第XX回 『日本神々協会によるミーティング本部設立の相談依頼』-オリュンポス本部-
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議題:日本神々協会によるミーティング組織設立相談
開催場所:オリュンポス本部
司会:テミス
書記:ムネモシュネ
審議区分:通常審議・神話圏交流
参集メンバー
出席:ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、ヘルメス
ゲスト:天照大御神、須佐之男命、思兼神、建御雷神、菅原道真、他日本の神々
投書者:天照大御神
投書:
「日本の神々でもミーティングを開いて問題に対処しようという話になりました。
つきましては、人選、会議運営の方法についてご教授をお願いします」
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コン、コン。
―木槌が二度、打ち鳴らされた―
テミスの木槌がミーティングの開始を告げる。
テミス:「それでは、第XX回神話系ミーティングを開始します。本日は、日本の神々の皆様より、会議組織の設立について相談をいただいております」
アマテラス:「本日は、よろしくお願いいたします」
天照が深々と頭を下げた。
それに続いて、日本の神々が一斉に頭を下げた。
アテナ:「礼儀正しいな」
テミス:「こちらも、よろしくお願いいたします」
ゼウス:「ついに、我々の会議制度が外国からも評価されたか!」
テミス:「まだ相談を受けただけです」
ヘルメス:「成功事例として視察に来たとは、まだ誰も言ってませんよ」
テミス:「失敗事例も含めて説明します」
ゼウス:「失敗事例?」
アテナ:「豊富にあるな」
ゼウス:「……」
ムネモシュネは、無言で記録した。
◇会議を運営するには何が必要か
テミス:「まず、最低限必要なのは司会と書記です」
アマテラス:「司会と書記の、二人ですか?」
テミス:「はい。司会は議論を整理して、結論へ導く役割。書記は発言、決定事項、継続課題を記録する役割です」
ムネモシュネ:「両方を一人で行うことも、不可能ではありません。ただし、会議が大きくなるほど、分離した方が安定します。前例からも、兼任はお勧めできません」
テミス:「……実体験です」
アマテラス:「なるほど。理解しました」
天照は、深く頷いた。
テミス:「さらに重要なのは、最高責任者と司会を、必ずしも同一人物にしないことです」
アマテラス:「では、私が司会を務める必要はないのですか?」
テミス:「ありません。むしろ、全体を統括する立場と、中立的に発言を整理する立場は分けた方がよいでしょう」
ゼウス:「最高神が司会でもよいのではないか?」
テミス:「推奨しません」
ゼウス:「なぜだ!?」
テミス:「オリュンポスの場合で例えてみましょう」
テミスはホワイトボードに、大きく書いた。
★ 結論 = ◎雷を落とす!
テミス:「すべて、これになります」
アマテラス:「……納得しました」
天照は小さく頷いた。
ゼウス:「納得するのか!?」
ヘルメス:「説得力があるね」
オリュンポスの神々も頷いた。
ゼウス:「雷は、神の威光を示し、すべての物事を解決する偉大な力だぞ!」
アマテラス:「納得しました!」
今度は、力強く頷いた。
ゼウス:「二回言った!?」
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
◇司会を決める
テミス:「では、日本の神々で、議論の整理、調整、公平な進行に適した方は?」
日本の神々が顔を見合わせた。
そして、ほぼ同時に一柱を見た。
黒い長髪に穏やかな表情。知的な雰囲気を漂わせる男神、思兼神。
知恵を司り、天照を岩戸から出す際には、集まった神々へ対応策を授けた神である。
オモイカネ:「……私ですか」
スサノオ:「まあ、お前だろ」
アマテラス:「岩戸の時も、皆の知恵をまとめてくれましたしね」
日本の神々:「異議なし!」
岩戸隠れで苦労を分かち合った神々から、賛同の声が響いた。
アテナ:「知恵の神であり、複数の意見を整理する役割を持つ。適任だろう」
テミス:「私も賛成します」
オモイカネ:「承知しました。では、会議運営について検討するための事前会議を――」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
テミス:「少し待ってください」
オモイカネ:「何か、まずいことがありましたか?」
