セルゲイとユーラ
朝、ヴィッキ-が僕を起こしてくれた。
普段なら自分で起きれないことなんて滅多にないのに。
身体がだるい…。
「薬をもられたらしいわ。あの子…ヤバい子よ。気をつけなさい。」
「やっぱり…フリッツが運んでくれた?」
「ええ。夜中に私を呼びに来たの。今日朝様子を見に来るように。」
「そっか…また迷惑かけたね。…フリッツは?」
「もう出たと思うわ、朝食食べれそう?」
「多分…」
教室に入るとミーシャとセルゲイがいつものように抱き合っていた。とりあえず現状維持をするつもりだろうか。
僕は関わらないようそのまま席に座った。
「お早うリネア」
セルゲイがこっちへ来る。
「昨日は楽しかったよ。…続きは殿下と楽しめた?」
僕の耳元で囁く。
「近寄らないでくれる?私はもう君と関わりたくない」
「ひどいな、そんなに嫌わないでよ。」
「リネア、どうしたの?」
「リネアに嫌われちゃったみたい。」
「ひどいわ、そんな急に…。」
「ごめんね、ミーシャ。セルゲイを嫌ってるとかじゃなくて、今日は少し体調が悪いみたいだから一人でいたいんだ。」
「わかった、お大事にしてね。何かあったら言いなさいよ。」
ミーシャは優しい。こんな人を騙すなんて…。
僕はランチタイムにユーラのホームルームに行った。
「リネア、どうしたの?」
「少し…話できるかな?」
「もちろん。来てくれて嬉しいよ。」
僕たちはテラス横の芝生広場に座った。
「で?話って?」
「セルゲイの事だけど…。」
「ん?」
「彼は…何なんだ?」
「何…って?」
「昨日薬をもられたんだ」
「セルゲイに?」
「クラブで」
「リネア、セルゲイと二人で出かけたの?」
「うん」
「もう二度とそんな事しちゃいけないよ。下手したら…」
「何?」
「薬漬けにされて売られる可能性もある」
「誰に」
「運が良ければ私に、悪ければ国外の頭のおかしい富豪に。」
「どうして…まだ13歳だろう?どうして彼はあんな目をしてるんだ?」
冷たくて寂しい…
「私たちがそう育てられたから。父の手先として、感情を持たない人間になるように」
「だけど君は違う。僕には分かる。君は、あんな目をしてない。」
僕はユーラを見る。
「私とアリーナの母親はね、強い女性だったんだ。私は小さい頃一緒にいた記憶もある、彼女は私たちをとても愛していたし、自分で育てると譲らなかった。
だけどセルゲイたちの母親たちは違う。父の言いなりで育児は早々に乳母にまかせ、贅沢する事や権力で人を支配することにしか興味がない。だからセルゲイたちは愛情なんて生まれてから感じたことはないし、父の言うことを信条としているからまともな感覚を持つことなんて不可能だよ。」
「そんな…」
「リネア、同情したり下手に介入したらいけない。君が危ない。」
「…ミーシャがどうなるか心配なんだ」
「目的が彼女自信じゃなかったら問題だね」
「どういう事?」
「…この件についてはしばらく様子を見た方がいい。何かあったら私に連絡して」
「わかった。ありがとう…。」
ユーラが僕の耳元に触れる。
「このピアス…、独占欲と警戒心の現れだね。」
「え?どういうこと?」
「フリッツの瞳の色してるでしょ、このダイア」
「そういえば、そうだっけ?」
「フリッツのはエメラルド、君の瞳の色」
「今知ったよ…」
「リネア、君は人を警戒すると言う事を少し学んだ方がいい。セルゲイはもちろん、私を信用したらいけない。」
「ユーラも?」
「そう。私はね、君やフリッツみたいにお人好しじゃないから。」
「私には分からない。」
僕は芝生の上に寝転んだ。
「それ、それだよ、リネア」
ユーラが僕の上に覆い被さる。
「君は隙だらけだ。こういう事をされたくなかったら常に警戒しないと…」
「しないと…?」
ユーラと目が合う。
ユーラは体制を元に戻すと僕の頭を撫でた。
「知らないから。」
「ユーラ?」
ユーラはそう行って立ち去った。
僕は、セルゲイの話を思い出して悲しくなった。




