スモーランドへ
僕とユーラは次の日飛行機に乗ってスモーランドで降りた。
パイロットの人も飛行機もニコちゃんのお抱えの人じゃなく航空会社のものだったから使えた技だ。
「父上が自分の専属を使ってこなくて助かった。年末年始は彼は各地へ挨拶や会議に呼ばれて忙しいのがよかったな。」
「マルクとレナートは家で待ってるのかな?」
「時期を見計らって私たちの元に呼び寄せようと思ってる。これ以上父上に振り回されるのは気の毒だからね。」
「うん。本当だね。」
「私たちも彼が今後どういう行動をとってくるか分からないし、見つかったら戻される可能性もあるから気をつけなくてはいけないけど、イーチェンの誘拐に比べたらマシだと思う。」
「あれは…思い出したくないな。」
「その話をセルゲイから聞いた時、殺意がわいた。」
「…どちらも物騒だ。」
「とりあえず君のご両親に挨拶だ。」
「…うん。」
ユーラと僕は実家に到着した。何も連絡していなかったけど父上もクリスマス休暇を取得していたから自宅にいた。
「リネア…とミハイル様…。」
「ただいま。」
「お…おかえり。」
「おかえりなさいリネア。ミハイル様も…。まずは中に入りなさい。」
「お邪魔します。」
「いらっしゃい。」
客間に僕たちはとりあえず入って、母上と父上が、コーヒーとルッセブッラを用意してくれた。
「んー!やっぱり母上のブッラはおいしい…。」
「この黄色は?」
「サフランだよ。クリスマスによく食べるんだ。」
「おいしい…。レシピを貰える?」
「あ、私作れるから。」
「じゃあ今度教えて。」
「うん。」
「あの…リネア?」
「はい。」
父上がもじもじしている。
「大変申し上げにくいのだが、僕は君がフリードリヒ殿下と婚約したって聞いていたんだけど。」
「そう。で、数日前に解消されちゃった。」
「…でミハイル様は?」
「今彼と付き合ってるの。」
「…。展開が早すぎない?」
「…これには色々あって。」
「リネア…。大丈夫?」
「カールソン公爵、不安になるお気持ちは十分理解できますが、私たちが付き合う事は昨日今日決めた話ではないんです。」
「…あなたにはシアナ共和国に探しに行ってもらったり、記憶をなくした彼女の側にいていただいたりして感謝はしています。ただ…あまりにいきなりすぎて。」
「カールソン公爵、リネアのお母様、私は、今リネアが父と約束をしているプロジェクトをやりとげたら彼女と結婚したいと思っています。」
「結婚…。」
「ええ。私には彼女しかいないと思っています。」
「リネアは…?」
父上が私を見る。
「結婚…?」
「うん。」
「私が、ユーラと?3年後に?」
「だって私と一緒にいたいって言ったよね?だからちゃんと正式に君のご両親に伝えるのが筋だと思ったんだけど…。何、嫌なの?」
「婚約はともかく、結婚…?この私が…?早くない?」
「…。」
ユーラが私をじろっと見た。
「だってそんな話聞いてない。」
「君はこの期に及んでそれ?…じゃあ何の為のミッションな訳?」
「だからニコちゃんにユーラとの仲を認めてもらって…。」
「それで?」
「…そこまでしか考えてなかった。」
「はー…。エンゲル王国に帰ろうかな。」
「え?」
「店やホテルに専念しようなかな。君は私と離れていても平気みたいだし。」
「そんな事ないよ?」
「シャーロット様のプロジェクトもやらなきいけないし。」
「駄目!」
「…。」
僕はユーラに抱きついた。
「駄目!行っちゃ駄目!ユーラがいい!」
「リネアの馬鹿…。」
ユーラが僕にキスをした。僕もユーラの首に腕をまわしてキスを続けた。
「…コホン…。」
あ、今父上と母上の前だって完全に忘れてた。
…めちゃくちゃ恥ずかしい。
「リネア、あなたいつの間にか一応女の子みたいになったのね。」
「なんというか…僕も、複雑な気分だ。君がそっちへいってしまったような、そうじゃないような。」
「父上…、母上…。」
「とりあえず、ゆっくりしていったら?クリスマスなんだし。」
「うん、ありがとう。そうするよ。ユーラ、街に出かける?」
「そうだね。」
スモーランドの旧市街を歩く。以前一緒に行った場所だ。
「クリスマスのスモーランドはやっぱり美しいね。」
「うん。」
「あ、店に入っても?気になる店が。」
「いいよ。」
ユーラと織物や陶磁器の店をいくつかまわった。
彼の好きなものを知れるのは嬉しい。
僕たちは街のカフェに入った。
「…さっきの話。」
「結婚の?」
ユーラが僕の手を握る。
「うん。」
「…いきなりでびっくりした…。」
「私は本気だから。」
「…実感わかなくて…。だって3年後って20歳だよ?」
「リネア、私は早く君と本当の家族になりたい。」
「ユーラ…。」
「考えておいて。」
「…分かった。」
結婚…。今の僕にっては実感のわかない言葉だった…。




