フレ-デル王国への道のり
「へえ…。じゃあユリア様はオスカルに憧れていたんだ。」
「ええ。まあ子どもの初恋ですから可愛い話なんですけど。」
オスカルとミハイル様との馬車の旅はとても楽しかった。
ミハイル様は見た目の美しさも凄かったけど、気さくで穏やかでとても話しやすい印象だった。
「それにしても不思議な感じですね。リネアがミハイル様と恋人なんて…。」
「私だって不思議だよ。ユーラは最初会った時は女装してたんだよ?」
「その私に見とれてついてきちゃった君に言われたくない。」
「…だってめちゃくちゃ綺麗だったんだもん。あ、今もだけど…あの時の方が中性的だったよね。」
「君もね。」
二人は本当に仲が良くて、いつも楽しそうにしている。からかいあっているけどお互いを大切に思っているのが伝わってくる。
「ユーラはさ、今でこそ話しやすいと思われるかもしれないけど私が最初に会った時は誰にでも塩対応で、相当な陰キャだったんだよ。あ、それは今もか。」
ミハイル様がオスカルの頬をつねる。
かなり痛そうだ。
「君は何故ヴィルフリートの妹の前で私の印象を悪くしようとする?」
「正確な情報を伝えようと…。」
「伝える必要はない。私は別にみんなに自分を知って貰いたいなんて思ってないし、私の事を知っているのは君だけでいい。」
「…そう?」
オスカルが少し羨ましいと思ってしまった。こんな素敵な人にこんな甘い言葉をかけて貰えるなんて…。私は、まだ恋もしたことがないのに。
「アリーナとは話したりするの?」
「ええ。たまにですが。アリーナ様は本当に落ち着いていらっしゃって、お兄様にぴったりだと思います。」
「彼女もリネアと違って明るいタイプではないから話しにくくない?」
「…正直それほどたくさんお話をしたことはないんです。私も話があまり得意ではないので…。」
アリーナ様とはもう一年以上も同じ家にいるのにあまり話をした事がない。
オスカルとは、少しの時間でこんなにもたくさん話ができるのに…。
「まあリネアみたいに気を使わなくていい人は貴族の中ではレアだからね。この人は身分とかまったく気にせず関わってくるし、変人だからこちらも気負う必要もないし。」
「ユーラに変人とか言われるの心外なんだけど?」
「ははっ!」
ミハイル様がオスカルの頭を撫でた。
「私も好きな方、見つけられるかしら?」
「ユリア?」
「私もオスカルみたいに素敵な人に出会いたい。」
「…ユリアは可愛いし賢いし、きっと見つかるよ。ただ、ユリアの身分に釣り合わなきゃいけないのがなかなか難しいけどね。」
「…本当に身分なんて厄介ですよね。なければよかったのに。」
「…身分を放棄して生きて行くのは簡単じゃないよ。」
「分かっています。分かっているから…。」
「ユリア、まあ、あまり考えても仕方ない。とりあえず新しい場所に行けるんだし、新しい出会いもある。留学を楽しむべきだよ?留学できるチャンスを与えられたことに感謝しなきゃ。」
「オスカル…。そうよね。」
「そうだよ?フレ-デル王国は私も友人がたくさんいるから紹介できるし。クラブにも入ったら?」
「…ありがとう。」
オスカルはいつの間にか本当にたくさんの経験をしてきたんだわ。私も彼女みたいに自由に生きてみたい。
「そういえばユーラ、住むところは?」
「あ、フレ-デル王国には別荘があるから。最初そこに住んでいたの知らない?」
「知らない。」
「キッチンもあるし、週末はこちらに来てくれるよね?フリッツに外泊は週末限定と釘をさされたけど。」
「うん。仕事のやりとりはいつする?」
「平日は電話で。週末まとめてやるとしようか。」
「そうだね。自炊の方がいいからユーラが羨ましいよ。もうジャガイモばっかりは飽きた。」
「ご飯だけ食べに来る?」
「そうしようかなー。泊まらなきゃいいんだもんね?そしたら夕食を食べて仕事したら帰るってしようか。寮から遠い?」
「いや、わりと近いから送れるよ。じゃあそうしようか。」
「あの…ミハイル様は料理をされるんですか?」
「リネアから教わって。ヴィルフリートもするよね?」
「ええ。ミハイル様が料理とか…意外で。」
「ユーラのご飯おいしいよ。最近は私も負ける。」
「お菓子はまだリネアには勝てないけどね。」
「あ、そうそう。ルッセブッラを作るんだよね。」
「そう。」
…いいなぁ。本当にオスカルが羨ましくなってきた。
格好良くて優しくて頭が良くて、一緒に料理ができて、
自分を本当に大切にしてくれる。
そんな人に私も出会いたい…。




