チャーリーズの拡大
シャーロット様は毎日のようにチャーリーズへ来て働いていた。
接客や会計、清掃まできちんとこなしていたから正直驚いた。
最初は興味本意で始めたらしいのだがやってみたらかなり楽しかったらしい。
最近は厨房の中にも入ってきてシェフの人にあれこれ質問したり、作り方を習ったりしたいと言い出した。まるでリネアのようだ。
店は順調に売り上げを伸ばし、新しく出店した店はファミリー層以外の客を取り込むことに成功している。朝の無料のパンのサービスも好評で朝からたくさんの客が来るようになった。
店の運営がうまくいっているので、私はいよいよ三店舗目をつくりたいと思いイーチェンに相談した所、今回こちらへ来てくれることになった。
リネアにその話をすると自分も参加したいと言ったがイーチェンに会わせたくなかったので今回はこないよう伝えた。
「久しぶり…かな?」
「そうだな。店は順調らしいな。」
「ああ、業績も伸びてきてフランチャイズにしないかという話も来るようになったんだ。」
「…リネアは?」
「残念だが今回はこれなかった。フレーデル王国の保護者がかなり厳しくてね、融通がきかないんだ。」
「フリードリヒが?」
「…以前に比べリネアを簡単には国外へ出してくれなくなった上、意図的に彼女の好きそうな仕事を与え、彼女の意識があまりこちらに向かないようにしているみたいで。」
今回はリネアの不在をフリッツのせいにしたが、実際にフリッツがリネアに仕事を与えだしたのは本当の話だ。
ビオトープの開発と整備、動物保護基金の設立などリネアがやりたいと言った案件をあれこれ任せ始めたらしい。
フリッツは本当にリネアの事を良く分かっている…。腹が立つほどに。
「…今迄わりと自由にできていただろう?リネアに会えると思ってせっかく来たのに。」
「イーチェン。私はビジネスはビジネスとして割り切って君と付き合っていくつもりだが、私は君が彼女にした事をまだ許した訳ではないからね。」
「…やっぱりミハイルが来させなかったんじゃないか。」
イーチェンが面白くなさそうに言った。
「その代わり電話では参加させるから。セルゲイ、リネアにつないで。」
「もう、つなぎました。」
「みんなー、元気?リネアだよ。」
「…リネア、いきなり気の抜ける挨拶だな。」
本当に気が抜ける。緊張感がまるでない。
「イーチェン、久しぶり。元気にしてた?シアナ共和国のみんなや社長は元気?」
「元気だ。みんなお前に会いたがってる。」
「…そう言えば気になる事が…。みんな、仕事の話の前にいい?時間ある?」
「ある」
「どうぞ」
「あのさ、私を誘拐した犯人て捕まったの?」
「…捕まった。リネア、本当に怖い思いをさせてすまなかったな。今回会ってちゃんと謝りたかったんだ。」
「そう、よかった。何が目的だったんだろうね。」
「…詳細は改めて会った時に話す。」
「うん。」
私はイーチェンに連絡した時にすでにメイユイが犯人であったこと、彼女と実行犯は捕らえらすでに収容所にいる事、彼女は保釈金を払ってもうすぐ出てくる事を聞いていた。
イーチェンは、彼女に今後一切のリー家の出入りと婚約者と名乗ることを禁止したようだ。
私たちは誘拐事件の話を早々に切り上げ新しい店舗の話を始めた。
「あのさ、提案があって。」
「何?」
「新しい店舗、フレーデル王国に作れないかな?こっちにはチャーリーズみたいな店もないし、うまくいくと思って。」
「…リネア、提案自体は面白いが現状難しいと思う。」
イーチェンがそう言った。
「そうだね、イーチェンもシアナ共和国に戻ってしまったし、シェフや店の管理、材料の仕入れ、色々な事を海外で行うのは簡単じゃない。現状リー家が色々調達してくれているからできるわけで。」
私もリネアに会いたいしフレーデル王国で出店できたら嬉しいが、実際には難しいと思う。
「セルはどう?」
「うん、私も前回イーチェンと候補にあげていた店あたりで始めるのがいいと思う。」
「わかった。」
私たちは新しい店舗の計画について話した後、
チャーリーズをフランチャイズにする事、株を上場させる事、メルア大陸に展開させていく事など、今後の展開について議論した。
会議には途中からデイヴィッドさんも電話で加わり、来年か再来年に本格的にメルア大陸へ出店を始めようと言うことになった。
早くリネアと父の契約を達成させて、リネアと一緒になりたい。
心からそう思うが、あの契約は絶対にイーチェンに知られないようにしなければ…。ただでさえ、フリッツに邪魔をされているのだから…。




