ユーラの嫉妬
「…ユーラ…、お願い。」
「…何?」
「もう…、私…。」
「どうして欲しい?」
「ユーラ…。何でそんな意地悪するの?」
「君が分かってないから。」
「分かってない?何を?」
「無自覚に異性に近づきすぎ。」
「へ?」
「何人の人と踊ってた?」
「さぁ…?いちいち数えてないよ。ユーラだって踊ってたよね?…っ!あっ…!」
歓迎パーティーが終わる前にユーラの家に帰ってきて、かれこれ一時間以上ユーラから謎のお仕置きを受けている。
手首をベッドに固定され身体中に恐ろしい数のキスマークをつけられた。
彼は想像以上に嫉妬深く独占欲が強かったらしい。
「ユーラ…。」
「キスして。」
僕は言われた通りキスをする。
「…誰にも触らせたくない。」
「へ?」
「全部私のなのに。」
「…ちょっと待って?パーティーにダンスはつきものだよね?ダンスをしたから怒ってるの?」
「それだけじゃなくて、色んな人に声をかけられてその度にボディータッチされてたの分かってる?」
「さあ?」
「君も平気で他の男をさわるし。」
「…今までもそうだったよね?」
「前は私の恋人じゃないからそんな事言えなかったけど、今は言えるよね?」
「自分も恋人になる前さんざんハグや頬へのキスを要求しておいて…?」
「私が恋人なら絶対許さない。」
「なんて勝手な…。…っ!」
少しでも反撃しようものならまた攻めてくる。
以前ユーラの言っていた変な妄想が現実になったようだ。
僕の弱いところを執拗に攻めて、身体があつくて苦しいのを分かってやっている。
なんていうか…
甘いを通り越して越して
「…くどい」
「え?」
「あ…。」
しまった、つい心の声が出た。
「…君はめちゃくちゃにされるのを望んでいるみたいだね?」
「ユーラ…。」
ユーラが意地悪そうな顔で微笑む。魔王みたいだ。
今後も…こんな事が続くのか?
「…あんまり独占欲強いのは…どうかと思うよ?」
「君は分かっていて私と恋人になったんじゃないの?私はちゃんと事前に伝えたよ?」
「言ったけど…。まさかここまでとは聞いてない。」
「もう離してあげないよ?私はフリッツと違って自由にあちこち行かせたりしないし、他の男性と出かけるのも認めないから。」
「…。」
「リネア…。」
「…っ!!」
「私を不安にさせる君が悪い。」
「ユーラ…。」
お仕置きが再開された。
「みんな君とフリッツがお似合いだって言ってたよ。」
「…気のせいだよ。」
「君だってフリッツを抱き締めてた。」
「ダンスが楽しかっただけだよ。」
ユーラは首筋にキスを何度もして、ついには噛むように歯をあてた。
「…っ!」
噛まれた!!
…ヴァンパイア…?!ユーラ、ヴァンパイア…?
ヤバい。似合い過ぎる。
駄目だ…。ツボに入った。
「…リネア?」
「…ごめん。」
「…何?」
「ヴァンパイア…。」
「…、そう。この状況で君はそんな事を考えていた訳。」
「…だって。」
駄目だ…笑いが止まらない。
「リネア」
ユーラが僕を睨みながらキスで口を塞いだ。
「…。ごめん…なさい。」
「冗談はもうおしまい。」
「…うん。」
「リネア、私を好き?」
「好きだよ」
「愛してる?」
「愛してるよ」
「じゃあ、証明して。」
ユーラが冷たい目で僕を見る。
僕の知らないユーラの一面。
彼を不安にしたらこうなるのか。
以前の彼を思い出す。寂しくて一人だったユーラ…。
だけど…
「ユーラは私を信じてないの?」
「…永遠とか絶対がないのは君が一番知ってるよね?」
フリッツの事か…。
「私を受け入れて。」
そう言ってユーラはいつもよりずっと激しく、僕の意志を無視して何度も僕を求め続け、
僕はいつの間にか意識を手放した。
僕が目を覚ますとユーラが紅茶を淹れていた。
「おはよう。」
…昨日の事は夢だったんだろうか?
そうだったらいいと思ったけど、足や腕についているキスマークをみると、夢でなかった事が分かる。しかも全身が重い。
「…。」
「…怒ってる?」
「ひどいよ、ユーラ。」
「朝ご飯食べない?もうすぐ会合の時間だし。」
「ごまかさないで。」
ユーラがベッドに座った。
「君を好きで、愛してるっていうのがひどいと言うの?」
「違う。あんなふうに私を弄んで…。」
「嫌だった?」
「もうしないで。」
「君次第だよ。」
「…。」
…とりあえず、ユーラの前で男性といるのは控えよう。
ユーラを不安にさせないようにしなきゃ…。
いつもの美味しいユーラの朝ご飯が、今日は味を感じなかった。
ユーラが僕を好きで大切にしてくれているのは分かる、だけど…。
「リネア、これ、プレゼント。」
「…何?」
「時計、使ってくれる?」
センスの良い時計だった。
「ありがとう。」
「いつも着けていてね?」
「…うん?ありがとう…。」




