リネアと私 3
リネアが私を見る。落胆したような表情。
ああ…予想どおりだ。
まだ一緒にいると決めてそれほど経っていないのに、彼女の心はすでに私から離れつつあるようだ。
暫く茫然としながら何かを考える様子を見せた後、リネアは私を見た。
「…なんで?なんで帰国するの?」
「私も政治に興味をもち始めたから。」
「…メルア大陸は?」
「行かない。」
「…楽しみにしていたんだよ、一緒に行くの。」
「カジノ建設が終わって運営が起動に乗るのを確認したら国に戻ろう、もう行く理由がなくなったから。」
「…私は行くよ。ユーラが行かなくても。」
「…リネア。我が儘を言わないで欲しい。」
「…あと二年ちょっとある。ニコちゃんと約束した期限まで。」
「そうだね。」
「私にその時間をくれない?」
「どういう事?」
「メルア大陸に行かせて欲しい。」
「行かせたくない。もう誰にも出会って欲しくない。」
「ユーラ…最後のお願い。」
リネアが私を抱き締めた。
「…最後?」
リネアが私をじっと見つめる。
「最後の我が儘だよ。メルア大陸から帰ってきたらさ…。」
リネアが私の頬に触れる。
「…結婚しよう。ユーラ。」
「リネア…。」
「ユーラと私は、結婚するか、ユーラが死ぬかの選択肢しかないのは分かってるから、私は結婚をとるよ。」
「間違ってないけど…さらっと選んでくれるんだね。チョコレートケーキかショートケーキを選ぶくらいの話に聞こえるよ。…本当はフリッツを選びたかったんじゃないの?」
「…ユーラ、私はユーラが死んでいなくなるのは嫌なんだ。フリッツは私がいなくても生きていけるけどユーラは…ね。」
「…よく分かってる。」
私はリネアの肩に頭を乗せた。
「私はユーラが好きだよ。束縛されたり嫉妬されるのは嫌だけど、こうして二人でいるのも好きだからユーラと一緒にいる。もう決めた。」
「…ずるいな、君は。そんな交換条件…私が断れないのを知っていて。」
「最後の自由だよ。」
「うん、もう最後にして。…キスしていい?」
「うん。」
「それ以上もしていい?」
「…聞かなくていいんだよ。私はユーラの恋人なんだから。」
「そうだよね。愛してる、リネア。」
「私も愛してるよ、ユーラ。」
「もう誰にも渡さないから。」
フリッツにも、誰にも…。
私は私のやり方でリネアを幸せにする。
翌朝、目を覚ますとリネアがコーヒーを入れていた。
パーティーの日からずっとまともに寝れていなくて、久しぶりによく眠れたようだ。
「ユーラ、新婚旅行はヤーパンに行こう。」
「いいね。…リネア…。」
「うん?」
「私を卑怯だと思う?」
「…まあ、ユーラらしいというか。」
「卑怯なのが?」
「心理戦に持ち込む所が。」
「だって…このままだと君別れるって言いそうだったし。」
「さすが。メルア大陸に行く事を断られたら別れるって言おうと思ってた。」
「…やっぱり。」
私はベッドに顔をうずめた。
「拗ねた?」
「…。今迄女性からこんな扱い受けたことない。私なら君がやきもちをやいてくれたら嬉しいのに。」
「少しのやきもちなら嬉しいかもしれないけど全身痣だらけなのは恐怖だよ。しかも私は女性だけど半分男だから普通の女性にと同じものを求められても困る。」
「…だから好きなのかも。」
「…ほどほどでお願いします。」
「…君が好きすぎてたまにおかしくなる。君だけなんだ。私が冷静でいられなくなるのは。」
「…離れるのもいい機会かもね。」
リネアが私の頭を撫でる。
「本当は一緒に行きたいし一緒にいたい…。」
「来たらいいのに。私は一緒に行きたい。」
「いや、私はここでやるべき事を終わらせて国へ帰る。フリッツみたいに国の事を考えてみたくなったんだ。」
「うん…。わかった。困った事があったら連絡していい?」
「もちろん。毎日連絡して。」
「あとお金に困ったら借りていい?」
「…ちゃんと返してくれるなら。」
…この嬉しそうな顔。
結局自由に好きな事ができるのが彼女の一番の幸せなんだろう。
でも約束は約束だから
リネアが二十歳になる迄
それまでの自由だ。
「あっ!今日はフリッツとビオトープの工事を見に行くんだった。」
「…。」
「今日は遅くなるかもしれないから待たないようにね!」
リネアは早くメルア大陸に行った方がいい。
フレ-デル王国にいるのが一番危険だ。




