セルとシャーロット様
「リネアがエンゲル王国からいなくなって、兄上もいなくなった後、シャーロットは落ち込んでいたんだ。」
「…そうなの?」
「うん、親しい友人はあまりいないみたいだから。それである日チャーリーズの店で私を見かけた時、私に声をかけてきたんだ。」
「'…セルゲイ、頼みがある'って…。」
「…クッキング?」
「良く分かったね。」
「…まあ、私もユーラも教えていたし。」
「そうなんだ。城の者だとお互い気を使って疲れるから友人が良かったらしい。それでね、何度もここに来ているうちに…。」
「どっちから?」
「…言わない。」
「…セルからか。」
「…綺麗な人だなって思って…。」
「した…。」
「キスだよ。」
「…キスだけ?」
「…それが先週の話なんだ。」
「…うわっ。じゃあ付き合ったばかり…?」
「うん。私が付き合う?って聞いたら…。」
「'ああ、そうだな'っていいそう。」
「…よく分かるね。」
「まあね。」
セルが真っ赤で照れてる…。
ヤバい、可愛すぎる。
「ぎゅーってしたいけどしたらまたシャーロット様に怒られそうだから我慢するよ。おめでとう、セル。良かったね。」
「…うん。今結構幸せで。」
本当に嬉しそうだ。良かった…。僕まで嬉しくなる。
「…メルア大陸には私一人で行くよ。セルはシャーロット様と来たらいい。」
「…どうして?」
「邪魔したくない。私のわがままに巻き込みたくないから。イーチェンが行くことになったからイーチェンに飛行機に乗せてもらおうかな。」
「…イーチェンと二人で…?」
「…まあ、なんとかなるよ。」
「…とにかく兄上に今から電話する。」
◇◇◇
「駄目。」
「駄目だ。」
「…なんでフリッツがいる?」
電話から顔が見れるビデオ電話にアップグレードされてる。
しかも何故か画面に二人映ってるし。
「…住み心地がいいから寮をでて俺もここに住んでる。飯も旨いし。」
「はあ?」
「とにかくリネア、イーチェンと二人は駄目だ。」
「フリッツ…。」
「君は彼に何をされたか忘れた訳じゃないだろう?…あ、セルゲイ、おめでとう。」
「兄上…。リネア、さっそく話したの?」
「そりゃね。おめでたい話は共有したいし。」
「セル…お前、あんな男みたいな女と付き合い始めたのか?」
「リネアと付き合ったフリッツに言われたくないよ。」
「確かに…。」
「とにかく、私は行くよ。セルは今一番楽しい時期だから連れていけない。」
「駄目だ。」
電話越しに保護者が二人、横に一人…。
「セル、電話を切って。」
セルに頬をつねられた。
「リネア…。二人が正しい。私がやっぱりついていく。」
「…じゃあシャーロット様が準備できたら行くって事にする。」
「…そうして。私はイーチェンと二人はもう止めて欲しい。絶対二人で住んだりしないでよ?」
「…分かったよ。」
「俺がそのうち行くから。」
「…フリッツ?聞いてないよ?」
ユーラがフリッツを睨んだ。
「ミハイル、俺も一年後に行くつもりだ。まあ短期でしか無理だが。」
「…あのさ、イーチェンも危険だけどフリッツはもっと危険じゃない?」
ユーラが頷く。
「セルゲイの言う通りだ。フリッツ…駄目だよ、君は行ったら。」
兄弟連携プレーだな。
「いや、行きたい、行ってみたい。」
「うん、来てよ。」
ユーラが画面越しで物凄く不機嫌そうになる。
「…君たちはさ、おかしい。」
「なんで?」
「おかしくないだろ。」
「リネア、君は私の婚約者なんだよ?」
「はい。」
「で、フリッツは元恋人。…私がいいって言う訳がない。」
「…だってさ、行ってみたいよね?見てみたいよね?知らない大陸だよ?」
「そうだ。ミハイル。嫉妬なんて下らない。ただの好奇心だ。お前には冒険心はないのか?」
「そうだよ!冒険だよ!」
「あのねー…。」
「兄上、この二人には常識とか通じないから…。シャーロットにも注意されていたし。」
「…とにかく、フリッツの件は別として、君はセルゲイ無しには行かないこと。」
「はいはい。じゃあもう切るよ?」
「リネア」
「…何?」
「…愛してる。」
うっ…。
「…。はい。」
フリッツの前で…。
「お前なー。」
フリッツがミハイルの頭をげんこつで叩いて僕を見た。
僕はフリッツに手を振る。
フリッツも僕に手を振った。
電話を切るとセルが僕を見ている。
「…何?」
「…会えて嬉しかったのどっち?」
「何それ?」
「ねえ?」
「…何で?」
「駄目だよリネア。私は君ときょうだいになるのを楽しみにしているんだから。」
「何が言いたい訳?」
「…君が一番分かってるはずだけど?」
セルが僕の頭を撫でる。
「…何?」
何なんだ…?




