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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
フレーデル王国編
290/350

フリッツの執務室にて

「…リネア…お前…なんか変じゃないか?」

「…気のせいだよ。」

執務室で仕事を終えて帰ろうとしたリネアを俺は呼び止めた。


「ミハイルと何かあったのか?」

リネアはクラウディアとの会合以来、ランチの時間も仕事に来ているし、今まで着なかった首まで隠れるセーターを着たりスカートを一切履かず常にパンツ姿で服装もおかしい。


「風邪だよ、風邪をひいたんだ。」

「…。」


俺がリネアの腕をつかむと腕に痣のようなものがいくつもあった。

「…何だこれ?」

「…なんでもない。」


「リネア?」

リネアが変だ。逃げるように部屋を出ようとする。


「…お前…。ちょっと…。」


俺はリネアの腕を掴み服の袖をまくった。

…痣?


「…見ないで。」

「…何だこれ?」


「…キスマーク…。」

「ミハイル…?」


「…大丈夫だから。ね?」


キスマークだとしても…なんて言うか、

「…怖い。」

「…だよね。」

リネアがため息をついて椅子に座った。



「…コーヒー飲むか?」

「…ビールない?」

「…部屋にはあるぞ?持ってこようか?」

「うん。」




リネアは俺が渡したビールを開けると一気に飲んだ。

「…大丈夫か?」



「…フリッツに言う話じゃないんだけど…。聞いたら不快かもしれないよ?」

「それでも聞きたい。」



リネアは暫く考えた後、ビールを一口飲んで呟いた。

「…ユーラはさ、ちょっと歪んでるよね?」

「ああ、昔からな。」


「…私さ、ユーラと一緒にずっといたし、彼の優しい所を見る事が多かったから、彼の歪んでいる所は少しずつ改善されてきたって勝手に思っていたんだけど…。」


「そうじゃなかった…?」


「…何て言うか、好きなものへの執着心が半端じゃないんだよね。だから私が失踪した時はキリム共和国にも来てくれたし、帰国後も側にいてくれたんだけど…。度が過ぎるというか…。」


「…俺が好かれていた時は子どもだったからもっと露骨だったぞ?好きな友人をとられたり、大切なおもちゃをとられたり…。意地悪もたくさんされた。」


「…承認欲求が強いというか、他人を信じられないというか、ヴィルと似てるんだよね。幼少期に厳しく育てられたせいか孤独なところも。」


「確かに。」


「ユーラ、私とこのまま一緒にいたらもっとおかしくなるんじゃないかなって心配で。最初は普通だったのに、どんどん嫉妬や執着がひどくなっていったらどうしようって…。」

「どうなんだろうな。俺には人当たりも良くなってすごく付き合い安くなったけど。」


「フリッツはユーラの特別だから…。」


「…そのキスマークは歓迎パーティーの日か?」

「うん…。」


「まあ、お前相変わらず目立ちまくって色んな男と楽しそうに踊っていたからな。しかも無自覚にすぐ人に触るし触らせるから面白くなかったんだろうな。」

「そうみたい。…でも分かんないんだよ、私にとっては男も女も同じ友だちで、男は駄目でって言われても男の方が話しやすいし気もあうし。」


「まあなー。」

分からなくもないが、ミハイルの気持ちも分かるには分かる。ただ、ちょっと度を越えてるが。



「私、束縛とかめちゃくちゃ苦手だから。ヴィルから離れたかった理由もそれが一番だし。」

「だろうな。」


「ユーラはそのヴィルをはるかに越えるレベルで、今回正直ひいちゃったんだよ。それだけ自分を想ってもらえて嬉しいとか、私にはそう思えないんだよ。」

「…ミハイルは物凄くモテるんだぞ?お前、普通に考えたら幸せな状況なはずだろ?」


「あのさ、フリッツは私の性格分かってるよね?」

「まあ。」


「恋愛中心で生きれないし、面倒なのは苦手なんだよ。」

「…今のミハイルに言うなよ、絶対傷つくから。」


「うん、だけどさ、これ…見てよ。」

リネアがタートルネックのセーターの首の部分を下げて首を見せた。首のいたるところが赤く痣のようになっていてしかも…歯形?


「噛まれた?」

「噛まれた。」


「ヴァンパイアみたいだな、あいつ。」

「…だよね?!」


…駄目だ…。想像したら笑えてきた。


「…くっ…。」


思わず笑ってしまう。リネアもつられて笑いだした。


「…それでさ、怒られている時にヴァンパイアにぴったりだって思って笑ってたらまた余計怒らせて。」


「…笑っちゃ悪いが…。確かに似合う。」

「でしょ?!…ね、分かるよね?」



「…でも、ミハイルが悪いとは言えないな。お前は自由すぎる。パーティーの時パートナーを放置しっぱなしなのもおかしい。」


「…ユーラがみんなに囲まれてたから、私は私で楽しんでたんだけど。」


「ミハイルはそういうの望んでないの分かるだろ?別に目立つのも囲まれるのも好きじゃないし。」


「…確かに。…話聞いてくれてありがとう、フリッツ。」


「お前…大丈夫か?」


「うん、まあ何とかなるよ。」

「お前来週サークルでルイ達とどっか行くって言ってなかったか?」

「…ヤバい。約束しちゃった。」


「キャンセルできるのか?」

「…いや、ユーラと交渉する。今から行ってくるよ。」


リネアはそう言って部屋を出た。




あのキスマーク、あれが全身にあるのか?

…ミハイルにやきもちを妬くのを通り越してリネアが心配になってきた。同時に俺と同じように放し飼いにして彼女を失いたくないミハイルの気持ちも分かる。


あの二人…。


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