↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫から三十年も放置されましたので、お飾りの妻は平気です~今さら愛されても困ります~  作者: 春乃りぜ
第一章 回帰しました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/100

31 侍女長の追放

マデリーンのことを見下しているのか、侍女長ケイトは彼女を前に口角を上げた。



「王妃陛下、こんな時間まで一体どちらに行っていらしたのですか?何だか最近、外出が増えているようですね」

「……」



ケイトはゆっくりと彼女に近づくと、その耳元で囁いた。



「――国王陛下に、報告しておきましょうか?」



ヴィルヘルムに報告――前世でマデリーンが何よりも恐れていたことだった。

彼に嫌われたくない、見放されたくないと、マデリーンはケイトの言葉を恐れ、彼女を相手に何もできなかった。



しかし、今は違う。

ケイトは王妃宮の侍女長ではあるが、王妃の意に反してヴィルヘルムに勝手な報告をする権限など持っていなかった。彼女はベテランだが、ヴィルヘルムからの信頼もなければ、彼と親しくしているわけでもない。



そのことを既に知ってしまっているマデリーンにとって、もはや侍女長など恐れるに足りないのだ。

彼女はケイトの身体を手で押し返すと、キッパリと告げた。



「――したいなら好きにすれば?」

「………何ですって?」



思いもよらない返事に、ケイトが眉をひそめた。

言いなりだった無能な王妃が突然強気になったのだから、困惑するのも当然かもしれない。



「言ったわよ。陛下に報告したいのなら好きにすればいいと」

「……本気でしますよ?いいんですね?」



その言葉がただの脅しであることを、マデリーンは知っている。

彼女が本当にヴィルヘルムに報告したところで、きっと何も起きないだろう。マデリーンの王妃の地位は、勝手に出かけたくらいで揺らぐようなものではなかったのだから。

マデリーンはやり返すように、口角を上げた。



「ええ、別にいいわよ――だってあなた、陛下からの信頼なんてないもの」

「……ッ!」



その言葉に気分を害したのか、ケイトは悔しそうに唇を噛んだ。

ヴィルヘルムからの信頼がないというのは事実だった。彼は理由はわからないが滅多に人を信用せず、他人を寄せ付けない。



もちろん、マデリーンもケイトと同じく彼から信用されていない。

昔は悲しかったけど、今は何とも思わない。

そんな彼女の様子を強がりだと捉えたのか、ケイトは馬鹿にするように口を開いた。



「王妃陛下ったら、素直ではありませんね。だから陛下からも疎ましがられるんですよ?そんな性悪だから、ソフィア側妃に寵愛を奪われてしまうんですよ!」

「そうね、陛下はたしかに私を好いてはいないでしょう」



前世のマデリーンならば、反論の余地もない正論に泣き出していたかもしれない。



(あなたはそんな私を慰めるフリをして、悪事をするよう唆したわ……)



ケイトが何のためにそうしていたかはわからないが、彼女はなぜかマデリーンを貶めることに躍起になっていた。

そんな人間の悪意にも気付くことなく、傍に置いていたとは何とも情けない。



「でも私、もう過去は受け入れたのよ。自分がやったことも、彼にされたこともね」

「……受け入れたですって?」



マデリーンはニッコリと笑った。

清々しいその笑顔が、ケイトは気に入らなかった。



「――愛されてないお飾りの妻の分際で」

「……言ったわね」



その発言を、マデリーンは聞き逃さなかった。

彼女は後ろを振り向き、扉に向かって声をかけた。



「――エマ、聞いてたかしら?」

「はい、陛下」



そのとき、扉の向こうから姿を現わしたのは侍女のエマだった。

ケイトは気付いていなかったが、マデリーンは部屋に近づくエマの足音をきちんと耳にしていた。

彼女は歩き方に癖があるため、他の侍女たちとは足音が少し違う。その特徴から、マデリーンは部屋へ来たのがエマだと察した。



一方のエマも、部屋の中で何かが起こっていることを悟り、外で待っていたのだ。

長い付き合いの二人だからこそできる、連携プレーだった。



「な、い、いつからそこに……!」



ケイトの犯行は、いつも決まって二人きりのときに行われる。

今回も当然、そう思って彼女に罵倒の言葉を投げかけた。



そんなケイトにとって、外でエマが聞いていたのは予想外のことだった。



「私、この人にずっと暴言吐かれてたのよ。酷いと思わない?私は王妃だってのに」

「ええ、本当に……人としてあるまじき行為ですね」



エマはケイトに軽蔑の視線を向けた。

彼女にとって、マデリーンよりも大切な存在はない。

そのため、ケイトの発言は相当頭にきていた。



「でもよかったわ。あなたが私のことをそう言ってくれたおかげで……私もケジメをつけることができるんだから」

「ケジメ……?何を言ってるのよ……」



狼狽えるケイトに、マデリーンは言い放った。



「―――アンタ、クビよ。今すぐこの宮殿から出て行きなさい」

「な……」



クビ――という一言に、ケイトは顔を真っ青にした。

当然だろう、彼女には王妃宮以外には居場所なんてないのだから。



結婚できるような年齢でもないし、仕事が特別できるわけでもないため、再就職も難しい。

しかし、彼女が路頭に迷ったところで同情はなしだ。



「エマ、侍女長を王妃宮から追い出しなさい」

「はい、陛下」



マデリーンの命を受けたエマは、ケイトの腕を掴んで引きずった。



「ちょ、ちょっと何するの!離しなさい!何よ、この女……力強すぎ」

「大人しくしていたほうが、身のためですよ?――元(・)侍(・)女(・)長(・)」



ケイトは暴れるが、一般女性よりも圧倒的に強いエマの力には敵わない。

結局、彼女はみっともない姿をさらしながら宮殿を追い出された。




読んでくださってありがとうございます!


ブクマ、いいね、評価などしていただけたら励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。