決断
フリッツは僕とニコちゃんを別室に呼んだ。
ニコちゃんはご機嫌そうだ。
「あの…。どういうつもりでしょうか?」
「どういうつもりとは?」
「何故、父やライヒ王国の方々の前であのような事を言ったのですか?あなたは、自分の国の信用を疑われるような事を何故?」
「フリードリヒ、僕が何をした?君が知っている本当の事を言っただけじゃないか?」
「リネアとあなたの印象を不安なものにし、私とリネアを離し、自分のものにしようとしていますよね?」
「さぁ?僕の発言をどう受けとるかなんて人それぞれじゃない?婚約破棄を決めたのは僕じゃない。君のお父さんだ。長年の付き合いなのに、信用してもらえなくて残念だよ。」
「あなたは…。」
「フリッツ。」
僕は今にもニコちゃんを殴りそうなフリッツを止めた。
「殴る価値もないからやめておきなよ。フリッツ…この人といたら一生振り回されるよ。しばらくしたら、また私達に婚約するよう言うかもしれない。ゲームや契約をさせて、人を支配する事を楽しんでいるような人だからね。」
「父に対してひどい言い様じゃないか。」
「自分の子どもはみんな自分の道具で、あなたは結局自分の事しか考えてない。みんな愛想をつかして誰もいなくなったら、今度は私をつかってなんとかしようとして…。」
「でも君はなんとかしてくれるよね?」
「…お願いだから、フリッツやフリッツの家族や、フレーデル王国に迷惑はかけないで。ライヒ王国にもおかしな真似はしないで。」
「さすがに僕だって政治や仕事絡みでおかしな真似をするつもりはないよ?」
「…じゃあ何がしたい訳?」
「とりあえず、一緒にリスラ共和国に帰って欲しい。」
「私はニコちゃんの奥さんは死んでも嫌だよ。」
「…それは分からないよ?」
「断る。」
「リネア!何故養子縁組を解消しない?」
「こんなんでも、彼にはスモーランドとヴィルを救ってもらった恩があるから。しかも私からは解消できないんだよ。そういう契約なんだ。」
「だけどこのままじゃ、俺たちは…。」
「フリードリヒ。僕は君を気に入っているから、君を義理の息子にできなくて残念だよ。リネアと君は本当にお似合いだったからね。でも、今日クラウディアというお嬢さんに会って思ったよ。君は彼女とそっくりだって。国が一番の君たち同士なら、きっと分かりあえるよ。僕には分かる。君は賢く、よい皇太子だから、国民の意思や国の利益を優先する。だからクラウディアが今日、君の前に現れた時点で、リスラ共和国の娘でも、スモーランドの宰相の娘でも、どちらにしてもリネアを選ばなかったんじゃないかって思ったんだ。」
「あなたに何が分かる?」
「分かるよ。だって僕は君と同じだから。僕は個人の幸せより国の繁栄を優先してきたから。僕は確かに自分勝手だけど、国を発展させる為に死ぬほど努力してきたし、これからもそうするつもりだ。僕は今後自分の信用する子どもに跡を継いでもらいたいと思っているし、その子どもたちが懐いているリネアに来てもらいたいと思う。勝手かもしれないけど、僕は僕なりに信念がある。僕は他人にどう思われようと、なんと言われようと、結果を出せばそれでいいと思ってる。」
「だからみんながあなたに振り回されても仕方ない、という事にはなりませんよね?私はリネアを婚約者にしました。私だってそれはだけは譲れません。」
「…僕はフリードリヒのそういう所が気に入ってるんだ。リネア、君はどうしたい?」
「聞いてどうするの?私はもう、ニコちゃんに振り回されずに生きたい。それが一番の望み。」
「それは…無理かな。」
「…ニコちゃん。リスラ共和国に行く前に二人にしてもらえる?ちゃんとフリッツと話がしたい。」
「分かった。明日出発するから。」
ニコちゃんが部屋を出ると僕はフリッツを見てこう言った。
「フリッツ…馬車をだしてもらえる?」
「リネア?」
「一緒に行きたい場所があるんだ。」




