ヴィルと僕
「ヴィル…、僕、フリッツと別れちゃったんだ…。」
オスカルが僕に電話をかけてきて、記憶を取り戻した後の話を僕にしてくれた。
「君は…ミハイルの所に行くの?」
「分からない…。」
「どうして?」
「フリッツに会ったらやっぱり彼がが好きだって思っちゃって、一緒になる為に頑張ってくれているユーラに会わす顔がないんだ…。」
「…二人とも好きなんだ?」
「うん。…こんな話、ヴィルにしか言えないけど。…ねぇ、ヴィルはアリーナといて、今幸せ?」
「幸せ…かなぁ?」
「何それ?」
「不満はない。」
「その言い方…、アリーナに失礼じゃない?」
「だって僕はオスカルと一緒になりたかったんだ。僕が一番好きな人はオスカルのままだし。アリーナはそれでいいって言ってくれて、そういう僕を受け入れてくれている。オスカル以外なら僕はアリーナで不満はない。彼女といると楽だし、頭もいいし、可愛いと思うし。あと相性もいい。」
「…ほぼノロケじゃないか。しかも最後のはなんとなく聞きたくない情報だ。」
「君の方こそ不思議だ。フリッツは分かる。男からみても格好いいし、明るくて性格もいい。一緒にいて楽しいし、正統派の男性だ。リネアに合ってる。だから何故君がフリッツとミハイルで迷うのが僕には理解できない。」
「そう?」
「だって、ミハイルは根暗だし、何考えてるか分からないじゃないか。人を陥れるのも楽しそうにしてたし、人の婚約者を弱味につけこんでどっかへ連れて行くし…。」
「ディスりまくりだ。ちょいちょい恨みも入ってるな。」
オスカルが笑ってる。
「そうなんだよな。変な人なんだよ、ユーラは。」
「だから、君が彼を好きになる理由が分からない。見た目以外。…確かに君を探しにシアナ共和国へ行ったのはすごいと思ったけど。」
「ユーラの見た目は確かにね。」
「好きなタイプだよね。」
「うん。…でも僕がユーラを好きになったのはなんて言うか…。フリッツと逆だったからかな。卑怯な事もするし暗いけど、人間らしいというか、そういう所が面白いと思って。フリッツは僕がなりたかった理想の男性みたいに完璧で、隙がないと思ってたから…。」
「いや、まあまあ隙あるよ?」
「今はそう思う。」
「…。」
「…とにかく、僕はニコちゃんから解放されたい。もうこれ以上僕も振り回されたくないんだ。」
「ニコライ大統領は…なんなの?何がしたい訳?僕、彼が将来義理の父親になるの本当に不安なんだけど。」
「御愁傷様です。」
「やめてよ…。」
「いや、心から、同情する。」
「自分の息子の好きな人に妻になって欲しいとか、ヤバくない?」
「…それさ、本気じゃないんだよ。僕には分かるんだ。僕がユーラやセル、マルクやレナートとうまくやってきたから、彼らを繋ぎ止める為に僕を利用してるだけなんだ。確かに抱きしめられたり頬にキスを…、ヴィル?」
僕は飲んでいたコーヒーを吹き出した。
「…信じられない。本当に?」
「うん。」
「…君は平気なの?」
「…まあ顔はユーラの20年後バージョンて感じだし、それ以上してくる訳じゃないし。あの人はただ寂しいんだよ。僕に男女の付き合いなんか求めていなくて、僕を子犬程度に思ってる訳。僕を飼いたいって言ってたし。」
「…怖すぎる。…真剣にアリーナの事を考え直すべきか悩むんだけど。」
「まあ、フリッツは話した通り色々あって、ニコちゃんを理由に僕との婚約を断念した。」
「そりゃそうだ。…だけどいいの?フリッツが他の女性と婚約しちゃっても?」
「…僕はフリッツが幸せならそれでいい。」
「…オスカル、僕にくらい本当の気持ちを言ってもいいだろ?僕が何年君の親友をやってきたと思ってる?」
「…嫌だよ。フリッツが他の女性と婚約するなんて。僕だけのフリッツだったんだ。だけど仕方ないじゃないか。ニコちゃんは僕を簡単には手離さない。僕はフリッツの荷物になんてなりたくない。」
オスカル…。
「しかも、ややこしい事に僕はユーラも好きなんだ。ユーラと離れるのもいやなんだ。だってユーラはおいしいごはんも作ってくれて、宿題もやってくれて、お金も貸してくれて、僕が異国で迷子になったら駆けつけてくれるんだよ?そんな人他にいる?」
「…ちょっと待って。何、その話?」
「僕とユーラの話。それに引き換えフリッツなんか僕をこき使った挙げ句、給料から授業料と高い寮費を正規料金で天引きしてくるんだよ?おかしくない?」
「いや…オスカル、君の方が色々おかしい。君は、ミハイルとどんな関係だった訳?」
「何でも話せてお互い助けあえる関係。ユーラがいたからスモーランドを救えたし、君と婚約しなくて済んだし僕は感謝してる。」
「色々聞き捨てならない発言が…。そうか、ミハイルがクーデターを阻止してくれたんだ。」
「うん。僕の一番大切なスモーランドと親友のヴィルを救ってくれたのはユーラなんだよ。」
「…知らなかったよ。」
そうだったのか。ミハイルが…。
「オスカル、ニコライ大統領に養子を解消してもらうよう説得してみたら?」
「無理だと思うけど…。やってみるよ。」
「うん。がんばって。」
「あ、他人事じゃないから。ヴィルも仲間だからね。ニコちゃんファミリーの。」
「止めて…。」




