フリッツの言い分
電話の後、俺がリネアを見ると彼女は気まずそうな顔で俺を見た。
「…いつから連絡をとっていた?」
「一週間くらい前から。」
「なんで俺に黙っていた?」
「だって言って何になるの?」
「通信機器の一切を取り上げキリム共和国のシンプルな暮らしを推奨してみるとか?」
「フリッツ…、何でそんな事…。」
「後ろめたいから俺の前で電話にでようとしなかったんだよな?」
「…フリッツのさ、」
「何だ?」
「フリッツの描いている将来の絵の中に私はちゃんといる?」
「…いきなり何なんだ?」
「前にも言ったけどフリッツは、全部自分で決めて自分でやるよね?私は、フリッツの描く将来で何をしてる?」
「…クイズ?」
「クイズ。」
「…そうだなぁ。お前は、俺の隣にいるように言っても全然言うことを聞かないで勝手にあちこち行ってそうだけど、新しい街の都市計画とか、教育施設の整備とか、環境に配慮した次世代型の乗り物の開発とか、お前とならやれそうな事をやってみたいかな。それに、こどもができたらあちこち旅行につれてってやりたいし、色々な経験をさせてやりたい。あとは…、少なくとも一週間に一回は休みをあわせて出かけるか、のんびりするのも悪くないな…。」
リネアが俺を見て涙目になっている。
「なんなんだ?気に入らなかったのか?」
「…私は、フリッツには必要ないと思ってた。」
「どっからそんな考えが…。」
「だってフリッツはいつだって正しくて完璧なんだもん。私のことは馬鹿でダメ犬だって思ってるし、全然私たち合ってないって。こんな立派な皇太子、私には合わないって…。」
「あのさ、お前こそ普通の令嬢に俺の相手ができると思うか?趣味が仕事であまり構ってやれなくて、相手にプロジェクトのアイディアを求めて、休みも視察が旅行だったりするような奴と結婚したい身分の高い令嬢がいると思うか?」
「…少な目かな。」
「俺は見た目はいいし、身分も高いから結婚したいと言う女はたくさんいるだろう。ただ、実際に結婚してみろ。俺がその相手に企画書やプレゼンを求めた時点で離婚だ。そもそも俺がお前をダメ犬呼ばわりしてるのは本気で言っている訳じゃないし…。おいリネア、泣くな。」
リネアが思い切り泣き出してしまった。
「…俺だって本当はシアナ共和国に行ってお前を探したかったんだ。それに、ミハイルがお前を探しに行ってしまって、負けたと思ってめちゃくちゃへこんだんだ。寝れなくなったし、仕事も手につかなくなった…。だから俺はお前が思っているような完璧な人間じゃないし、それを受けいるてくれる方が嬉しい。素でいられる唯一の相手の前では完璧じゃなくてもいいだろう?」
俺はリネアの頭を撫でながら話を続けた。
「…もっと早くこういう話をすればよかったな。お前が勘違いして思い込む前に。…まだ修復できるチャンスはあるか?」
「…でも私はフリッツを勝手に誤解して裏切った。それに今はユーラが大切だから…。」
「リネア…俺は待つから。どうせ他に好きになれる相手もいないし。」
「いっそ幻滅して他の女性の所へ行ってくれたら気が楽だった。私はフリッツが嫌いで別れようと思った訳じゃないし。」
「自分勝手だな。じゃあ俺が他の女としてくれたらよかったと、そう言いたい訳?」
「そんな訳ないよ!」
「この際言わせてもらうが、お前が俺の立場でさ、勝手に俺があちこち行った挙げ句、浮気して、それで別れを切り出してきて、お前が別れを拒否したら、内緒でその相手と連絡をとっていて、そんなの許せると思うか?」
「無理です。」
「嫌なら自分も浮気すればよかったのに、とか言われて、そうだよな、とか、思うか?」
「最低です。」
「だろ?!この俺にそんなふざけた事しておいて、将来クイズを出してくるとか意味不明すぎないか?」
「ですね。」
「お前が俺ならどうする?」
「…よく考える。やめるかもしれない。」
俺はリネアの頬をつねった。
「いたたた…。」
「そう簡単にできたら楽なんだがな。」
「フリッツ…。」
「何だ?」
「…近いうち休みとれる?」
「ああ。」
「…たまには出かけようよ。」
「そうだな。今ちょうど新しいビオトープを作り始めたんだが、興味あるか?」
「あるよ。」
「じゃ、行くか。」
「うん。」
「あのさ…。俺が何をしているの興味を持ってくれたら俺は嬉しいし、お前がやってみたい事があるなら、参加して欲しい。お前とカジノの仕事してるのも本当に楽しいし、ワクワクする。だから、お前がいやじゃなかったら、これから色々やってみないか?」
「フリッツ…。」
「さらに忙しくなるけど。」
リネアがようやく笑った。
「ありがとう。」




