出発前日の夜
いよいよメルア大陸出発前日になった。
ワクワクとドキドキが止まらない。
「リネア、フリッツから電話」
「はい。」
フリッツが画面に映ってる。
「フリッツ、いよいよだよ。」
「ああ、楽しんでこいよ。」
「もちろん。」
「俺もできれば合流する予定だ。」
「うん、待ってる。」
画面越しのフリッツ…。僕は画面を触ってみる。
「…早く会いたいな。」
「うん、クリスマスには帰るから。一緒にツリーをつくろうね。」
「ああ。待ってる。」
「フリッツ」
「何だ?」
「好きだよ。」
「俺も大好きだ。…あ、邪魔が入った。じゃ、またついたら連絡してくれ。」
「うん。」
今度はユーラが画面に映る。
「ユーラ。」
「リネア、ちゃんと私のあげた時計持った?」
「うん。」
「それから、通信機器と、非常時の為の武器と…。」
遠足前の保護者みたいだ。
「知らない人にはついて行かないこと。あとは出かける時はちゃんと家の者に知らせてから行く事。」
「もー…。そんなの言われなくても分かってるよ。」
「リネア、君はそれがいつまでもできないからトラブルを起こすんだ。ちゃんと私の言うことを守るんだよ?」
「はい。」
「リネア」
「はい。」
「愛してる。楽しんでおいで。」
「ユーラ…。私もだよ。ついたら連絡するよ。」
「おいっ!?おかしいだろ、お前達のそのやりとり!」
「何故?」
「これじゃどっちが恋人なのか分からないじゃないか。」
「だってリネアは永遠に私の恋人だよ。何もおかしくない。」
「何を訳の分からない事を…。リネア、お前もなんとか言ってやれ。」
「ユーラの愛は家族愛だからなぁ…。」
「…リネア、メルア大陸でおかしな動きをしたらすぐに連れ戻すからね。」
「…ユーラ、フリッツはそんな事言ってないよ?」
「いや、ミハイルの言う通りだ。フレーデル王国の皇太子の婚約者に相応しくない振る舞いをしたら強制的に帰ってきてもらうぞ。問題をおこさないように。」
「はい。」
…確かに僕はもう正式に皇太子の婚約者になったんだ。
これまでのように好き勝手できる訳じゃない。
「ユーラ、ヴィッキーに変わろうか?」
「そうだね。」
「こんばんは。」
「ヴィクトリア、一年間楽しんでおいで。」
「ありがとう。」
「それから、リネアが変な行動をとらないよう気をつけて見ていて欲しい。」
「分かったわ。…そっちの要件が一番重要そうね。」
「まぁ、君は少し危なっかしい所もあるけど大丈夫そうだし。酒は飲みすぎないようにね。」
「…気を付けるわ。」
「ね?説教くさいでしょ?」
「そう?心配してくれているんだもの、嫌じゃないわ。」
「だって、良かったね、ユーラ。」
「…良くない。不安しかない。イーチェンを同じ家に住ませたりして…。」
「何だそれ?聞いてないぞ?!」
「…まぁ、大丈夫だよ。部屋は隣じゃないし。」
「そう言う問題か?何故そんな事に…?」
「リネアがソフィアに頼んだんだよ。」
「お前な…。飯につられたか。」
「…もうきるね。そろそろ寝たいから。」
「おいっ!」
僕は電話をきった。
「セル…ちくったな。」
「報告しただけだよ。」
「…まぁいいや。セル…二人で少し話したい。」
「うん。」
僕とセルは二人でバーに出かけた。
「…乾杯」
「乾杯」
「…色々あったね。本当はユーラもいて欲しかったね。」
「そうだね。私たち三人で移り住んで色々な事があったもんね…。」
「うん、だから最後はセルといたかったんだ。」
「リネア…。」
「ん?」
「本当にありがとう。」
「何が?」
「全部だよ。エンゲル王国でおこったことすべて、君がいたからおこったことばかりだ。君がいなかったら…私たちは今バラバラだっただろうし私も生きていたかわからない。君が私に生きる意味を教えてくれたから、私は今自分の幸せを見つけられた。」
「…大袈裟だよ。私は…ただ、みんなと仲良くなりたかったんだ。」
「メルア大陸の生活が君との最後の生活になるのは寂しい。だけど、これからも君がずっと私たちの近くにいると信じてる。」
「うん、もちろんいるよ。」
「…昔、フレーデル王国でキスしたの…覚えてる?」
「したね。クラブで。あとオークションで。」
「最後に言わせて。ずっと…特別だった。好きだったよ、あの頃からずっと。」
「ありがとう、セル。」
僕はセルの頬にキスをした。
「…これからもよろしくね。ずっと私の弟でいて…。」
セルが僕を抱き締めた。
「…離れたくないなぁ。」
バーからエンゲル王国の有名な橋のライトアップが見える。
…色々あったエンゲル王国での生活も今日が最後だ。
メルア大陸からこちらに戻ることはもうないだろう。
この街ともお別れだと思うと少し寂しい。
でも、新しい国での生活はやっぱり楽しみだ。
小説を読んで頂きありがとうございます。
リネア視点でのお話はこれよりしばらくおやすみになり、これからは時々ヴィクトリア視点のお話になります。




