囁き
リスラ共和国滞在3日目、アリーナが友人に会いに出かけた日に僕はニコライ大統領に呼ばれた。
彼に呼ばれるのは苦手だ…。
「さっそくだけどさ、ヴィルフリート、僕に協力してくれない?」
「私が…?」
「そう、君が協力してくれたら僕も君に協力できる。だから手を結ばない?」
「…あの…どういう事でしょう?」
いきなり何を言い出すんだ?また何かの契約だろうか?
「リネアと僕はね、約束したんだ。三年間の間にスモーランドとフレ-デル王国の取引の成果を出すこと、エンゲル王国の店舗、メルア大陸のビジネス、すべて成功させる事を。」
「…それはまた、すごい課題ですね。」
「でも僕はミハイルとリネアならできると思ってる。だから君の協力が必要なんだ。」
「あの…話が読めません。私に何を協力してほしいと?」
「貿易を成功させないようにしてほしい。」
貿易って、リスラ共和国とスモーランドの貿易だよな?リネアとカールが担当している。…何を言ってるんだ?
「…何故?」
「リネアが課題をクリアできなかったら、私はリネアとミハイルの婚約を認めないと言った。それにミハイルは私の跡を継ぐ事になっている。」
「…何故、私が。何のために?」
「僕の娘は二人いるだろう?アリーナとリネア。」
心臓がドキドキしてきた。
「君が僕に協力してくれるなら、娘を入れ替えてあげてもいいと思って。」
「…アリーナではなく、リネアを婚約者に、という事ですか?」
「そう、年齢的には結婚もありだよね?」
ニコライ大統領は僕を見て微笑んだ。
「ヴィルフリート、僕はリネアを君の結婚相手にするよう契約を書き変えてもいいと思ってる。僕にとってはミハイルに私の跡を継がせる事が一番重要だから。」
「アリーナは…?」
「適当にどこかの国の皇太子でもまた探す。」
この人は…。
「君は今もリネアを望んでいる。違う?」
「…私は…。」
「フリッツもミハイルも私とリネアの契約を覆すことはできない。彼女の将来を決める権利は僕にある。違う?」
「…違いません。」
「時間はたくさんあるから考えておいて。時が来たらまた改めて話し合おう。」
「…。」
僕はニコライ大統領の部屋を出た。心臓がドキドキしている。
彼は悪魔のような人だ。
一番欲しいものを取引材料にして、理性や良心を奪おうとする。
ただ、この取引は本当に魅力的だ。
僕が…、オスカルと結婚できる?
ずっと大切な幼なじみで、
一番大好きな君を…?
例え君がそれを望まなくても、
僕は…。
もう一度そのチャンスを掴んでみたいと思った。




