確保については、乾燥、塩蔵、燻製など、発酵以外の保存方法も含めて継続審議とする。
5. 今後の会議では、目的と手段の区別、および関連会議の成果活用を徹底する。
総合評価:発酵技術の普及は成功。当初の目的である冬季の食料確保については、部分的な成功にとどまる。
六、投書者への正式回答
発酵技術を利用することで、食品の保存性を高められる場合があります。
ただし、発酵させれば必ず長期保存できるわけではありません。食品の種類や製法によっては、発酵後も短期間で傷んでしまうため、塩分、水分、温度、衛生状態などの管理が必要です。
一方、発酵技術は食品の風味や性質を変化させ、乳製品、酒、調味料など、多様な食品の発展に貢献しました。
冬を越すための食料保存については、発酵以外の技術も含め、引き続き検討することとします。
七、後日談および特記事項
① 会議室における無許可の飲食
酒造関連の神々による無許可の飲食が発生し、審議の進行に支障をきたした。
また、正式な審議終了後に『酒に合う最高のツマミについて』という追加議題が提案されたが、ホーライ三柱による正常化措置によって収拾された。
これを受け、会議室への無許可の酒類持ち込み、および会議終了後の無許可の宴会を禁止した。
② シュールストレミング異臭騒動
ヘルメスが参考資料として持ち込んだスウェーデンの発酵食品、シュールストレミングが会議室に放置された。
後日、職員による不適切な取り扱いによって異臭が発生し、会議室が一時使用停止となった。
当該食品は、アースガルズにおいてロキから紹介されたものであることが判明した。
ただし、ロキによる故意の関与を示す証拠はなく、正式な照会は実施しなかった。
主たる管理責任は、持ち込んだヘルメスおよび本部の管理体制にあると判断した。
今後、参考資料として食品を持ち込む際には、保管方法、安全性、回収方法を事前に確認することとする。
③ 謝罪品に関する追加確認
ヘルメスより、異臭騒動に対する謝罪品としてコピ・ルアクが提供された。
テミスによる飲用の結果、風味については良好な評価が得られた。
一方、その製法について説明を受けた後、提供時の情報共有が不十分であったことが指摘された。
また、アルテミスより、ジャコウネコの飼育環境および動物福祉に関する確認要請が提出された。
当該事項については、別途確認することとする。
八、残された課題
- 冬季の食料確保に向けた保存技術の追加検討
- 関連会議の議事録照合と成果の相互活用
- 食品の持ち込み、保管、回収に関する管理体制の強化
- 発酵食品の衛生管理および安全性の確認
- 動物由来の食品・嗜好品に関する動物福祉上の課題
九、書記所見
本会議は、冬季の食料保存という問題を出発点とし、人類の発酵技術と食文化の発展に大きく寄与した。
一方、議論の目的と手段を混同したことは、今後の会議運営における重要な反省事項である。
また、個々の会議の成果を相互に活用することで、複合的な問題の解決につなげられる可能性が確認された。
今後は、記録の保存だけでなく、関連議題の照合および情報共有にも努めたい。
なお、本会議および後日談を通じて、以下の事項が改めて確認された。
発酵技術の普及が成功したことと、会議室で酒宴を開催してよいことは、別問題である。
発酵食品であることと、適切に保管されていることも、別問題である。
また、参考資料の選定に際しては、紹介者の言葉のみを判断材料とせず、必要な情報を確認することが望ましい。
最後に、コピ・ルアクに関するテミスの評価については、以下の発言を原文のまま記録する。
『美味しいのが一番納得いきません……』
なお、味覚に関する評価と、製法に対する心理的な納得は、必ずしも一致しないものと考えられる。
以上
書記:ムネモシュネ
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