↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫から三十年も放置されましたので、お飾りの妻は平気です~今さら愛されても困ります~  作者: 春乃りぜ
第一章 回帰しました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
26/100

26 ダニエルの部下ウィリー

その後、ダニエルは部下をよろしくと言いながら颯爽と去って行った。

いや、お前は参加しないんかい!とその場にいる誰もが同様にツッコんだ。



(とはいえ、任されたからにはきちんとやらないといけないわよね……)



ボランティア活動に参加していることが陛下にバレたら、間違いなく面倒なことになる。

せっかくダニエルが気を利かせて黙っていると言ってくれているのだから、こちらもきちんと頼まれたことをやり遂げなければならない。それが礼儀というものだろう。



マデリーンは置いてけぼりにされたウィリーに声をかけた。



「ウィリー卿……こういうのに参加するのは初めてですよね?」

「………ああ。いや、はい、初めて……です」



ウィリーは慌てて言葉を敬語に直した。

彼はダニエルの部下だというが、マデリーンは彼の顔を今まで見たことがなかった。



(オーウェン卿の部下ということは、王宮に勤務してるはず……会ったことなかったかしら?)



マデリーンは探るようにウィリーの顔を見つめたが、いくら思い出そうとしても何も出てこなかった。

彼女の刺すような視線を感じ取ったのか、ウィリーは顔を背けた。



「あ、ご、ごめんなさい……早速、作業を始めましょうか」

「ああ……いえ、はい」



初対面の人間に対しては少し無礼な口調ではあるが、彼なりに必死で直そうとしているのだということをマデリーンは感じた。

とはいえ、ここでは彼女は王妃ではなく一介の平民となっている。彼の身分は知らないが、フランクな接し方のほうがこちらとしてもありがたい。



マデリーンはウィリーにやり方を教え、彼と二人ですぐ傍にある教会内の掃除を始めた。

ウィリーは慣れていないのか、雑巾を手に固まっている。



「掃除はやったことありますか?」

「いえ……初めてです」

「そうだったんですね、そんな感じしてました」



マデリーンはウィリーを安心させるようにニコッと笑った。



(何だか昔の私を見ているみたいね)



意地悪な使用人たちと同居していた頃、マデリーンは全ての家事をこなさなければならなかった。

当然、彼女も最初から全て完璧にできたわけではない。最初は慣れない掃除や洗濯に苦戦し、上手くできなくて心が折れそうになってしまうこともあった。



「最初から完璧にやらなくていいんです。回数を重ねていけば、きっといつかは上手にできるはずですから」

「……そうですね、ありがとうございます」



マデリーンの言葉に、ウィリーは心が楽になったのか、表情が僅かに柔らかくなった。



(……なんだ、意外とできるじゃない)



ウィリーは意外にも器用なようで、すぐに慣れたようだった。

流石は優秀なダニエルの直属の部下といったところだろうか。彼が雑巾で磨いた窓は汚れが落ち、ピカピカになっている。



「では、私はトイレ掃除してきますね。しばらくここで待っていてください」

「ト、トイレ掃除……?」



全員が嫌がるようなことを率先して引き受けるマデリーンに、ウィリーは呆然としたまま彼女を見送った。

マデリーンにとっては公衆トイレの掃除など、今さら何ともない。



前世では、嫌がらせとしてドブに突き落とされたこともあれば、泥水をぶっかけられたことさえある。



(私も強くなったのね……何か感動するわ……)



ウィリーが外の掃除を続けている間に、マデリーンはトイレ掃除を難なく終わらせた。

二時間近く過ぎて昼になると、今日のボランティア活動が終わった。



「ウィリー卿、お疲れ様です」

「……ああ、お疲れ様です」



マデリーンはウィリーが磨き上げたピカピカの窓に目を向けた。

汚れは一切なく、外の景色が透き通って見える。

マデリーンは彼の意外な才覚に目を付け、冗談を言った。



「ウィリー卿、窓磨きの才能があるようですね。本職にしてはいかがですか?」

「……才能があると言ってもらえるとは、嬉しいです」



ウィリーは苦笑いしながらも、言葉を返した。

あまり嬉しくはなさそうだが、誰だって褒められて悪い気はしないだろう。



あ、そうだとマデリーンはあることを思い付いた。



「ウィリー卿、私からのプレゼントです」

「……これは、一体」



彼女は懐から取り出したあるものをウィリーに手渡した。

それは、アロマオイルだった。

マデリーンはニッコリと微笑みながら、彼の手にアロマを握らせた。



「私も最近知り合いのご夫人たちから紹介されて使ってみたんですけど……とっても良い香りですよ。心や身体をリラックスさせてくれる効果もありますし」

「……ありがとうございます」



ウィリーはマデリーンからのプレゼントであるアロマオイルを素直に受け取った。

マデリーンは彼が受け取ってくれたことに安心した。



(断られたらどうしようかと思ったけど、よかった!)



彼女は今まで何度もヴィルヘルムにプレゼントを贈っていた。カフスボタンや執務で使う羽根ペン、男性に人気の高い香水など。

しかし、受け取ってもらえたことは一度もない。



そのせいか、男性に贈り物をすることに少しだけ不安を感じていた。



(ウィリーって意外といい人なのね!冷たさは陛下と似てるけど、中身は大違い!)



彼となら良い関係を築いていけそうだと、マデリーンはその胸に希望を抱いた。




読んでくださってありがとうございます!


ブクマ、いいね、評価などしていただけたら励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。