ビオトープの現場にて
「リネア様のお話、とても興味深いです。」
「だろ?リネアは本当に色々な経験をしているからな。」
「フリッツが得意になってどうするの?」
街から離れた郊外のビオトープの建設を見学させてもらいながら、僕はキリム共和国の自然の循環システムについてスタッフの人たちと話をしていた。
フリッツも今日は同行してくれてみんなでランチを食べた。
「昼からの作業に私も参加させてもらえませんか?」
「えっ?お前もやるのか?」
「うん、やってみたいんだ。」
「…よし、じゃあ俺もやる。」
「殿下!?」
「リネア様?!」
僕たちは土を運んだり整備するお手伝いをさせてもらった。
フリッツはすぐに飽きるかと思いきや結構根気よくやっていた。
「なかなか楽しいな。」
「うん、土遊びをしているみたいだよね。」
「お前、泥まみれだぞ?」
「フリッツもだよ。」
フリッツが草むらに寝転んだ。
僕も横に座った。
「コーヒー飲む?」
「ああ。用意がいいな。」
フリッツとこうしていられるのもあと少し…。
「リネア、次の場所は…。」
「フリッツ…、今回のが最後になりそうだよ。」
「リネア…?」
「私は、メルア大陸に行く。」
「…リネア…?」
「…再来月あたりに出発する予定。最初はエンゲル王国へ行って
、それからメルア大陸に向かう。」
「…ミハイルは?」
「行かないって。」
「お前たち…?」
「フリッツ…。私たち来月に婚約するんだ。」
「…。」
僕はフリッツの顔が見れない。
作業している人を眺めながら話を続けた。
「二年猶予をもらったんだよ。結婚を条件に。これが最後の自由時間になりそうだ。」
「…。結婚…。」
「…うん。」
「あいつ、また結婚してくれなかったら死ぬとか言ったのか?」
「…言ってないけどさ、まぁ言わなくてもね…。私をリスラ共和国に連れて帰りたかったみたい。」
「…お前は幸せになれるのか?」
「なるよ。自分の気持ち次第だ。…フリッツも幸せになってよ。そうじゃなきゃ困る。」
フリッツが僕を抱き締めた。
「…お前がいないのに?」
「うん、いなくても。」
「俺に合うのはお前しかいないのに?」
「うん、それでも。」
「お前は…俺が合っていたのにな。俺なら自由にしてやれたのにな。せっかく養子から外れられるって決まったのに…。」
僕はフリッツの頭を撫でた。
「…。」
フリッツの髪の毛、長い睫毛、グレーの切れ長の瞳…
ずっと僕のだったのに
僕への笑顔が誰かに向けられて
誰かを抱き締めて
誰かを愛してしまうんだ。
嫌だな…。
「…リネア。」
「ん?」
「俺はお前が好きだからお前以外は嫌なんだ…。」
「フリッツ…。」
「俺は後悔してる。ニコライ大統領が養父でも諦めなきゃよかったって。」
「いや…あの行動をみたら怯むのが普通だから。」
「後で冷静になって考えたら、わざとやったって分かったのに。」
「わざとやる事自体が異常だから…。」
「…確かに。」
「殿下!」
僕たちが話をしていると担当の人が慌ててフリッツの所に駆け寄ってきた。
「あっ、お邪魔でしたか。」
座っている僕にフリッツが抱き締めている体勢をみていちゃついていると思われたようだ。
「まあ?」
「…あの、たった今連絡がありまして、帰りの道が倒木により封鎖されたとことで…今日は王都へ戻るのは難しいようです。」
「そんなのどうにかならないのか?こちらの重機を使ったらなんとかなりそうじゃないか。」
「それが、先ほど重機とスタッフは別の場所へ帰ってしまい、残っているのは私を含め数人のスタッフだけなんです。」
「…別の道は?」
「馬車の通行は難しいかと。」
「フリッツ…どこか泊まれそうな場所はある?明日まで待った方がいいよ。」
「そうだな…。近い場所に数軒あるからあたってみるか。」
「うん。」
僕たちは馬車で近場の宿をまわり、人数分の部屋を確保した。
ユーラに知られたら怒られそうだな…。
僕は腕に残るキスマークを見て少し怖くなった。




