クリスマスマーケット 2
リネアは俺に街が見たいと言って、以前二人で出かけたクリスマスマーケットに来た。
マーケットをのぞいて少し買い物をした後、以前二人で行ったカフェに入って、シュトーレンとコーヒーを注文した。
「このお店も、街の景色もあの頃のままだね。」
「ああ。」
景色は変わらないのに…。
「…フリッツは、どうしたい?」
リネアが俺を見た。
「俺は…。」
「思っている事を言えばいいんだよ。」
言葉が出ない。リネアを選ぶと言えたら。何もかも捨てて、それでも一緒になると言えたらどんなによかったか。
だけど、俺は次期国王になる。それはもう決まっていること。
それを変えることはできない。
「俺は…、正直ニコライ大統領を父にしたお前を選択するのはリスクがあると思った。」
「うん。」
「俺は…、やっぱりフレーデル王国の皇太子だから。」
「…うん。」
「お前…。なんで敢えてこんな場所で俺にこんな事を言わせるんだよ?俺がお前を好きで、お前といたいって、離れたくないって分かっていて。なんで大切な想い出の場所で…。」
リネアが泣いている。
俺も、涙が止まらない。
俺はリネアの手を握った。
「フリッツ、私を、オスカルを、リネアにしてくれてありがとう。私、フリッツに会えて本当に良かったよ。フリッツが私に新しい人生や生き方をくれた。大好きだよ、フリッツ。」
「リネア…。」
そんな、終わりの言葉、聞きたくない。
「フリッツ、私は仕事を頑張っているフリッツが好きで、フリッツが立派な国王になる事を望んでいる。そして、私は自分のやりたい事を優先しちゃうからやっぱり皇太子妃には向いてない。…覚えてる?以前フリッツが言ってたの。職業選択は恋愛に左右されるべきじゃないって…。私は、世界中を旅しながら仕事をしてみたいんだ。」
「リネア…。」
「それが私の答え。」
「…。」
「我が儘でごめん。」
「お前は、ニコライ大統領から俺を離す為にそう言ってるのか?」
「…。フリッツが私を選ぶ為にリスクはとって欲しくない。分かって欲しい。」
「あの人がいなかったら俺たちは会うこともなかったんだが、まさかあの人のせいで別れを選ぶ事になるなんて皮肉だな。本当なら明日からリスラ共和国へ行って観光してたはずなんだぞ?」
「そんな気持ちになる?ニコちゃんと観光だよ?」
「…しばらくあの人には会いたくないな。」
「激しく同意する。」
リネアはそういって苦笑いをした。
「…お前、これからどうするんだ?」
「とりあえず、本当に奥さんにされる前にそれを回避する手段を見つけようと思ってる。」
「そうだな。お前、なんであんな人にまで気に入られるんだよ?」
「さあ…。変な人好かれやすい…いてて。」
俺はリネアの頬をつねった。
「リネア、俺は離れていても、お前を大切に思っているし、何かあったら力になるから、それだけは忘れないでくれ。お前は俺がいなくても楽しく生きていけるだろうが。」
「フリッツは大丈夫?」
「大丈夫な訳ないだろ?もう絶対結婚するつもりだったお前と、俺から別れる選択をしなきゃいけないんだぞ?地獄だ。…だが、俺は仕事が命だから、まあなんとかなる。俺がミハイルならお前と駆け落ちしたんだろうが、俺には無理だ。」
「分かってる。それでいいんだ。私は、そういうフリッツが好きだから。」
「俺も、自由にとびまわっているお前が好きだ。また放し飼いだな。怪我には気を付けろよ、餌に釣られるなよ?」
「気を付けます。」
俺がリネアの頭を撫でるとリネアが笑った。
俺の大好きな笑顔。
「…リネア、キスしてもいいか?」
「うん。して。」
リネアが俺の首に腕を回してキスをした。
「リネア…大好きだ。」
「フリッツ、私も。」
俺たちはずっとつけていたお互いの瞳の色のピアスを交換して、もう一度キスをした。
どちらも'さよなら'は言わなかった。




