旅立ちの前に
リネアの18歳の誕生日パーティーと送別会を友人一同で行った。
俺はパーティーの後少し二人になりたくてミハイルに頼んで二人にしてもらった。
二人で良く行ったカフェにまた出かけて、同じ場所に座った。
「あのおかしな小僧だったお前が18歳か…。」
「フリッツが20歳なのも驚きだよ。」
「エンゲル王国にはどれくらい行く予定なんだ?」
「3か月くらい。シャーロット様のホテル事業を少し手伝わせてもらうんだ。あとチャーリーズの店の様子も色々確認したいしね。」
リネアが美味しそうにアップルパイを食べている。
相変わらず食いしん坊だ。
「リネア、フレ-デル王国に戻ってきてくれて嬉しかった。婚約をやめた後そのまま別れなくて本当によかった。」
「私もそう思ってる。一緒に勉強したり仕事したりできて本当に楽しかった。」
「あのさ」
「ん?」
「…メルア大陸に以前俺も短期で行ってみたいっていってたの覚えているか?」
「うん」
「俺も見てみたいんだ。俺の知らない国を。だから、来年向こうで会いたい。」
「本当?嬉しい!」
「…あとさ、たまには俺にも電話してくれたら嬉しい。」
「もちろんだよ。フリッツもしてよ。」
…リネアの笑顔…。
やっぱりドキドキする。
もう他の男の婚約者なのに。
「ユーラはさ…。」
「え?」
「ユーラは…フリッツが好きだから…私を選んだんだ。」
「なんだそれ?」
「フリッツと離れたくなくて、私といたらフリッツと離れないと思ってるんだよ。」
「…いや、お前の事を好きなんだろ?」
「そうだけど、一番好きなのはフリッツなんだよ。最近仕事引き継いだでしょ?毎日フリッツの話をして、フリッツは凄いって嬉しそうにしてるんだよ。もう四六時中フリッツの話を聞かされてる。」
「…」
確かにあいつ嬉しそうだよな。
「私が出発するのもあまり気にしてないんじゃないかな?一緒に住みたいとか言ってたわりに夜遅くまで執務室にいて朝早くにでてくし。」
「…確かに朝早くから仕事してるぞ?」
「ユーラは一度何かに執着するとそういうふうだから…。まあ宜しく頼んだよ。」
「…ターゲットが移った?」
「…かもね?」
嘘だろ…?
「じゃあもう婚約解消してもらえよ?」
「それは違う。」
「なんだよ?」
「だから、それがユーラのややこしい所なの。ユーラは私とフリッツが一緒になったらフリッツと離れちゃうと思ってるんだよ。だから私をキープしたい訳。」
「…嘘だろ?」
「嘘じゃないよ。婚約して分かったんだ。確かにユーラは私を愛してくれてるし大切にしてくれてる。だけどそれは家族愛に近くて、本当に好きなのは…。」
俺は思わずリネアの口をふさいだ。
「…これ以上…聞いちゃいけない気がする。」
「…私が言いたいのは、とりあえず仲良くしてねって事。」
「…お前、いいのか?そんなんで。」
「まあいいんだよ。お互い様だし。」
「お互い様って…。」
リネアが笑って俺の頭にもたれた。
「フリッツ…」
「…お前さ…。こういうの反則だろ?」
心臓のドキドキが止まらない。
「私もズルいんだよ。でも、もうしばらくあえないから、少しだけ…。」
俺はそのままリネアを引き寄せた。
「…。」
「フリッツの匂い…。」
「何?くさい?」
「じゃなくて昔から好きで…。」
「…リネア…」
なんなんだ?!
なんで最後にこれ?
「フリッツが他の人と結婚したらいやだな…。」
「…お前なあ…。」
本当に勝手な奴だ。
俺がこんなに振り回されるなんて…。
「…私の事、忘れないでね。」
「忘れられたらよかったんだが。」
「駄目だよ。」
「…お前は?」
「忘れるはずない。」
…キスしたい…。
駄目なの分かっているけど
リネアが俺を上目遣いで見て笑う。
「…悪い奴だ。」
「…そうなんだ。悪い奴なんだ。」
リネアはそう言って俺にキスをした。
「…好きだよフリッツ…。私の事、忘れないで。」
リネアは席を立つと、そのまま店を出て行った。
こんな別れ方…ずるくないか?




