フリッツとの再会 2
フレーデル王国へ到着した。
セルは1日遅れると連絡があった。
久しぶりのフレーデル王国。秋の景色が美しい。
ここには僕の好きな人や好きなものがたくさんあって、フリッツと別れるという事は、その好きだったものから離れるという事だ。そう思うと悲しくなってきた。
フリッツのお城に行くとフリッツが僕たちを出迎えてくれた。スモーランドに来てくれた時はよく見ていなかったけどいつのまにか大人の男性になっている。相変わらず格好いいままだ。
「リネア…。」
「フリッツ…。」
フリッツが僕を抱き締めた。
フリッツの匂い…。泣きそうになる。
「仕事の話が終わったら少し…二人で話せる?」
「…ああ。」
フレーデル王国のカジノ建設に向けて、フリッツは状況を一通り説明し、ニコちゃんが進め方をフリッツと協議していた。僕は現地で建設の管理を行うようニコちゃんに言われた。
「…私、エンゲル王国に行くんですよね?」
「そのつもりだったんだけど、状況が変わりそうだ。まさかこんなに早くフリードリヒが計画を早く進めているとは想定していなかったからね。君は建設が終わるまではこちらにいることになるかもしれない。エンゲル王国には飛行機で行き来したらいい。」
…何を言っているんだ?
「フリードリヒ、彼女に再度部屋とスクールの手配をしてもらえる?」
「分かりました。」
…そういうこと。
ニコちゃんは、最初から僕とユーラを再会させない為に彼を出張に行かせ、そして僕が到着してすぐフレーデル王国へ来たんだ。
それほど僕にフリッツを選択させて、フリッツが皇女を選ばないようにしたいのか。
フリッツが気の毒だ。ニコちゃんに利用されて、僕とフレーデル王国にいれることを楽しみにしているなんて。
カジノの話が終わると僕はフリッツの部屋へ通された。
フリッツの部屋、変わらないな。
「…久しぶりに来た気がする。」
「実際久しぶりだ。何か飲むか?」
「うん、ありがとう。」
フリッツはコーヒーとアップルパイを出してくれた。
僕はそれに手をつけず、話をする事にした。
「フリッツ…。」
「記憶は戻ったのか?」
「うん、ごめんね、今まで色々心配させて。」
「まあお前といるのを選択したらこういう事が起こるのは想定内だからな。ダメ犬だから穴にはまるかもしれないって言っただろ?」
「…うん。」
「別の雄犬の所にふらっと行ってしまうのもな。」
フリッツが僕を睨んだ。
…お見通しか。
「フリッツ…あの…。」
「リネア。隣国のライヒ王国の話が来ているのは知っているか?」
「うん。」
「俺に皇女と婚約するよう周辺諸国からは物凄いプレッシャーをかけられている。」
「…うん。」
「国にとってライヒ王国は重要な国だ。元々俺にこの話が最初に来たから俺に優先的に選択権がある。お前は俺にどうして欲しい?」
「フリッツは決めてるよね?私の意見なんか関係ないよね?いつだってフリッツは私とは関係なく自分の事は自分で決めるし、私はフリッツの役には立たないよね。」
「そうだな。政治的にはお前がいてもいなくても関係ないな。俺はお前にそんなものを求めていないし。」
「私はフリッツとは対等の関係じゃないよね?」
「俺はそう思ってきたが?別にお前は今まで好き勝手やっていたし、これからもそうするって言っていたじゃないか。別に政治参加なんか望んでなかっただろ?」
「そうだけど…。」
フリッツはニコちゃんに似てる。感情論だけでは絶対に動かない。ニコちゃんがフリッツを気に入ってる訳だ。
「リスラ共和国の娘を選ぶか、ライヒ王国の娘を選ぶか、現状どちらが国にとって得か考えたら答えは簡単にでたんだよ。お前がスモーランドの公爵令嬢のままだったら話しは違ったんだがな。」
「…フリッツ…?」
フリッツが僕を見た。僕の知らない冷たい目。
「俺は時期フレーデル王国の国王だ。だから俺は国にとって最善の選択をする。…リネア、俺はお前と婚約する。」
「…フリッツ…。」
「浮気の一度や二度は許してやる。ただし、今後は許さない。」
フリッツがそう言って僕にキスをした。
「ゲオルグ、ニコライ大統領を客間へ。」
「はい。」
部屋の外に控えていたゲオルグさんがニコちゃんを呼びに行く。
展開が早すぎてついていけない。
何がおこってる?
