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夫から三十年も放置されましたので、お飾りの妻は平気です~今さら愛されても困ります~  作者: 春乃りぜ
第一章 回帰しました

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14 王妃のお茶会

回帰から一週間以上が経過した頃、マデリーンは貴族夫人を集めた茶会を開いていた。

王妃宮にある美しい薔薇の庭園にて、彼女は六人の若き夫人たちと向き合っていた。



いつも下ろしているブロンドの髪の毛を、今日は後ろで一つにまとめている。

薄めのメイクで、舞踏会で着るような華やかなドレスではなく、大人びた上品なものを着用していた。



(今までの私は、ちょっとやりすぎだったわよね?)



前世、マデリーンは人に当たるだけではなく、不必要な散財までしていた。

ヴィルヘルムが来ないのは自分が地味なせいだと思い込み、毎日のように華美なドレスを身に着けていたのである。

彼が来ないのは容姿ではなく、単に性格の問題だったのだが。



そんなマデリーンの姿に、夫人たちは違和感を感じているようだ。



「王妃陛下……何か雰囲気変わった?」

「いつもと見た目が違うような……」



彼女を一度でも見たことがある人間からしたら、驚くのも当然である。

前までは理不尽に怒鳴っていたが、もうそんなことはしない。



マデリーンは茶会の主催者として、ニッコリと笑って挨拶を始めた。



「皆さん、今回は私のお茶会に来てくれてありがとう」

「い、いえ……当然のことでございます……王妃陛下……」



なぜ、突然呼び出されたのか。

マデリーンに向けられた全員の目が、その疑問を見事なまでに映し出していた。



当然だろう、彼女たちは特別親しくしていたというわけでもない。

それどころか参加者の中には、マデリーンが過去に罵声を浴びせた者もいた。

彼女に関してはマデリーンと目が合っただけでビクッと肩を震わせて泣きそうになってしまった。



(私ったら、本当に正気を失っていたのね)



自分の罪の重さを、再認識した瞬間だった。



「どうぞ座って――今日はみんなとじ(・)っ(・)く(・)り(・)お話したいと思ってるのよ」



その言葉に、令嬢たちが心の中でヒエェと悲鳴を上げたような気がした。

無意識に悪女オーラを出してしまったようで、場が一瞬で凍り付いた。



(いけないいけない、私ったら)



笑っていれば人を怖がらせることはないと思っていたが、勘違いだったようだ。笑顔には種類があって、人を不快に思わせるものも存在する。

お茶会が終わったら笑顔の練習をしなければ。



とはいえ、今のピリついた空気のまま茶会を続けるわけにはいかない。

マデリーンはとにかく明るくしようと、話題を変えた。



彼女は全員で囲んでいる丸テーブルの上に置かれた皿を持ち上げた。

マデリーンが事前に用意しておいた、特別なお近づきのしるしである。



「実は、今日は王都で有名なパティスリーのスイーツを用意したのよ。みんな遠慮しないで食べてちょうだい」

「これって、予約三か月待ちで有名な……」



いかにも女子が好みそうな可愛らしいピンクのスイーツに、夫人たちは釘付けになった。

いくら結婚しているとはいえ、彼女たちはまだ二十代前半。全員二、三歳年上だったが、二度目の人生を送るマデリーンにとっては子供のようなものだ。



「どう?美味しい?」

「はい……私たちのために用意してくださったのですか?」



もちろん――とマデリーンは頷いた。

スイーツの効果はてき面で、ピリピリした雰囲気はだいぶマシになった。



「――それにしても、王妃宮にこのような美しい場所があったとは知りませんでしたわ」

「ええ、私もお気に入りなのよ」



――赤薔薇の園。

先々代の国王が、唯一の愛妃に贈ったとされる赤い薔薇で埋め尽くされた庭。

彼女たちが初めて見たのも当然だろう、過去のマデリーンは他人を王妃宮に入れるのを嫌ったから。



愛に満ちたこの場所に住む愛されない王妃。

そのように陰口を叩かれていたせいか、マデリーンはこの庭園が好きではなかった。だが、ヴィルヘルムの気持ちがない今では感じ方も違う。



(とっても綺麗ね……こんなにも綺麗な花たちを見ていると……小さな悩みなんてどうでもよくなってしまうわ……)



空気が和んだところで、マデリーンはゆっくりと口を開いた。



「楽しんでもらえているようで何よりだわ。みんなには今まで迷惑をかけてしまったから……私なりにお詫びがしたかったのよ」

「陛下……」



マデリーンの悪意は使用人たちだけでなく、普段関わりのない令嬢たちにまで及んでいた。

彼女たちに目を付けた理由はどれもくだらないことだ。



ヴィルヘルムとダンスをしたとか、彼と目を合わせたとか、二人で何かをしたという噂を聞くたびにマデリーンは怒り狂って彼女たちを呼び出した。

なんと醜く、愚かだったのだろうか。いくら後悔したところで、過去の罪が消えるわけではない。



夫人たちは、いつもと違うマデリーンの様子を何も言わずにじっと見つめていた。

しばらくすると、一人の令嬢が沈黙を破るように声を上げた。



「――実は、私たちも今日陛下にプレゼントを持ってきたんです」

「……プレゼント?」



彼女は使用人に声をかけ、あるものを持ってくるように命じた。




読んでくださってありがとうございます!


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