テミス:「会議を開くための会議を増やしすぎないこと。これも重要な運営原則です」
オモイカネ:「……覚えておきます」
ムネモシュネ:「重要事項として記録します」
こうして、日本側の司会は思兼神に決定した。
◇書記を決める
テミス:「では、次に書記です」
アマテラス:「書記というと、字が上手な方とかでしょうか?」
ムネモシュネ:「求められるのは、単純な書き取り能力だけではありません。誰が何を言ったのか。正式決定と単なる意見は、どう違うのか。次回へ持ち越す議題や課題は何か。それらを整理して残す能力です」
ムネモシュネは、一冊の議事録を取り出した。
ムネモシュネ:「参考までに、オリュンポスで書記を設置した際の議事録です」
天照と思兼に、議事録が手渡された。
オモイカネ:「テミス殿が、自ら投書されているのですね」
思兼は、議事録に目を通した。
オモイカネ:「……先に見せてもらえて助かりました」
テミス:「分かってもらえましたか」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
アマテラス:「そうなると、候補者は?」
オモイカネ:「文学に明るいことに加え、実務の経験がある者なら心強いと思います」
アマテラス:「と申しますと?」
オモイカネ:「道真殿などは、いかがでしょうか?」
アマテラス:「ミチザネ……?」
???:「私ですか」
ぼそりと声がした。
次の瞬間、天照の真横に、烏帽子を被り眼鏡をかけた男が現れた。
テミス:「キャアッ!」
アマテラス:「きゃあああぁぁ! 誰ですか!」
ミチザネ:「申し遅れました。菅原道真と申します」
スサノオ:「姉貴、生娘みたいな反応の良さだな」
オモイカネ:「もう一つ、かわいらしい悲鳴が聞こえた気がしましたが……」
アマテラス:「驚かせないでください!」
……コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
菅原道真。学問の神として知られ、日本三大怨霊の一人にも数えられる。
生前には、大臣としての実務経験もあった。
ミチザネ:「つまり、書記の役割とは、ただ言葉を書き残すことではなく、後世に正しく伝わる形へ整えること、ということですな」
ムネモシュネ:「その通りです」
二人の間に、妙な意気投合が生まれた。
ヘルメス:「もう決まりでいいんじゃないか?」
オモイカネ:「私も、道真殿が適任だと思います」
アマテラス:「驚かすのを抑えていただければ、異論ありません」
スサノオ:「字もうまそうだしな」
アテナ:「判断基準が急に甘くなったな」
テミス:「では、菅原道真殿。日本側の正式な書記をお願いできますか?」
ミチザネ:「承知いたしました。微力ながら、務めさせていただきます」
ムネモシュネ:「後ほど、議事録の様式をお渡しします」
ミチザネ:「ぜひ、お願いします」
こうして、日本側の基本体制が決定した。
★司会:思兼神
★書記:菅原道真
◇誰を会議に呼ぶか
アマテラス:「日本には八百万の神々がおります。どこまで参加させるべきでしょう?」
テミス:「全員は無理です」
即答だった。
オモイカネ:「そうですね。会議室にも入りませんし」
テミス:「常任参加者は少数に限定しつつ、異なる立場や領域の意見を集められるようにします。専門的な案件については、関係する神をゲストとして招く方式を推奨します」
オモイカネ:「常任参加者を中心に会議を運営し、必要に応じて専門家を呼ぶ、と」
テミス:「はい」
話し合いの結果、当面の中心メンバーとして、天照、月読、須佐之男、木花咲耶姫、大国主神、建御雷神などを軸とする案が出された。
議題に応じて、稲荷神、妖怪代表、その他の神々を招く方式である。
スサノオ:「妖怪も入れるのか?」
オモイカネ:「人間社会への影響を考えれば、神々だけで話を完結させるべきではないでしょう。幸い、『神話系』ですし」
テミス:「良い判断だと思います」
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
◇会議の基本ルール
テミス:「次に、これまでの経験から得られた注意事項をお伝えします」
ゼウス:「そこまで規則が必要かの?」
テミス:「ゼウス様。何か言いましたか?」
テミスの視線が、ゼウスを鋭く射抜いた。
ゼウス:「いや」
テミス:「では、続けます」
テミスは資料を読み上げた。
『議題と無関係な武勇伝を始めないこと。』
ゼウスが目を逸らした。
雷と武を司り、国譲りの神話でも知られる建御雷神も、少し目を逸らした。
