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第二十一話 金貨の音

「よいしょ……よいしょ……!」

俺とミザリーは、縄で括ったホーンディア三体をずるずる引きずり、ソルトレインの冒険者ギルドへ足を踏み入れた。床板が悲鳴を上げ、巨大な影が三つ並ぶ。


「な、なんだ!?」「ホーンディアが三頭!?」「しかも丸ごと!?」

一瞬の静寂ののち、ホールは爆発した。ジョッキが打ち鳴らされ、口笛が響く。

「ガキ二人で仕留めたのか!」「壁に飾れ、英雄だ!」

「やめてよ!」ミザリーが赤くなって手を振る。


カウンターからぱたぱた走ってきたのは、快活な受付嬢だ。

「おかえりなさーい! えっ、ホーンディア三体!? 丸ごと!? 本当にやっちゃったの!?」


「証拠は部位だけでいいんだろ?けど今は金が必要だからな!丸ごと持ってきた!」俺が息を切らせて言うと、彼女は笑顔で頷いた。


「そうですけど、丸ごとなら肉も皮も魔石も全部買い取りますよ! 処理は大変だけど、今日は解体班が空いてます。正解です!」

「だってよ!」「肉は俺らの胃袋に!」陽気な冒険者たちの声でホールが揺れる。


解体班が集まり、縄を付け替えて奥へ運んでいく。鉄と血の匂いが流れ、俺とミザリーは椅子にへたり込んだ。水差しを渡され、一気に飲み干す。

「ふぅ……」

「リーン、肩擦りむいてる。あとで消毒ね」

「助かる。ミザリーの魔法、今回も冴えてた」

「リーンもね。でも無茶はダメ」

「努力する」

「“努力する”じゃなくて、するの!」

「はい……」周囲が「尻に敷かれてるぞ!」と笑う。


やがて受付嬢が台帳を抱えて戻ってきた。

「お待たせしました! 査定結果――ホーンディア三体、丸ごと搬入。良品揃い! 合計、金貨一枚、小金貨五枚!」

「おおおおっ!」ホールが爆発。テーブルが鳴り、ジョッキがぶつかる。

俺とミザリーは皮袋を受け取り、ずっしりした重みに言葉を失った。

「……これで、しばらく宿代に困らないな」

「ほんとに……」ミザリーの肩がほっと緩む。

周囲から「ガキのくせに金貨持ちかよ!」「奢れー!」と野次。受付嬢が「ダメです!」と笑顔で制した。


「それと二人にお知らせです」受付嬢が台帳をめくる。「今回の功績で、Eランク実績ポイントが大幅に加算されました。次はDランク昇格試験の対象になります」

「試験?」

「Eランク昇格試験と同じく、ギルド所属Dランク冒険者との模擬戦です。ルールは後日説明しますね」

陽気なホールがまたざわめく。「お、試験か!」「俺も見に行くぜ!」


最後に受付嬢がにっこり笑った。

「丸ごと搬入、ほんと助かりました。肉は街の食堂や孤児院へ、皮は冬支度に、魔石は工房に。街がちょっと豊かになるんです。――ありがとう」

胸の奥が熱くなる。俺とミザリーは顔を見合わせ、笑った。


「行こう、ミザリー。明日も依頼だ」

「うん!」

笑い声と楽団の弦の音に包まれながら、俺たちはギルドの夜へ溶けていった。

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