メルア大陸のパーティーにて 1
メルア大陸の大統領の親族が開催したパーティーは我々の国の伝統的なものとは違っていた。
広く豪華でモダンな屋敷のリビングに色とりどりのたくさんの食事が並ぶ。
知らない食材もたくさんある。特に魚介類や野菜、フルーツが充実しているようだ。
日差しが我々の国より強く、空も光も明るく感じられるしとても開放的な雰囲気だ。
我々が到着するとプールのあるガーデンテラスでくつろいでいた人々がこちらに集まってきた。
女性が4人に男が3人…。女性の服装の露出度も高い。
お互い軽く自己紹介を済ますと各自適当に食事をとりに行きながら話を始めた。
それから少し遅れて今日の主催者とデイヴィッドさんが登場して、彼が大統領の息子であると我々に紹介した。なぜかその友人がこちらを見ている気がするが…。
「カール?」
「…やっぱりリネア?それにイーチェンも?」
「うわっ…なんでここに?」
「招待されたから。」
カールという今日の主催者がたまたまリネアの知り合いだったらしい。
「…まさか大統領の息子がクラブで遊び歩いてるなんて。」
「君たちこそ…まさかここで会うとは…。」
リネアが食事に目を向けるといきなりカールの腕を掴んだ。
「カール!これはメルア大陸の南のフルーツだね!この魚は…」
「リネア、また食べ物の話しか。」
俺がそう言おうとした瞬間イーチェンがリネアにつっこみを入れた。
…やはり俺とキャラがかぶる。
イーチェンが一つの黄色いフルーツをとりリネアに見せた。
「これ、リネアは食べた事あるか?」
「ない。イーチェンは?」
「ある。シアナ共和国の領地でもとれるんだ、これ。」
「食べたい!」
「じゃあ、切ってもらおう。カール、オススメは…?」
「そうだね、これと、それから…。」
…カールという男性とリネアとイーチェンの3人は話しながら別の場所へ移動してしまった…。ああしていつもリネアに餌を与えているのか?
俺はセルゲイをつかまえてイーチェンについて確認しようとするとミハイルも加わった。
「おいセルゲイ。なんなんだあのイーチェンは?」
「だからいつもああいう感じだって言ったでしょう?」
「駄目じゃないか、君がちゃんと阻止しないと。私たちの計画が破綻したらどうするんだ?」
「兄上…。兄上の婚約には協力しますがフリッツの事までは知りませんよ。」
「あの…。お話いいですか?」
我々がセルゲイを責めていると女性達が話しかけてきた。
「どうぞ。」
「皆様はどちらからいらっしゃったんですか?」
胸元が広くあいたドレスを着て、匂いの強い香水をつけた女性が二人…。
「フレーデル王国です。」
「素敵、私まだ一度も行った事がなくて…。」
「…」
ミハイルは無言だ。しかもすでに面倒そうな顔をしている。
「あの…あなたは?」
女性達がミハイルに見惚れている。
俺も見目に自信がない訳ではないがこの隣の男の美しさは異次元級だ。男の俺でも綺麗だと思うくらいだ。
「…リスラ共和国です。」
セルゲイが代わりに答えた。
ミハイルはこういうのが苦手だからなぁ…。大変だな。面倒な兄のサポートまでしているのか。
「失礼。」
ミハイルは無言で姉上の方へ行ってしまった。
「セル、ミハイルは相変わらずコミュニケーション能力が低いな。」
俺が呆れているとセルゲイもため息をついた。
「リネアに会って大分マシになったんですが…。」
「全く変わっていない。あいつが姉上とどのように話をしているのか謎すぎる。」
「あの…お二人は貴族の方ですか?」
女性が話を再開した。
「そうです。」
慣れてはいるがやはり面倒くさい。リネアの事が気になるし俺も引きあげたい。
「素敵ー!!」
「キャアー!」
…セルゲイは適当に話すのが得意そうだ。陰気な奴だと思っていたがいつの間にか物腰も柔らかく話しやすくなっている。リネアが変えたのか…?
「あの…良かったら二人で話しませんか?」
女性の一人が俺にそう言った。下心を感じる甘い声、上目遣いで俺を覗きこむ。
…あぁ、面倒くさい。
「ユーラ!」
リネアがミハイルを呼んだ。
何やら四人で話が始まったようだ。これはほぼ間違いなくビジネスの話だろう。
リネアがいきいきとしている。というか完全に俺の存在を忘れてないか?食い物とビジネスが俺より優先されるのは想定内だが…。まぁ、楽しそうだからいいんだが…。
「あの…聞いてますか?」
「ああ、はい。」
「あの…あちらの静かな場所に行きませんか?」
俺を静かな場所へ俺を連れていってどうするつもりだ?
「すみません、連れの者と話がしたいので。」
「…ではまたあとで。」
俺が断ると女性は少し残念そうに別の場所へ移動していった。
「セル…お前はリネアのビジネスに参加しないのか?」
「メルア大陸ではしていません。兄上はリネアをまだ社員として雇っていますし、今回もビジネスを視野にこちらに来ている部分もありますが、私は今回は関わっていません。」
…リネアとミハイルの関係が途切れる事はなさそうだな。
リネアは甘えるような懐くような、俺に見せない可愛らしい顔をミハイルにだけ見せる。しかも腕を組んだり頬をつねったり何気なくミハイルに触れる。
ミハイルがリネアを溺愛しているのは言うまでもなく、リネアの頭や顔に触れたり耳元で話をしながら本当に優しい顔をする。
…さすがに普段気にしない俺もこれは苦痛だ。
これではどちらが彼女の恋人か分からない。
「…なんていうか…複雑よね。」
「姉上…。」
いつの間にか姉上が俺の隣にいた。
「あの二人には特別な絆があるわ。」
「そうだな。」
「リネアはなんであんたを選んだのかしら?」
「…楽だから?」
「え?」
「楽だから…だと思う。俺といると自由に好きな事ができるし。」
「ミハイルならヤキモチをやいて、あんなふうに男性に囲まれる事を許さないでしょうね。あんたは平気なの?」
「リネアが楽しそうだし…。俺の婚約者だし…。でも、やっぱりミハイルの事は気になるな。」
あの二人のやり取りを見ているとなんともいえない気持ちになる。俺だけのリネアだったのに一時期はミハイルの恋人になったのだから。
そして今も二人は特別な存在だ。
ミハイルにデザートを食べさせるリネア。
…ああ、もう我慢の限界だ。
「フリッツもそんなにじっとリネアを見ているなら参加してきたら?別に政治もからまないし、内緒の話しでもないだろうし。」
「セル…。顔にでてた?」
「すごい顔してるよ。」
「あたしも行く!」
「あ、ヴィクトリアはここにいた方がいい。」
セルゲイが姉上をとめた。
「どうして?」
「あのデイヴィッドさんの友人達の誰かが皇室に関心があって皇室の女性と関わりたいと思ってるらしい。兄上がシャーロットとヴィクトリアを近づけないようにって私に釘をさしてきた。」
「そう…。」
セルゲイに姉上を任せ俺はリネア達の所へ向かった。




