人類の数と一人一人の意識
テミス:「そして、もう一つ重要な問題があります」
画面に、世界人口が表示された。
約80億人規模。
プロメテウス:「……多いな」
ゼウス:「人類、増えたな」
テミス:「一人の消費は小さくても、それが数十億人分積み重なれば、巨大なエネルギー需要となります」
テスラ:「人口だけでなく、一人あたりの消費量と、エネルギーの作り方も重要ですね」
テミス:「はい」
ゼウス:「なら人口を――」
カン!
―木槌が強く打ち鳴らされた―
テミス:「やめてください」
ゼウス:「まだ何も言ってないじゃろ!」
テミス:「前歴があります」
◇解決の方向性
アテナ:「だが、逆に考えればどうだ?」
知恵の女神が、静かに語り始めた。
その青い瞳に、鋭い光が宿った。
テミス:「と、言いますと?」
アテナ:「一人一人が、少しだけ使い方を変えたら?」
テスラ:「それも数十億倍されます」
アテナ:「そういうことだ」
アテナはホワイトボードへ向かい、書いた。
一人の小さな消費 × 数十億人 = 巨大な環境負荷
その下に、もう一行を書き足した。
一人の小さな改善 × 数十億人 = 巨大な変化
トール:「……地味だな」
アテナ:「地味だが重要だ」
ゼウス:「雷でドーン、みたいな解決策は?」
テミス:「ありません」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
プロメテウス:「火を渡した時も、最初は小さな火だった」
テミス:「はい」
プロメテウス:「それが一人から一人へ広がって、文明を作った」
プロメテウスは、少し間を置いた。
プロメテウス:「なら今度は、火ではなく、意識を一人ずつ渡していけばいい」
テミスは静かに頷いた。
◇結論
コン、コン。
―木槌が二度、打ち鳴らされた―
テミス:「今回の議論をまとめます。人類のエネルギー問題は、一つの強力なエネルギー源を発見すれば解決するというものではありません。技術の発展、エネルギー源の転換、資源の有効利用。そして、一人一人の意識の変化が必要です」
テスラ:「巨大な発電所を一つ作るだけが、解決策ではない」
ヘパイストス:「何十億台という機械を、少しずつ効率化することも重要だ」
アテナ:「人類の数が問題を大きくしたのなら、その数を解決の力にすればいい」
ヘルメス:「人類一人一人の環境への意識の変化については、僕の方から商売と交えて働きかけてみよう」
ヘルメスは伝令の神であり、商業を司る神でもある。
テミス:「一人の大きな力ではなく、一人一人の小さな力の総和が文明を変えていく。以上をまとめ、投書への正式回答といたします。異議のある方は?」
異議を唱える者はいなかった。
テミス:「では、承認します。これにて閉会いたします」
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
商売の神の働きかけが、どのような結果を生むか。
この時は、まだ誰も想像していなかった。




