困惑
「…やっぱりスモーランドを拠点にした方が良かったんじゃない?確かにフリッツに酷だよ。自分は好きでもない女性を選ぶよう周りに強いられて、本当に好きな人は恋人をつれて帰ってきちゃったんだから。」
「…だよね。少なくともユーラがスモーランドにいるべき?」
「…それも意味不明だけど。」
僕は寮につけた電話でさっきの話をセルに聞いてもらった。
「フリッツがさ、あのフリッツがおかしくなったなんて私、凄くショックで…。混乱してる。フリッツは私の中でめちゃめちゃ強い人ってイメージしかなかったから…。」
「ミッションを成功させる為に彼には関わらざるをえないんだもんね。皮肉だよね。」
「なんかさー、もう面倒くさくなってきた。…あ…。」
「リネア?」
「ユーラが聞いていました。ヤバいので切りマス。」
「…またね。」
僕は電話を切ってユーラを見た。
「…いつからいらっしゃいました?」
「そうだね。フリッツがキスをした話あたりから?」
「…今日まさかここに来るとは…。」
「馬車に忘れ物してたの届けて帰るつもりだったんだけど?」
「…。聞いちゃったか。」
「あのさ…。ちょっと座って。」
「はい。」
「何でその話を君はフリッツの姉やセルに相談する訳?」
「だって…。」
「そりゃ、言いにくいのは分かるけど、私は君の恋人なんだよ?やましい事がなかったら私に相談するべきだよ。」
「だって…。」
「私だってフリッツがおかしくなるのは困る。彼の事は好きだし、彼を心配した君がまたフリッツに情が移る可能性もある。君は困っている人を放っておけない人だからね。だから、この国に滞在する間、約一年はスクールやカジノの仕事の時は友人のように過ごす事にしよう。」
「そんなのできる?」
「やるしかない。その変わり週末はうちに来てもらうからね?」
「うん。」
「だいたい君はすぐ面倒くさくなると逃げようとするんだから…。」
「だって。フリッツやユーラが私なんかを巡っておかしくなるとかさ、嫌なんだよ。私にそんな価値ないし。」
「とにかく、何かあれば私に相談する事。ちゃんと最善の方法を考えるから。」
「はい。」
「君は…本当に困った人だ。」
「呆れる?」
「まあ…。でももう慣れた。」
「ユーラ…。」
「ん?」
「フリッツが山のように仕事を用意してくれたから、夕食行けるかわからない。」
「じゃあ食べれなかった日はランチに持っていこうか?」
「助かる…。あ、それかランチをユーラの家で食べようかな?」
「じゃあそうしよう。ていうか君の家でもあるんだけどね。」
「そっか…。」
「じゃあ、そろそろ帰る。」
「うん、また明日。」
「ん…。おやすみ。」
ユーラは僕にキスをして部屋を出た。
◇◇◇
次の日の朝、僕は寮の食堂でユリアとヴィッキーと朝食を食べていた。
「へー、あなたがヴィル君の。」
「はい。」
「似てる。お人形さんみたい。」
「ユリアは昔からお人形みたいだったよね。」
「…そんな…。」
「ていうかリネア、あなた朝からよくそんなに食べれるわね?」
「だって昨日食べれなくて…。」
「…ああ、そっか。」
「お早う、リネア、久しぶり!」
「…クラウディア。」
「アタシも一緒にいいかな?」
「…うん。」
「お早うございます。ヴィクトリア様、あと…。」
「スモーランド王国の皇女のユリアだよ。ユリア、こちらはライヒ王国の皇女、クラウディア様。」
「リネア、やめてよ、'様'とかいらないから。」
「リネア…知り合いですの?」
「うん、リスラ共和国で知り合ったんだ。」
「そうなんです。よろしくお願いします。」
「…リネア、私はもう食べ終えたから行くわ。」
「あ、うん。ヴィッキー、ちょっと待って。」
「ええ。」
僕はヴィッキーと食堂を出た。
「…あのさ、フリッツにはあれから会った?」
「ゲオルグが見に行ったわよ。」
「で?」
「…知ってどうするの?」
「…。」
「もうリネアが心配しなくていいの。」
「だけど…。」
「リネア。もうお互い別の道に進んでるの。あなたが優しくしたら彼の気持ちが揺らぐ。そして結局お互いが辛くなるだけよ。割りきりなさい。」
「…。」
「そんな事できないよ。フリッツがフリッツじゃなくなるのを見るなんて…辛すぎる。」
「あなたの知ってるフリッツは一面にしかすぎない。彼だって汚い感情を持っているし、それを人にぶつける事もある。リネア、あなたは彼を買い被りすぎよ。」
「…。」
ヴィッキーが僕の頭を撫でる。
「さ、ご飯食べてきなさい。」
「…はい。」
ヴィッキーの言っている事が正しいのは分かる。だけど僕はそんな簡単には割りきれないんだ…。