『過去の家族間の争いを蒸し返さないこと。』
ヘラがゼウスを見た。
天照が須佐之男を見た。
須佐之男が天照から目を逸らした。
『人類滅亡を安易な解決策として提案しないこと。』
ゼウス:「……」
スサノオ:「……」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
テミス:「なぜ、両陣営から目を逸らす者が出るのですか」
さらに、次の規則が共有された。
・会議中に神罰を執行しないこと。
・議題から脱線した場合は、司会の指示に従うこと。
・決定事項と継続審議事項を、明確に分けること。
オモイカネ:「非常に参考になります」
テミス:「主に、実際に起きたことから作られた規則です」
オモイカネ:「……非常に参考になります」
◇投書制度
アマテラス:「こちらで使われている投書制度も、導入したいですね」
テミス:「そうですね。神々だけで議題を考えるより、人間側が実際に困っている問題を把握できます」
ヘルメス:「本人からの投書とか、変な内容の投書とか、とんでもないものもあるけどね」
アマテラス:「どれほどあるのですか?」
テミスが、過去の投書資料を机に置いた。
ドン。
さらに置いた。
ドン。
もう一冊。
ドン。
アマテラス:「……なるほど。多いですね」
テミス:「簡単に説明しますと、神に対する願いの数だけ来ます」
テミスは資料の山を整えた。
テミス:「投書の一次確認は事務局が行います。明確ないたずら、同一内容の重複、神々への単なる誹謗中傷などを除外し、残ったものを議題候補として整理しています」
オモイカネ:「事前選別が必要ですね。それを担当する機関も」
テミス:「その通りです」
アマテラス:「しかし、日本の場合、人間からだけでなく、全国の神々からも要望が来る可能性がありますね」
全員が考えた。
八百万。
ミチザネ:「……分類法を整理して、受付段階できちんと分けましょう」
オモイカネ:「賛成です」
テミス:「その判断を聞いて、安心しました」
◇名称について
ゼウス:「ところで、日本側の名称はどうするのだ?」
アマテラス:「日本神々協会ミーティング本部、ではいけませんか?」
ゼウス:「本部は、ここでは?」
オリュンポス最高神のプライドだった。
テミス:「また面倒な話を……」
オモイカネ:「既存の神話系ミーティングの枠組みを利用するのであれば、日本側は『日本支部』とする方が分かりやすいのではないでしょうか」
アマテラス:「なるほど」
ミチザネ:「日本独自の運営権は維持する、と」
テミス:「もちろんです。本部と支部という名称は、上下関係というより、連絡上の区分として扱いましょう」
ゼウス:「ならば、オリュンポスが総本部――」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
テミス:「そこは、今日の議題ではありません」
ゼウス:「はい」
名称は、『神話系ミーティング 日本支部』とする方向で合意された。
◇結論
コン、コン。
―木槌が二度、打ち鳴らされた―
テミス:「では、まとめましょう。日本の神々による会議組織の設立について、オリュンポス本部として協力します」
テミスは、決定事項を読み上げた。
テミス:「名称は『神話系ミーティング 日本支部』。司会は思兼神、書記は菅原道真殿とします。常任参加者を中心に運営し、専門案件では関係者を招くこと。人間および神々からの投書制度を導入すること」
日本側の神々が頷いた。
テミス:「今後は、日本独自の事情に合わせて運営方法を調整し、必要に応じてオリュンポス本部と情報共有を行います。以上について、異議のある方は?」
異議を唱える者はいなかった。
テミス:「では、承認します。これにて閉会いたします」
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
◇後日談――日本からの手土産
閉会後。
アマテラス:「テミス様。本日はありがとうございました。こちら、日本からの手土産です」
天照から、テミスへ紙袋が手渡された。
テミス:「これは?」
アマテラス:「和菓子の詰め合わせです。羊羹、最中、お饅頭などを」
テミス:「ありがとうございます」
アマテラス:「コーヒーにも、意外と合いますよ」
テミスの表情が、わずかに明るくなった。
ゼウス:「ほう。これが日本の菓子か」
テミス:「これは、私がいただいたものです」
ゼウス:「皆で――」
テミス:「私がいただいたものです!」
テミスの目には強い意志が宿っていた。
