↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫から三十年も放置されましたので、お飾りの妻は平気です~今さら愛されても困ります~  作者: 春乃りぜ
第二章 陛下の様子が変です

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/100

43 ダニエルとの対話

ヴィルヘルムが本宮に帰ったあと、マデリーンのいる王妃宮の警備が強化された。

国王直属の騎士たちが宮殿を守り、部外者はむやみに入れなくなった。



どう考えてもフレデリックの一件がきっかけだったが、マデリーンは納得いかなかった。



「オーウェン卿、こんにちは。元気だった?」

「王妃陛下、こんにちは。元気でしたよ」

「それはよかったわ。私は全く元気ではないけれど」



マデリーンはたまたま王妃宮を通りかかったダニエルに声をかけた。

ダニエルはヴィルヘルムの側近であり、彼の手足となって仕事をこなしている。



「陛下の暴挙に困ってるんだけど、どうにかしてくれないかしら?」

「大変申し訳ありませんが……私にはどうすることもできそうにありません」

「……」



ダニエルは笑顔のまま、手助けはできないと答えた。



「陛下はこうなると私の忠告など聞き入れないから、仕方がありません」

「ヴィルヘルム陛下は一体何を考えていらっしゃるのかしら……」



マデリーンは呆れたようにため息をついた。

彼女は未だに、ヴィルヘルムの気持ちに気付いていなかった。



共にボランティア活動に励むウィリーの正体がヴィルヘルムであることも、彼女は知らないままだ。



「大体、陛下はソフィア側妃を愛しているんでしょう?彼女の元へ行けばいいものを……今さら私のことを気にする必要なんてないのに」

「……」



マデリーンの発言を、ダニエルは複雑な気持ちで聞いていた。

彼はヴィルヘルムとソフィアの関係が普通ではないことを知っている数少ない人間だった。



ダニエルは一歩前に出ると、マデリーンに告げた。



「陛下―――人々が口にする噂を全て真実だとは思わないでください」

「………何ですって?」



そう口にした彼の表情は、いつもと違って真剣だった。

ダニエルの言葉の真意は、マデリーンには到底理解できなかった。

人々の噂が真実ではない、ということは何か秘密が隠されているとでもいうのか。



しかし、マデリーンはたしかにヴィルヘルムがソフィアに優しい目を向けている瞬間を見たことがあった。

あれが愛ではないと言うのなら、一体何なのか。



「陛下と側妃が愛し合っているのは事実でしょう?」

「……」



ダニエルはその問いに、何も答えなかった。

これ以上彼から得られることはなさそうだと、マデリーンは追及をやめた。



「オーウェン卿……ノートン卿の叙任式に関してなんだけど……」

「ああ、その件に関しては特に変更はないので、ご安心ください」

「そう、よかったわ」



予定通りフレデリックの叙任式が行われると知り、マデリーンは安堵の息を吐いた。

国王であれば王家に仕える騎士をクビにすることくらい容易いはずだが、ヴィルヘルムは彼女の希望を叶えてくれたようだった。



「私のせいで彼の夢が断たれたらどうしようかと思って……不安だったの……」

「一介の騎士をそこまで気にかけるだなんて、王妃陛下はとてもお優しいのですね」



マデリーンはその言葉に、静かに首を横に振った。

自分が優しいだなんて、彼女はそんなこと思ったことはなかったからだ。



そんなマデリーンの否定に、ダニエルは謙虚だなぁと呟いた。

マデリーンは前世では悪女として知られていたが、実は元々自分に自信がなかった。



「オーウェン卿、陛下に伝えてほしいことがあるの」

「いかがなさいました?」



マデリーンは真っ直ぐにダニエルを見上げた。



「――明日、ロベルタ伯爵邸を訪問したいと思っているの。今の状況だと、陛下の許可がないと外へは出られなそうだから……」

「……ええ、わかりました。私から陛下にお伝えしておきましょう。許可が下りないことはないと思いますが、念のため」



彼の返事に、マデリーンの顔に僅かな希望が見えた。

顔に出やすい人だな、とダニエルは笑みを溢した。



「あなたにそう言ってもらえて嬉しいわ。陛下にも……ありがとうと伝えておいてちょうだい」

「……」



マデリーンの口から出たヴィルヘルムへのお礼に、ダニエルは目を見開いた。

今の彼女からすれば特に驚くような発言でもないが、あのような仕打ちを受けたヴィルヘルムに対して礼を言うとは、少し意外だった。



彼女のことだから、気持ちがなくなった今、ヴィルヘルムのことを恨んでいると思っていたが違うようだ。



「陛下、喜ぶだろうなぁ……」

「オーウェン卿、何か言いました?」

「いえ、何でもございません」



ダニエルは笑みを取り繕って誤魔化した。

ヴィルヘルムがマデリーンに好かれていないのは自業自得なので、ダニエルは彼の恋の手助けをするつもりはなかった。

マデリーンがどのような選択をしようとも、ダニエルは彼女の意思を尊重する気でいる。



「――もちろんです、陛下に必ずお伝えしておきます」

「ありがとう、おかげで明日は楽に過ごせそうだわ」



宮殿を離れることを楽だと喜ぶマデリーンの姿に、ダニエルの胸が締め付けられた。




読んでくださってありがとうございます!


ブクマ、いいね、評価などしていただけたら励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。