姉上と俺
「そう…。リネアと別れたの。」
帰宅して俺は愚痴を姉上に聞いてもらいたくて居間に呼んだ。姉上はビールを俺に渡して、横に座った。
「とりあえず飲んだら?」
「…俺、あいつをミハイルに渡したくなかった。」
「なんでミハイル?」
「あいつ、ミハイルも好きだったんだ。いや、正解に言うとミハイルを好きになったあいつを俺が婚約者にしたんだ。」
「どういう事?」
俺は今まで俺たちにおこった色んな出来事を姉上に話した。
姉上は途中からだいぶ酔っているようだったが俺に付き合っていつまでも話を聞いてくれた。
「…。俺がミハイルみたいに、命を捨てる覚悟でリネアを選べたらよかったんだ…。」
「あんたには無理よ。」
「…無理だった…。」
「で?あんたその、クラウディア様と婚約する気なの?」
「分からない。まだ今日会ったばかりだし、しっかりした皇女だとは思ったが、今はとてもそんな気になれない。」
「そりゃあそうよね。あんたずっとリネア一筋だったんだもんね。」
「俺…、どうしたら良かったんだ?あいつはずっとあの義理の父に振り回されて生きていかなきゃいけないのに、俺は国を理由に逃げたも同然なんだ。」
「…お父様に警戒されたらどうしようもないわよ。あんたが責任を感じる事はない。リネアは自分の運命は自分で切り開ける子だから。私もリネアとフリッツがうまくいく事を祈っていたから物凄く残念だけど…。でも、リネアがミハイルを好きになっちゃうのも仕方ないわ。」
「…姉上、誰の見方だ?」
「だって、シアナ共和国まで命懸けでリネアを探しに来てくれて、記憶を失ってもそばにいてくれたんでしょ?かたや、本物の恋人は彼女探しもせず、仕事に専念していて、帰国したリネアに会いにいったら記憶もなかったからすぐ帰国しちゃったんでしょ?そりゃ…。」
「そりゃ…何?」
「あんた、自分で分かってて、傷口えぐられたい?ドMね。」
「なっ…?!俺は攻める方が好きだ。」
「あんたの性癖なんて知らないし、聞きたくもないわ。」
「…。」
「ミハイルはシアナ共和国にリネアを探しに行く時、自分に何かあったら、あんたにリネアを頼むって言ったの?」
「ああ。」
「リネアとあんたが婚約したら、絶望して自殺までしかけて、それで今リネアを取り戻すために自分の力で頑張ってるのよね?」
「ああ。」
「ヤバ…。そんな行動されたら私でも惚れるわ。あの女装してたミハイルがいつの間にかそんな素敵な男になっていた訳?愛の力って凄いわ。」
「姉上…。ミハイルは昔から俺の大切な物をとったりしてきたんだぞ?最後は返してもらうつもりだったんだ。一番大切な恋人を。」
「…フリッツ。あんたの気持ちは痛いほど分かる。でもあんたはミハイルには勝てない。だってあんたは皇太子である自分を捨てられないし、ミハイルはそれを捨ててもリネアといることを選択しようとしてるんでしょ?リネアは自由人だから、自分に合わせてくれる方を選ぶのは仕方ないわ。あんたもリネアも他人に合わせて生きられるタイプじゃないもの。」
「姉上は人の事言えるのか?」
「ゲオルグは私に従うわよ。いや、従ったふりをして手のひらで転がしてる?…どちらにしても彼は私に合わせてくれるもの。…私たちに将来があるかは別としてね。」
「はー…。姉上に話したら余計落ち込んだ。」
「まあ、まだ人生は長いんだし、これから素敵な出会いがあるはずよ。」
「俺はリネアが運命の女性だと思ったんだ。何があっても最後は結婚するって。今だってそう思ってる。」
「…あんたがシアナ共和国に行かなかったのがね。」
「う…。」
「しかも会ってすぐ帰ってきちゃうとかね。」
「…姉上、しつこくないか?」
「それで無理やりニコライ大統領と話を合わせてリネアと婚約しようとしちゃうとかね…。」
「姉上…。ずるしたって結果がすべてだろ?」
「あんた、ニコライ大統領みたいな事を言うのね。」
「俺が?あのおかしな人と?」
「ええ。仕事優先な所や仕事を中心に物事を考える所。リネアのことも、仕事ぶりや対人関係を評価していなかったら婚約者に望まなかったでしょ?」
「そりゃ…。」
「しかも最後はリネアがニコライ大統領を父にした事を理由に別れたんでしょ?…リネアもあんたに迷惑をかけたくなくて身を引いたんでしょ?彼女は、スモーランドを救うために仕方なく養女になったり違法取引をやめさせる為にがんばったのに…。」
「姉上…やめてくれ。これ以上聞きたくない。」
「…またゆっくりリネアと話したいわ。キャンプにも行きたかった。私、リネアが可愛くて大好きなの。妹になって欲しかった。」
「姉上…。」
ドSの姉上にとどめをさされ俺は撃沈した。
俺はその日、姉上と朝まで飲み明かした。




