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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
メルア大陸編
333/350

メルア大陸へ

リネアが憧れてずっと行きたいと願っていたメルア大陸に私たちは到着した。

空の色、空気が違う…。


まるでタイムスリップしてしまったかのように街の景色も人々の装いも私たちのものとはまるで違った。





私はヴィクトリア・アンナ・フォン・フレーデル。

フレーデル王国の皇女として生まれた。


数ヶ月前、幼なじみで初恋の相手だった恋人と別れ、その時に側にいてくれた再従兄弟のミハイルと先日婚約した。

それから失恋の辛さを忘れる為、そして結婚前に外国での自由な生活を経験してみたくて、弟の婚約者であるリネアに頼んでメルア大陸へ同行させてもらう事にした。


エンゲル王国で私はまずミハイルの義理の母親や彼の兄弟に会った。セルゲイのお母様であるソフィア様はとてもきさくな方で、彼女とミハイルの兄弟は、ほんの少し前まで色々あって別々に住んでいたとは思えないほど仲がよかった。

これもすべてリネアのお陰だとみんな言う。



リネアは私とエンゲル王国に向かう飛行機の中で、

彼女が12歳まで男の子で、不幸な事件に巻き込まれた際、双子の妹に生まれ変わってしまったという話を私にしてくれた。

にわかには信じがたかったけど、彼女は心を許した人にだけその話を伝えているようで、知っているのは身内を除いてヴィル君とユリア、ロマノ家、そしてフリッツと私くらいだと言う。


彼女は人の心を掴む何かを持っている。

みんなを自分の世界に巻き込みながらいつの間にか仲良くなりたいと思わせてしまう不思議な人だ。

私もフリッツがスモーランドの留学から帰ってきて、彼の話を聞いてからずっと会ってみたいと思っていたけど、実際会ったらすぐにリネアを好きになった。妹のように可愛く大切に思っていた。


だから私の弟と結ばれて欲しいと願っていたのに、彼女はミハイルと婚約してしまった。


私の果たせなかった'好きな人との幸せを掴んで欲しい'というワガママから思い付きの滅茶苦茶な提案をミハイルにしたら、いつの間にかそれが現実となり、二人を別れさせてしまった。



私がリネアとミハイルの将来を奪ってしまったという心苦しさ、そしてまだ忘れられそうもないゲオルグへの気持ち、そしてリネアを想うミハイルに複雑な気持ちを抱きはじめ、自分でも戸惑っている。


私は、ミハイルがリネアを一生大切に想い続けることが理解でき、フリッツの側にいられるから選ばれたにすぎないのに…。




出発前もミハイルからリネアに何度も連絡があった。

彼が本当にリネアを大切に想っている事、心配している事が分かる。


私にも数回状況確認の連絡はくれたけど…。

二言目には「リネアをよろしく」だ。




「ミハイルってひどくない?」

私はセルゲイについ愚痴を言ってしまった。


「…君はそれを分かっていて婚約したんだよね?じゃあ仕方ないんじゃない?」

「そうだけど…。」

「ヴィクトリア、セルゲイに優しい言葉や気遣いを求めても無駄だぞ?この男は基本的にリネアにしか親切じゃない。私を覗いて。」

「シャーロット様…微妙に惚気が入っていますね。」


「私もセルゲイの言う事が正しいと思う。あのミハイルにリネアに対するもの以上の想いを求めるのは現状難しいだろう。あの男は異常なくらいリネアに執着していたからな。」

「…シャーロット様から見てもそんなに?」

「ああ。まるでストーカーのようだったぞ?常にリネアを監視していたし、他の男が近づこうものなら手先を使って追い払い…。本当に気持ち悪いと思っていた。」

「…それはちょっと…。確かに…。」


「兄上は異常なんだよ。君はそんな異常な事を自分がされない事を寧ろ喜ぶべきだ。」

「そうだ。リネアへのストーカー紛いの行為が継続されているお陰で君は自由にメルア大陸での生活を満喫できる。普通の婚約者ならそもそもここに来る事を許して貰えなかっただろう。」


「…リネアは嫌じゃなかったのかしら?そんな事をされて。」

「…あれはな、気づいていなかったんだ。監視されている事も自分に行為を向けている人間が追い払われている事も。」

「…リネアらしいわね。」


「リネアは自分への好意には恐ろしく鈍いからな。」


セルゲイ達の話を聞いているうちに、自分の中でとりあえず今は現状のままが良さそうだという結論に至った。

せっかく新しい環境に来る事ができたんだもの。あたしも楽しまなきゃ損よね。ミハイルの事なんかで嫉妬している時間が勿体ないわ。


「そういえばリネアは?」

「レナートを連れてイーチェンとご飯の買い出しに行ったよ。」


「…二人とも行動的ね。」

「イーチェンとリネアは行動がまるで子どもみたいたなんだ。ただ…イーチェンにはヴィクトリアも一応気をつけてほしい。」

「フリッツから聞いてるわ。」


「とりあえず、部屋に荷物を入れよう。」


シャーロット様は見た目の綺麗さとは違い言葉使いがまるで少年のようだ。リネアと気が合うのが分かる。


「ヴィクトリア」

「はい。」


「君と友人になりたいと思っている。私は女性らしくないし、リネアも同じだから、君には女性らしい付き合いを色々教えて欲しい。」

「光栄です。」


「では私のことはシャーロットと呼ぶように。話し方も丁寧に話さないように。」

「はい。」


「私も混ぜて欲しいわ。」

「ソフィア様…。」


「みんなお友だちになりましょ?ね?」



「はい…。よろしくお願いいたします。」



新しい生活の幕開けにドキドキワクワクしてきた。




「ただいまー。店の前で偶然デイヴィッドさんに会って連れてきた。」



「…彼女は?」

知らない男性が私を見ている。


「フリッツの姉のヴィクトリアだよ。」


「…初めまして。デイヴィッドです。」


彼が右手を差し出した。


「…初めまして。ヴィクトリアです。」

私も右手をだし握手をした。


「よろしくお願いします。」



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