姉上と俺 2
ミハイルが部屋に戻ってから俺は姉上と話をするためダイニングに入った。
「…ミハイルにまでふられちゃった。」
「姉上…、どこまで本気なんだ?」
「分からない…。でもミハイルなら諦めれそうなのは本当かも。」
「あんなふうに言われたら混乱するに決まってるじゃないか。」
「そうよね。ちょっとやりすぎた。」
「リネアは…ミハイルの言うとおり、ちゃんとミハイルの事も大切に思ってる。だから…あの言い方は…。」
「あたしが…、あんたとリネアに一緒になってもらいたいと思ってたから。二人にはあたしの分まで幸せになって欲しいって…。そんな自分勝手な我が儘にミハイルを利用するなんて良くないわよね。」
「…気持ちは嬉しいけど…。」
「リネアが羨ましくなっちゃった。自分の好きな人に好かれていて、しかも結婚できる身分で、あんなふうに誠実に大切にされて…。」
「…姉上…。」
「あたしは、自分が望まない結婚をしなきゃいけないし、それは仕方ない事だって昔から覚悟はしてきたんだけど…。」
「気持ちは良く分かる。俺も同じだから…。俺だって諦められずにいるから次へ進めない。」
「…あたしたちも、そろそろ進まなきゃいけないかしら?」
「…そうだな。悔しいし辛くても、国王のこどもに生まれた責務は果たさないといけないよな。」
「いやだな…。あんたがリネア以外の女性を選ぶなんて。」
「なんで姉上はそんなにリネアを気に入ってるんだ?」
「だって初めてあんたが愛した人だし、彼女は…あたしをあたしとして見てくれるから。」
「…。」
「姉上…。俺たちも、そろそろ潮時かもな。」
リネアが好きだ。愛してる。
だけど…。俺も前へ進まなければ。
「そうね。お互いやるべき事をやらないとね。」
俺の初恋。おそらく最初で最後の恋…。
◇◇◇
「今、なんて言った?」
執務室で昨日姉上とした話をミハイルにした。
「だから、俺も婚約者を探す事にした。既にお前たちは婚約して結婚を決めているんだ。俺の出る幕なんて今更ないんだよな…。」
「…フリッツが…他の女性と婚約する…?」
「ああ。条件の良い国の皇女が数人いるから、その中から選ぶ事にする。姉上も同じようにする事にしたから、お前も彼女のおかしな言動に付き合わなくてすむから。」
ミハイルが黙りこんでしまった。
「…何故お前がショックを受ける?やっとしつこいライバルがいなくなるんだ。喜ぶべきところだろ?」
「…。」
ミハイルが明らかに動揺しているのが分かる。
「お前も今年国へ帰るんだ。寂しいが俺たちもいよいよお別れだな。リネアと三人でいれた時間が終わるなんて本当に考えたくもないが、いつかはこういう時が来る。」
「リネアが結婚するまではフリッツは誰とも婚約しないと思っていたよ。…本当にいいんだ?」
「ああ。もう決めた。」
「…。」
「俺はリネアをもう追いかけない。」
「…そう。じゃあ私の勝ちだね?」
「そうだな。悔しいけどお前の勝ちだ。ミハイル…。」
「何?」
「リネアと幸せになれよ。」
やっと言えた…。
言っていて涙がでそうになるほど辛くて心が痛い。
そして目の前にいるライバルであるはずのミハイルが涙を流していた。
「ミハイル…。お前、大丈夫か?」
「…フリッツ、今日は帰るよ。それから…今日の夕食は別々にしよう…。色々考えたい。」
「…ああ…。」
想像以上に俺の決断はミハイルにとってショックだったようだ。
寂しいよな、ずっと一緒にいたのに離れ離れになるんだから…。
でも、お前がそれを選んだんだ…。
だから俺も、前へ進む…。




