リネアとの食事
婚約した次の日、私は街で一番人気のレストランを予約した。
「…乾杯」
「乾杯。」
二人とも久しぶりに正装しての食事だ。
リネアは私があげた指輪をして来てくれた。
リネアは来月誕生日祝いが終わったらエンゲル王国へ行く事が決まった。プレゼントに父上がエンゲル王国行きのチケットを渡していた。
「なんだかんだ言ってニコちゃんは私に甘い。」
「まあ君が好きだからね…。色んな意味で。」
「…うん、早くいい人みつかるといいのにね。」
「…父上の話は置いておいて、今日は私たちのお祝いだから。」
私はリネアの手を握った。
こんな日まで父の話をしたくない。
「…うん。そうだね。」
可愛い婚約者が私を見つめる。
「…やっぱり不思議。」
「何が。」
「なんでユーラが私を選んだか。」
「今更…。」
「…私で良かったの?」
「…君がいいんだよ。」
「ユーラは…フリッツが好きだから私を選んでくれたんだよね?」
「…リネア、もうフリッツの話もおしまい。食事を楽しもう?」
「そうだね。」
人気の店と言うだけあって食事は美味しかった。
リネアがとても喜んでくれたようで私も嬉しい。
本当に、私の婚約者になったんだ。
「…リネア…うちに来るよね?」
「うん…。」
食事の後私の家についてからまた二人で酒を飲んだ。
「おいしい…。」
「リネア、飲み過ぎじゃない?」
…今日はリネアはいつもより早いペースで飲んでいる。
「やけ酒?」
私はリネアを見た。
リネアが目を反らす。
「…嬉しいと思ってるんだよ。ユーラが好きだし。」
「…うん。」
「…だけど」
「うん?」
「ユーラは…?」
「…どうしたのさっきから。どうして私の気持ちを確認してるの?」
リネアが私を抱き締めた。
「…ゲームが終わったから…。」
「え?」
「フリッツとのゲームが終わったから、もう私の事はいらなくなるような気がして…。」
「…そんなふうに心配するなら私の側にいてくれたらいいのに。」
「…私は行くよ。どうしても行ってみたいんだ。」
「そう言うと思った。」
「…」
リネアが変だ。
フリッツが忘れられないせいだと思っていたがそれだけではないようだ。
彼女は私にキスをして私の頬を撫でた。
「…リネア?」
「…好きだよ、ユーラ。」
「私もだよ」
「…もしユーラに他に好きな人ができたらさ、隠さずに私に言ってよ。」
「どうしてそんな事ばかり言ってるの?私たちは婚約したんだよ?今日はそのお祝いなのにそんな顔しないで…。」
リネアが私の膝に頭を乗せた。
「離れるのが不安なんだ。メルア大陸に行きたいって我が儘を言ってるのは私なのに。」
「困った人だよね。」
「うん…。本当に。ユーラ」
「ん?」
今日はずっとこんな甘えモードなのか?
私はリネアの頬をつねった。
「リーネーア?」
上目遣いで猫みたいだ。
「ユーラ、一緒に来てよ。ユーラと行きたい。」
「…駄目。私は私のやりたいことを見つけたから。フリッツの近くで彼がどのように国の事を考えて動いているのか見てみたいし、私も自分の国をどうやって良くしていくか考えてみたい。」
「…。」
「君の国にもなるんだからね。」
「…初めてだね。我が儘を聞いてくれないのも、私に合わせてくれないのも。」
「そうだね。」
「…でも嬉しい。ユーラにやりたいことが見つかったこと。本当によかった。もう出会った頃みたいな目をしていないから。」
「うん。君とフリッツのおかげだよ。私は二人がいたから変われた。」
「うん。私もフリッツとユーラがいたから自分がリネアになったことを肯定できた。」
友人からはじまって義理のきょうだいになって、ようやく恋人になれて婚約もした。
長かった…。
「君がいたから、私は自分らしくなれたし、父や兄弟、フリッツともちゃんと関係を修復できた。本当に感謝しかない。」
リネアを抱き締めるとリネアが私に微笑んだ。
「ユーラ、これからだよ。」
「フリッツにも同じ事を言われた。」
リネアとフリッツ…
お互いを想いあっているのに
私がいたから一緒になれなかった。
私がリネアとフリッツから離れたくなくて
ズルい手を使って我が儘を言ったから…
「リネア…ごめんね、卑怯な事をして。」
「謝らないで。私が選んだんだ。」
「リネア、愛してる。」
「うん、私も。」
あと少しでまた離れてしまうのか…。
寂しいな…。