ゼウスはそれ以上言えなかった。
そんなところに救いの光—
アマテラス:「皆様の分は、こちらに別の箱を用意しております」
ゼウス:「さすが、分かっておるのう!」
テミスは、自分用の箱を静かに確保した。
その後、菓子の席にはアレスも顔を出した。
羊羹を神剣で切ろうとして、止められた。
誰かが最中を分解し、皮だけ食べた。
ゼウスが大福を連続で取り、ヘラに注意された。
少し離れた場所で、テミスはコーヒーを淹れた。
羊羹を一口。
そして、コーヒーを飲む。
テミス:「……合いますね」
その日、テミスは日本支部設立に関する資料の末尾に、小さく一文を書き加えた。
『補足:日本側との定期的な情報交流は有益と思われる。和菓子についても同様である。』
ムネモシュネは、その一文を正確に記録した。
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―議事録―
第XX回 神話系ミーティング
オリュンポス本部『日本神々協会によるミーティング本部設立の相談依頼』
開催場所:オリュンポス本部
議題:日本神々協会によるミーティング組織設立相談
司会:テミス
書記:ムネモシュネ
審議区分:通常審議・神話圏交流
参加者
出席:ゼウス、ヘラ、アテナ、アポロン、ヘルメス
ゲスト:天照大御神、須佐之男命、思兼神、建御雷神、菅原道真、他日本の神々
1.投書
投書者:天照大御神
「日本の神々でもミーティングを開いて問題に対処しようという話になりました。
つきましては、人選、会議運営の方法についてご教授をお願いします」
2.主な議論
項目
主な内容
司会
議論を整理し、公平に進行して結論へ導く。
書記
発言、決定事項、継続課題を整理して記録する。
役割分担
最高責任者、司会、書記の役割を必要に応じて分離する。
常任参加者
少人数を基本とし、異なる立場や領域の意見を集める。
ゲスト招集
専門的な案件について、関係する神や当事者を招く。
投書制度
人間および神々から問題を収集し、受付段階で分類・選定する。
会議規則
脱線、神罰、家族間の争いなどを抑制する。
決定事項の整理
正式決定と継続審議事項を明確に分ける。
名称と運営権
日本支部とし、日本独自の運営権を維持する。
3.審議結果
可決。
日本側に『神話系ミーティング 日本支部』を設立し、司会と書記を置くことについて合意した。
4.決定事項
一、日本に『神話系ミーティング 日本支部』を設立する。
二、司会は思兼神とする。
三、書記は菅原道真とする。
四、天照大御神を中心とした常任参加者を置く。
五、専門案件についてはゲストを招集する。
六、人間および神々からの投書制度を導入する。
七、オリュンポス本部と日本支部の間で、議事録および重要案件の情報共有を行う。
なお、本部・支部という名称は連絡上の区分とし、日本側の独自の運営権を維持する。
5.投書への正式回答
天照大御神 殿
日本の神々による会議組織の設立について、オリュンポス本部として協力します。
会議運営においては、司会による議論整理と、書記による正確な記録を基本としてください。
日本側の司会には思兼神、書記には菅原道真殿を選任します。
常任参加者は少人数を基本とし、専門的な議題では関係する神々や当事者を招く方式を推奨します。
また、人間および神々からの投書を受け付け、事前に分類・選定する体制を整えることが重要です。
今後は、日本独自の事情に合わせて運営方法を調整し、必要に応じてオリュンポス本部と情報共有を行ってください。
6.課題・継続審議
・日本支部の具体的な常任参加者の確定。
・投書受付および選定方法。
・日本各地の神々との連絡方法。
・八百万の神々の分類方法。
・妖怪等、神以外の存在を正式参加者として扱う範囲。
・日本支部の所在地。
7.後日報告――支部所在地
支部所在地については、日本側で次の意見が出された。
アマテラス:「伊勢でしょうか」
オオクニヌシ:「出雲も候補でしょう」
タケミカヅチ:「人間との連絡なら、関東では?」
スサノオ:「高天原でいいだろ」
ツクヨミ:「月」
所在地については、紆余曲折の上、高天原へと決定した模様。
8.補足事項
天照大御神より、和菓子の手土産の持参あり。
テミスは、羊羹とコーヒーの組み合わせを高く評価した。
日本側との定期的な情報交流について、有益との所見あり。
和菓子についても同様との追記あり。
記録:ムネモシュネ
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