発足会議の議題の確認
アテナ:「発足会議ということは、今日は個別の苦情を審議するのではなく、それを扱う仕組み自体を決めるということか」
知恵、戦略、技芸を司る女神アテナ。兜を被った彼女の理解は早い。
肩に乗った白いフクロウも頷いた。
テミス:「その通りです。これまで、神々による干渉で問題が起きた場合、その都度、私やホーライたちが関係者を呼び出して注意してきました」
アテナ:「効果は?」
テミス:「限定的でした」
アレス:「俺は毎回、反省しているぞ」
テミス:「反省した直後に、次の戦場へ向かっていきました」
アレス:「反省と戦は別の話だ」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
テミス:「そうした認識の差も含めて、個別注意だけでは限界があります」
ポセイドン:「ならば、問題を起こした神をその場で罰すればよい」
青い波打つ髪から鋭い眼光をのぞかせる、海と地震を司る男神ポセイドン。三又の槍を掲げて言った。
テミス:「その罰が新たな問題を引き起こす可能性があります」
神々の多くが、テミスから目を逸らした。
罰の話になると、急に目が合わなくなる会議だった。
テミス:「問題が起きてから責任を問うだけではなく、事前に関係者が集まり、意見と影響を確認する場が必要です」
アテナ:「異なる領分を持つ神々が、互いの判断を確認する。合理的だ」
ヘルメス:「つまり、誰かが人類へ何かを与えたり、奪ったり、変身させたり、滅ぼしかけたりする前に、一度ここへ伝令を持ってくるわけだね」
羽の付いた帽子を被った青年、ヘルメス。伝令と商業などを司る男神は、最高神を見ながら言った。
ゼウス:「なぜ最後の方だけ、こちらを見ながら言う?」
ヘラ:「心当たりがあるからではなくて?」
艶やかな長い黒髪に、柘榴色の瞳。王冠を戴く神々の女王ヘラは、ゼウスの妻であり、結婚と母性を司る女神である。
その瞳が、剣吞な色を帯びた。
最高神夫妻は、すでに一触即発だった。
カン!
―木槌が強く打ち鳴らされた―
テミス:「私情を議題へ持ち込まないでください。まだ規則を決める前ですが、すでに必要性が証明されています」
二人の喧嘩が周囲を巻き込むことは、過去の被害が証明していた。
夫婦仲が続いている理由だけは、まだ解明されていない。




