特別参考人 ニコラ・テスラ
ゼウスが立ち上がった。
ゼウス:「では、雷神の代表としてわしから――」
テミス:「あ、その前に」
ゼウス:「ん?」
テミス:「特別参考人をお呼びしています」
会議室に、一人の人間が入ってきた。
細身の長身に整った口髭。電気技術の発展に大きく貢献した発明家、ニコラ・テスラである。
テミス:「交流電力システム、誘導電動機、高電圧技術などの発展に貢献した、ニコラ・テスラさんです」
テスラ:「よろしくお願いします」
ゼウス:「人間か?」
テスラ:「はい」
テスラは会議室を見渡した。
テスラ:「……雷神がたくさんおられる」
ゼウス:「うむ!」
テスラ:「エクセレント!」
ゼウス:「分かっているではないか!」
テスラ:「ぜひ放電特性を測定したい」
雷神一同:「…………」
コツ。
―木槌が小さく打ち鳴らされた―
テミス:「テスラさん、雷のエネルギー利用についてお願いします」
テスラ:「雷は美しい。しかし、巨大な力を発生させることと、それをエネルギーとして利用することは別です」
プロメテウス:「どういうことだ?」
テスラ:「必要なとき、必要な場所で、必要なだけ使えることが重要なのです」
インドラ:「我々は、雷を落とすものと考えていた」
テスラ:「人類は、電気を届けるものにしたのです」
プロメテウス:「火も同じだな。火そのものではなく、火を制御することが重要だった」
テミス:「なるほど。今回の議題において、重要な指摘ですね」
テミスは議事録に一文を加えた。
コン。
―木槌が打ち鳴らされた―
テミス:「では、お待たせしました。ゼウス様」
ゼウス:「うむ! そもそも、わしがティタン神族と戦った時など――」
テミス:「はい?」
ゼウス:「天空より雷霆を放ち、山を焼き、大地を揺るがし!」
テミス:「……」
ゼウス:「そして、テュポーンとの戦いではだな!」
トール:「おお!」
インドラ:「興味深い!」
カン!カン!カン!
―木槌が三度、強く打ち鳴らされた―
テミス:「雷神同士で盛り上がらないでください! 武勇伝を語る場ではありません!」
テスラ:「ちなみに、その雷撃の電圧は?」
テミス:「食いつかないでください」
ゼウス:「すごく強い!」
テミス:「……」
テスラ:「電流は?」
ゼウス:「ものすごく流れる!」
テスラ:「放電時間は?」
ゼウス:「一瞬だ!」
テスラ:「総エネルギー量は?」
ゼウス:「知らん!」
テミスは木槌を構え直した。
テスラ:「つまり、ゼウス様は雷をエネルギー源というより、兵器として運用してきたわけですね」
ゼウス:「そうだ! わしは神々の王だぞ!」
テスラ:「素晴らしい! 高出力放電装置と言えるでしょう」
ゼウス:「……なんか違う」
カァァーン!
―木槌がとても強く打ち鳴らされた―
テミス:「脱線しましたので、本題に戻ります」
テスラ:「直流と交流についても――」
テミス:「今回は扱いません」
テスラ:「エジソンを呼んでいただければ――」
テミス:「却下します」
カン!
―木槌が強く打ち鳴らされた―




