久しぶりの再会とヤキモチ
「…リネア、今から時間とれる?」
帰り際、ヴィルが僕を呼び止めた。
「今から?」
「うん。リスラ共和国との貿易について少し相談したくて。」
「それなら私も同行しようか?」
ユーラがヴィルとの会話に入ってきた。
「…リネアをお借りできますか?二人だけで話がしたいんです。国の機密事項もありますから。」
「…ヴィルフリート…。君はリネアが私の恋人になったって事は聞いてる?」
「…ミハイル…。公私混同しないでくれますか?僕は仕事の話があると言っているんです。そんなに心配ならリネアの側使いを同行させますよ?」
「…ユーラ。私も貿易について気になっていたから話がしたい。今後の話しもあるし。」
「…じゃああまり遅くなる前に帰宅するように。…アリーナ、久しぶりに出かけようか?」
「ええ。」
アリーナも嬉しそうだ。…兄をとられた気分だな。
「…じゃあリネア。」
ユーラがそう言った瞬間、僕は抱き締められて深いキスをされた。
僕は久しぶりにヴィルの城のキッチンに入った。
「久しぶり」
ヴィルが僕を抱き締めた。
「久しぶりっ!」
僕もヴィルを抱き締めた。
「ヴィル…元気だったか?」
「…とりあえず、久しぶりに何か作らない?レパートリー増えた?」
「あ、増えた!エンゲル王国のスコーンとか焼き菓子とか、リスラ共和国やシアナ共和国の菓子も作れる!」
「いいね、じゃあスコーンにしようか。」
僕が材料と手順を説明した後、作業にとりかかった。
「…懐かしいな。」
「そうだね、オスカルと毎日のようにこうしていたからね。」
「アリーナとは、一緒に何か作ったりは?」
「…たまには。君はミハイルと何か作ったりするの?」
「うん。ユーラはヴィルと同じで凝り性だから…。今では料理のレパートリーは負けるよ。」
「…僕は…正直反対だ。君がフリッツを選ばないのは。フリッツじゃないなら…。」
「…ヴィル?」
「なんであんな性格悪い奴を…。君にはフリッツがあっていたのに。」
「…。ユーラは…特別なんだ。」
「聞きたくないな、そんなの。君の特別は僕だけでよかった。」
「ヴィルは親友だろ?」
「…君は口ばっかりだ。全然連絡もくれないし。」
「ごめん…。でも連絡なくても繋がってる自信あるし。」
「…本当に君はズルい。」
ヴィルは嬉しそうな、少し寂しそうな顔で笑った。
ヴィルがスコーンの生地をまとめ、生地を冷蔵庫にいれて休ませている間に僕たちはヴィルの部屋に移動し、貿易の話を始めた。
状況や問題点を一通り聞いて、それから改善点を話し合った。
「…新しい機械を安く入れれるか、シアナ共和国かリスラ共和国に確認してみる。」
「助かる。こちらで作るとなると人件費もかかりすぎるから。」
「あとは労働者をある程度確保する必要があるね。これも聞いてみようか?」
「それについてはこちらでも検討中だから、少し保留にしてほしい。」
「分かった。」
スコーンを焼き終えると時間は12時をまわっていた。
「ヤバい。」
「…何が?」
「ユーラ…。忘れてた。」
城の警備の人がキッチンのドアをノックする音がするとドアの前に見慣れた人が立っていた。
「…リネア、帰るよ。ヴィルフリート、遅くまで拘束しないで欲しいな。貿易の話をしていたんじゃないの?」
「すみません。貿易の話しは終わりました。あなたが久しぶりの幼なじみとの再会を否定するほど度量の小さい恋人ではないと思っていましたから。」
うわー。煽らないでっ。
ユーラが無表情だけどイラついてるのが分かる…。
「スモーランドの皇太子がこんな深夜に職権乱用して市民を拘束するとは思ってなかったからね。」
…この二人…。
合わないんだよなぁ。似てるからかなぁ?
「…ヴィル、今日は帰るよ。」
「うん。スコーンはお土産にするから待って。」
「ありがとう。今日は久しぶりに話ができてよかったよ。」
「…ではまた。」
ヴィルがそう言って僕の手をとり、手の甲にキスをした。
「おいっ!?」
「…何か?」
ヴィル…分かっててやってるな。めちゃくちゃ笑顔だし。
「お前とはそういうのはしないから。」
「冷たいな。昔からの仲じゃないか。」
「あのなー…。」
僕がヴィルに触れようとした瞬間ユーラに後ろから抱き締められた。…まずい。
「帰るよ。」
「あっ…スコーンが…。」
「明日届けてもらえばいい。…では。」
ユーラは僕を抱き上げるとそのまま無言で馬車に乗り込んだ。
うわ…。めちゃくちゃ怒ってる。
「…ユーラ…あの…。」
「…。」
無視かっ!
「気に入らない。アリーナがいながら君との特別感を出してくるあの男も、隙だらけの君も…。」
「隙だらけって…。私とヴィルの関係はそういうのじゃないし。」
「…君は本当に分かってない。とにかく、今後あんなふうに他の男と親しくしたり夜に二人きりにならないと約束して欲しい。」
…なんだソレ…。面倒くさいな…。
「今面倒くさいって思ったよね?」
「いえ」
「目が泳いでる。…ねぇオスカル」
「は…?」
「私もみたいな。オスカルの君を…。」
「…何それ?」
「ねぇ、私の知らない君が見てみたい。」
「…ユーラ…顔が近い。」
「僕って言ってみて。それから言葉使いもさっきみたいに…。なんなら、それでプレイしても…。」
勘弁してよ…。




