協議機関の名称について
アテナ:「協議機関を設けるとして、正式名称は決まっているのか?」
テミス:「事前に案を用意しています」
テミスは一枚の資料を掲げた。
中央には、大きく記されていた。
★『神話系ミーティング』
しばし、沈黙。
ヘルメス:「……少し、名前がフワッとしていないかい?」
テミス:「承知しています」
ゼウス:「もっと威厳のある名前がよいのではないか。“全世界神族最高会議”などはどうだ」
アテナ:「オリュンポスが全世界を代表していると受け取られます」
テミス:「他神話体系との外交問題になるため却下します」
アレス:「“神々の頂上決戦”」
テミス:「戦わないでください」
ポロン、ポロン。
竪琴の音が響いた。
アポロン:「“天上の舞台で語る、神々の美しき旋律と太陽の光――”」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
テミス:「却下します」
金髪に月桂樹の冠を戴く青年、アポロン。太陽と芸術を司る男神の案は、名前になりきる前に却下された。
ディオニュソス:「“神宴”」
テミス:「酒宴でもありません」
アフロディーテ:「もう少し華やかな名前でもよいのではなくて?」
淡く輝く蜂蜜色の髪に、海を思わせる青緑の瞳。愛と美を司る女神アフロディーテが口を開いた。
その声と姿に、周囲の男神たちが色めき立つ。
アテナ:「“人界干渉事前調整及び事後対応協議会”なら、目的は分かりやすい」
ヘルメス:「硬いね。名前を言い終える前に会議が終わりそうだ」
アルテミス:「“オリュンポス会議”だけでは駄目なの?」
月と狩猟を司る女神アルテミス。光の具合で金とも銀とも見える髪を編み込んでまとめている。
弓の名手らしく、意見も簡潔だった。
テミス:「特定の神話、地域、宗教、神格、思想および勢力を名称に入れると、参加範囲が限定されます」
ポセイドン:「だから“神話系”か」
テミス:「はい。“系”を付けることで、神々以外の精霊、英雄、怪物、悪魔、天使、人間その他の関係者も参加可能とします」
アポロン:「“ミーティング”である理由は?」
テミス:「“神議”“神託会議”“万神評議会”なども検討しましたが、いずれも特定方面から異議が出る可能性があります」
テミスは説明を続けた。
ゼウス:「要するに、どこからも怒られにくい名前にしたのだな」
テミス:「いろいろな方面への配慮です」
ヘルメス:「具体的には?」
テミス:「具体的に説明すると、配慮した意味がなくなります」
別案を出すたび、新たな問題が増えた。
名称について、積極的な賛同は少なかった。しかし、積極的に次の案を出す者もいなくなった。
テミス:「名称は『神話系ミーティング』とします。異議は?」
誰も手を挙げなかった。
テミス:「では、承認とします」
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
消極的な全会一致だった。




