スモーランド城にて
私は久しぶりに父に連絡をした。電話の向こうから彼の怒りや苛立ちが伝わってくる。少し楽しいと思える私はやはり性格が悪いのだろう。
「久しぶりに電話をしてきたと思ったらふざけた真似をしてくれるじゃないか。」
「なんでもあなたの思い通りになると思ったら大間違いですよ。」
「マルクとレナートが楽しみに待っていたのに。」
「あなたが勝手に決めた事でしょう?とにかく私は、リネアのミッションを成功させ、あなたの跡を継がないつもりです。」
「ミハイル、君が僕に言うことを聞かせようなんて100年早いよ。君がそういう態度をとるなら僕にも考えがある。」
「なんですか?」
「…楽しみにしていなよ。僕を怒らせたらどうなるか、君は知っているはずだ。」
「じゃあ楽しみにしていましょう。」
「電話、リネアに代わって。」
「代わりません。…では失礼します。よいクリスマスを。」
◇◇◇
「…お兄様、大丈夫なんですか?」
アリーナがユーラの話を聞いて心配そうにしている。
「さあ?もう関係ないし。」
「ミハイル…彼を怒らすのはまずいのでは?」
「ヴィルフリート、あの男が異常だという話は聞いただろう?」
「…ええ。まあ。かなり。」
「ユーラ…。私もユーラの態度はやばいと思うよ、正直。これまでのニコちゃんの行動を考えれば私とセルを帰国させて婚約させるか、フリッツをもう一度婚約者にするか…その辺りの事はしてくるかもしれない。まあフリッツはそんな簡単にニコちゃんの話には乗らないだろうけどね。懲りただろうし。」
「私もそのあたりだは予想できる。ただ、3年間待つとは言ったわけだし、その間になんとかする。」
「家族間の約束なんか簡単に反古にしてくるかもよ?私にもそういう話を持ちかけてきた事あったし。…3年もの間、何もなく黙っているはずがない。ユーラにしては甘いな。」
「君も父の事を良く分かってきたね。確かに甘いな。ただ、現時点では対策のしようがない。」
「…なんていうか。」
「ヴィル?」
「君たちは色々大変だな。スモーランドの件でリネアが養子にされた事を本当に申し訳なく思う。」
「あの人には振り回されっぱなしだよ。まあ、仕方ないけど。…しかしなあ、ニコちゃん本当は寂しいんじゃないかな。クリスマスなのにみんなに会えなくて。アリーナは帰ってあげたりしないの?」
「…私は…。」
「アリーナ、僕と一緒に帰ってみる?確かに君が帰ってあげたらきっと喜ぶよ?」
「ヴィルフリート…。」
「リネアとミハイルだけに君の父の問題を負わせるのは気がひけるし。」
「…そうよね。」
「アリーナ、ヴィルフリート、あんなのには関わらない方がいいよ?君達はまだそれほど巻きこまれていないから分からないんだ。」
「ユーラ、私は二人に行ってもらった方がありがたいな。ニコちゃんが少し可哀想だ。」
「…私、行きます。確かにお兄様やリネアに任せっきりで私は逃げて来ましたから。」
「…そしたら、アリーナ。できればマルク達をこちらに連れてきてくれない?スモーランドかフレ-デル王国で預かりたいと思うんだ。これ以上小さな子ども達が父の犠牲になって欲しくないからね。」
「やってみます。」
その日の夜、ヴィルがニコちゃんに電話してクリスマス休暇をリスラ共和国で過ごしながらシッターをする旨を伝えてくれた。
ニコちゃんは喜んでいたらしい。
「明後日に飛行機をこちらに用意してくれる事になったよ。」
「…ヴィルフリート、本当に気をつけて。変な取引に巻きこまれたりしないようにね。」
「…がんばります。」




