クラウディアとユリア
スクールの授業の後、僕はクラウディアに呼び止められた。
「リネア…。少し…時間あるかな?」
「うん?」
僕はこの後ユリアと待ち合わせをしてカフェに行く予定だった。
「…ユリアとカフェに行くんだけど、一緒に行く?」
「…いいの?」
「うん。」
「…リネア?」
「クラウディアもいい?」
「いいけど…。」
ユリアは少し残念そうだ。
「今度ユーラも誘うから。」
「じゃあ、いいわ。」
馬車での移動以来ユリアはすっかりユーラのファンになってしまったらしい。ユーラがエンゲル王国に行く前に発足したファンクラブが復活して、それに入会したとか。
三人で歩きながら僕たちはファンクラブの話をした。
「…そうなんだ。ミハイル様ってこっちでも人気なんだ。」
「リスラ共和国でもですか?」
「うん、すごい人気だったよ。なかなか話ができる人はあまりいなかったけど。」
「リネアは知らなかったの?」
「私はあまりそういう話をしらない。ユーラも言わないし。」
「そう言えばフリードリヒ殿下のファンクラブもあるみたいですよ。」
「ふーん。フリッツはそんなのに対応する訳?想像できないな。」
「さあ?私も知らないわ。クラスの子が話しているのを聞いたの。」
僕たちはカフェに入ってケーキとコーヒーを注文した。
「おいしいっ。」
「ほんと。」
「でしょ?!お気に入りなんだ。」
僕は得意気に2人にお薦めを教えた。
ケーキのフォークを皿に置くとクラウディアが僕を見た。
「リネア…あたしさ、フリードリヒ殿下にふられちゃった。」
「…クラウディア…。」
「諦められない人がいるって。」
「…。」
「リネアごめんね。この前は意地悪言って。アタシ、正直必死だったんだ。どうしても国を守りたくて。別に殿下やミハイル様が好きだった訳じゃないんだけど、どうしてもチャンスを掴みたくて。」
「うん…。」
やっぱりそうか。
「リスラ共和国でも偶然を装ってリネアに近づいた。本当にごめん。」
「…いいよ、もう。」
「でもリネアと話をしていて楽しかったのは本当なんだ。初めて女性でこんなに話ができる人がいるってびっくりしたんだよ。それは本当だから。」
「私もそう思っていたよ。」
「あの…。」
ユリアがクラウディアを見る。
「クラウディア様は…好きな方がいらっしゃるんですか?」
「…。」
クラウディアの顔が真っ赤だ。
「…ユーラ?、あ、ミハイル?」
「まさかっ。あんな綺麗すぎる人、落ち着かないよ。」
「じゃあ…?」
「父と参加した会議の時に一緒にいた補佐官、覚えてる?」
「ああ、あの賢い感じの。」
「アタシ…ずっと昔から彼が好きなんだ。片想いなんだけど。」
クラウディアはそう言って少女のような顔をした。
「好きな人がいるのに国の為に…?」
ユリアには衝撃だったらしい。
「…アタシはライヒ王国の皇女だから。」
やっぱり、彼女は…。そうか…。
「羨ましい。」
ユリアが、ぼそっと呟いた。
「私は、まだ一度も好きな方も出来た事がない。これからも一生できないかもしれない。」
「…そんな事ないよ。ユリア様は綺麗だし女性らしいし見つかるよ!アタシの方が…。こんなんだし。」
「…っ。」
何故かユリアが泣き出してしまった。
「ユリア…。」
「ユリア様…。」
「…私、お友達もいなくて、性格も暗くて本当にどうしたらいいか分からなくて…。」
「あのっ、アタシも友だちいないから、友だちになろうよ?」
「クラウディア様…。いいんですか?」
「うん、アタシでよかったら。」
「ありがとうございます…。」
なんかよく分からないけど良かったような…?二人とも皇女である事以外全く共通点がないけど、嬉しそうだからいっか…。
夜、執務室に戻るとフリッツが仕事をしていた。
「フリッツのファンクラブがあるって本当?」
「なんなんだ、いきなり?」
「さっきそんな話を聞いたんだ。」
「まあ、あるみたいだぞ?…笑うな。」
「ファンサービスとかあるの?握手会とか。」
「ない。面倒くさい。」
「だろうね。コーヒー飲む?」
「頼む。」
僕はコーヒーを入れてフリッツに渡すと自分の仕事を始めた。今日は部屋からパソコンを持ってきた。
「お前…そんなん使ってるのか?」
「うん、だっていちいち紙に打ち出したりすると資源の無駄だしさ。あ、そういえば、次のビオトープにかかる資金を計算してみたんだ。」
僕は計算ソフトを使ってフリッツに説明した。
「…すごいな。めちゃくちゃよく分かる。」
「でしょ?昔から使ってた機械だよ。使うのを止めるべきじゃなかったよね?」
「人件費を削減するために機械を進化させすぎた結果、国民の仕事がなくなっただろう?昔ながらの生活をする事は雇用を守る事にもつながるからな。…しかし便利だ。俺も欲しいな。」
「じゃあユーラに頼んでみようか?それかイーチェンでもいいかも。」
「あ、そしたら、こんな計算もできるか?この書類なんだが…。」
「できるよ、簡単だよ。」
僕はフリッツの書類をいくつか片付けた。
「うわー。俺が3日かかってた仕事を一瞬で…。」
「リスラ共和国でもシアナ共和国でもみんなこれで仕事をしていたよ。書類なんかなくて。」
「うーん…。一考に値するな。」
「政府の仕事だけでもこれにするとか?」
「ああ…。」
「あ、そうだ。思い出した。」
「なんだ?」
「クラウディアの話。あのさ…。」




