ライヒ王国へ
「お前と二人で馬車に乗って、一緒に仕事でかけるって…数年前なら考えられない事だよな。」
「フリッツは私が嫌いだったからね。」
クラウディア達がクーデターを未然に防ぐ為、証拠書類を議会に提出し関わった者達それぞれの処分を行ったのが先週。
私たちはその後の処理や国の運営を補助する為にライヒ王国に向かうことにした。
無事に政権交代も進みそうで安心している。彼女達とも常に連絡をとっていたお陰でスムーズに計画が進んだ。
フリッツの手際の良さと行動力には感心する。
フレーデル王国の首都からライヒ王国の首都まで馬車で約2日。馬車の旅もなかなか楽しい。
「お前が俺に意地悪ばっかりしてきたせいだろ?」
「そうだね。」
「…でも今は楽しいと思ってる。一緒に仕事するのも、生活するのも。」
「…ありがとう、嬉しいな。私も楽しいから…。」
こんなふうにフリッツと一緒にいられる日が来るなんて…。
「リネアのお陰だな。彼女に会えなかったらフリッツとはもう関わることなかったと思う。」
「…お前にこんなこと聞くのもなんだけどさ、お前リネアのどこが好きになったんだ?」
「…そうだな。最初は好奇心だった。君に嫌がらせもしたくて…でも彼女が私の人生を変えてくれたから。セルゲイや私の為に自分を殺したかもしれない父と直談判したり、父の病気の時は必死に私たちを助けようとしてくれた。マルクやレナートとも私たちをつなげてくれた。…もうこれ以上説明や理由はいらないんじゃないかな。彼女以外にそんな人いる?」
「…確かに十分だな。あいつは他人の為にすぐに必死になるからな…。」
「フリッツこそ、いつリネアを好きになったの?」
「…言わない。」
「何それ?ずるいよ。」
「…スモーランドに、違法取引を調べに短期留学した時。一生懸命で可愛くて…。」
「それだけ?」
「…最初はそんなもんだ。でも一番の理由は…。」
「何?」
「あいつ…元男だろ?最初会った時もっとオスカルっぽくてさ。なんていうか、ギャップにやられた…。」
…フリッツが照れて赤くなって目を反らした。
「…なんて言っていいか…。なかなか君も…。」
変人だ。
「…いいんだよ、分からなくて。」
「…いや、確かに彼女は可愛いし、それでいて男の部分があるから一緒にいて楽だよね。」
「そうなんだよ。…俺は別に男に興味がある訳じゃないがリネアのあの感じが…。見た目女で中身が男で、それを克服しようと頑張っている所とか可愛すぎるだろ?見た目も可愛いし、性格も全部好きだ。自分勝手で我が儘なところも憎めないし、甘えたりずる賢いところもあって…」
…聞くんじゃなかった。フリッツの話がとまらない。
とにかく全部好きなんだな。
聞いているこっちが恥ずかしくなる。
「…あげないよ?」
「…俺は最後まで諦めないつもりだ。」
「…それはいいけどね。」
フリッツとリネアは最初からお互いの存在が特別だったんだろう。理屈なんかなくても…合うんだろうな。
二人は私たちが婚約した今も特別なままだ。
私はフリッツにリネアを譲るつもりはないけど
この二人の気持ちは伝わってくる。
私はずるいな。
リネアもフリッツも失いたくなくて
自分が一番居心地のいいポジションを確保してる。
「私を許せない?」
「…やり方は気に入らないが俺だってずるをした事もある。リネアが幸せになれるなら、嫌だが我慢できる。お前こそ、俺に早く諦めて欲しいんじゃないのか?」
「そうでもない。君がいつまでもライバルでいて欲しい。」
「…勝手な奴だな。じゃあメルア大陸行きは了承してくれよ?」
フリッツがニヤっと笑いながら私を見た。
「駄目だよ。…何もしないなんて絶対ありえないから。」
「そうだな。」
「…フリッツ…。」
フリッツは笑って窓の外を見た。
「いよいよライヒ王国だ…。」




