三度めのクラブ
何故、こうなった?
好奇心と、リスラ共和国の情報が某か手に入るかもしれないという使命感から来てしまったけど完全に失敗した。
僕はシンプルなワンピースにスニーカーを履いてきた。
セルゲイはメガネもしてないし、髪も少しあげて、細いパンツに黒いノースリーブのシャツを着てる。さらさらの髪の隙間から両耳に5個くらいずつあいたピアスが見えた。
そして、今…僕にキスをしている。
ダンスで組んだ一瞬の隙をつかれた。細いのに力が強くて振りほどけない。甘いタバコの味がする。
僕はセルゲイの足をおもいっきり踏んづけた。
「…痛いよ」
「何してんの?」
「キスだよ?」
「君にはミーシャがいるだろう?」
「彼女はただのクラスメートだよ」
「ただのクラスメートとああいうことする訳?」
「何かいけない?あなたには迷惑かけてないよね?」
こいつ…軽い、しかも質が悪い。
「あの兄上がご執心なあなたに興味があったんだ。彼氏はフレーデル王国の皇太子かな?」
「君には関係ない」
「クラスメートじゃないか」
「ただの、ね。」
「つれないなぁ」
セルゲイが僕にカクテルを持ってきた。
「どうぞ」
「…自分で飲んでみてよ」
「え?まさか信用されてないの?ひどいなぁ。」
セルゲイは僕に渡そうとしたカクテルを飲んだ。
「ね?何も入ってないよ」
「…」
なんとなく、こいつは信用しちゃいけないって僕の本能が言う。
「お酒はまだ飲まないから、悪いけど。」
「ノンアルコールだよ?」
「…ごめん、正直言って君を信用できない。」
「ひどいな、私はただこの前あなたとのダンスが楽しかったからもう一度踊りたかっただけなのに。」
セルゲイが少し悲しそうな顔をする。
「…気がないならミーシャを期待させないで。彼女が可愛そうだ。」
「私から言わせれば、一度関係をもったくらいで勘違いする方がおかしいよ。そもそも、よく知りもしない男とそういうことするってのは女にも問題があると思わない?」
「まぁ、それは一理ある。だけど、だったら教室で思わせ振りな態度をとるのをやめたら?」
「あなたがそう言うなら明日からやめよう。」
「ほんと?」
「彼女が傷ついてもいいなら。」
「それは…」
「リネア、君もたかだか同じクラスになっただけの人間に情をかけない方がいい。例えば、私が明日、リネアを好きになったからもうミーシャに興味がないと言えば、その時点であなたと彼女の人間関係は崩れる。クラスメートなんて所詮それくらいのものだよ。」
「セルゲイ、君は寂しいやつだな」
「…そうだね。だから、慰めてくれる?リネア…」
意識が朦朧としてきた。
頭がふわふわする。なんだか楽しくてすべてがどうでもいい気がしてきた。
「キスした時にちょっとした薬を仕込んでおいたんだ、そろそろ効いてきたかな?」
「何を…飲ませた?」
「大丈夫、依存性のあるものじゃないから。ね、リネア、私と楽しもう?」
そう言ってセルゲイは自らも小さな錠剤を口にして僕にキスをし始めた。抵抗できない。むしろ、気持ちいいとさえ思えてきた。
クラブの音と光が何倍も反響する感じ。不思議な世界に来たみたいだ。
「踊ろうリネア」
「うん」
セルゲイが僕に触れる度身体があつくなる。
なんだろう、この感じは…。
「そこまでだ」
聞き慣れた声の主がセルゲイの腕を振り払った。
「フリッツ…来てくれたの。」
僕はフリッツにしがみついた。
「リネアに何をした?」
「何もしてないですよ。」
「ドラッグを飲ませておいて?よく言う。」
「どうしてここへ?」
「さぁ?」
「リネアもなかなか抜け目ないね。これからも楽しませてくれそうだ。」
「ロマノ、次はないぞ。国賓に薬を盛った罪で強制退去もありうると覚えておけ。」
フリッツは僕をかついだ。
「お気遣いありがとうございます。気をつけます。」
「ミハイルより危険な奴がいたとはな…。」
「兄の足元にも及びませんよ、私なんか…。あ、この薬欲しくなったら私に言ってください。リネアと楽しめますよ。」
セルゲイは笑ってクラブから出ていった。
僕は馬車の中でフリッツに甘えた。
「リネア、くっつきすぎだ…。」
「だってくっつきたいんだもん。」
「頼むから、離れてくれ」
「くっついたら嫌なの?」
「…そうじゃないけど、こういうのは反則だろ」
「フリッツのケチ、バカ」
「お前なあ…」
「よかった、迎えに来てくれて。」
「部屋にメモがあったから…もうこういうことす…」
僕はフリッツの膝に乗ってキスをしはじめた。
「んー、フリッツ、大好き」
「…ヤバいな、これ。」
「ん?」
「…悪くない」