フリッツに手を引かれて僕は客間へ行った。
「ニコライ大統領、リネアとの婚約を許可していただけませんか?フレーデル王国とリスラ共和国が共に繁栄していくのにこの婚約は必要不可欠だと思っています。フレーデル王国は西側諸国の主要国、私達と強固な関係を作るのはリスラ共和国にとって悪い話ではないと思いますが。」
「リネア。」
「はい。」
「分かる?僕との交渉はこうやってするんだ。」
「…はい。」
フリッツはニコちゃんの欲しい回答をきちんと出せたってことか。
「フリードリヒ。リネアは僕のお気に入りで、僕の妻にしてもいいくらいだと思ってる。」
「…。」
フリッツの顔が一瞬ひきつる。
「でも僕は君を気に入っているし、君は絶対にリネアにあっていると思う。君が婚約者に相応しい。」
「ありがとうございます。」
「そんなっ…!私の意思は?」
「リネアは僕の養女だ。貴族の社会では家の決定がすべてだ。だいたい知らない男に嫁ぐわけでもなく君を一番理解している将来有望な君の恋人に嫁ぐんだ。何の問題がある?君が誘拐されなければどうせこうなっていたんだ。」
「…。」
そうかもしれない。イーチェンに誘拐されなければフリッツの所に行って、引き留められてこうなっていたかもしれない。
だけど…。
「フリードリヒにはここへ来る前に予め、今回君が別れ話を切り出すだろうと伝えておいたからね。後は彼がどうしたいか好きにしてって言ったんだ。彼は僕の期待どおりの回答をくれたよ。」
「フリッツ…。」
フリッツが僕を見る。
「悪いな、リネア。俺だってこんなやり方でお前と婚約したかった訳じゃない。だが、俺はお前を手放す気はないし、お前と結婚する事は国としても望ましい。」
「こんなふうにフリッツと婚約する事になるなんて、複雑な気分だよ。」
「俺はお前を大切にする。」
「知ってる。」
「ニコライ大統領、契約のサインと婚約の段取りを…。」
「うん、さっそく手続きを、といいたい所だけど、実はここへくる前に僕は彼女と約束をしてしまってね。彼女がミッションをクリアしたらミハイルと一緒になってもいいと言ってしまった。だから少しだけ猶予をくれない?彼女がミッションをクリア出来なかった時点で彼女は君にあげるから。」
「わかりました。期限は?」
「そうだね、まあ3年は必要かな?そしたらリネアはすぐ20歳だ。婚約じゃなくて結婚したらいい。」
「分かりました。」
「ただ、表向き、彼女は君の婚約者という事にするよ?その方がお互い都合がいいからね。」
「あなたにとって都合のよい話ですね。私は口約束だけは信用しません。きちんと今の話を書面にしてください。それから、リネアは私の婚約者として扱います。周辺諸国にもそれを理由にライヒ王国の件を断ります。」
「いいよ。ミハイルにはライヒ王国の皇女との話を進めたいと思っているから。」
「うまくいくことを祈ってます。それから、契約内容に、不定行為をした際のペナルティーをつけさせていただきます。」
「フリッツ?!」
「リネア、諦めろ。俺に不定行為があった場合はこの契約は失効させる。逆にお前にあった場合、婚約は仮ではなく即正式に結び、3年の猶予もなしにする。分かったな?」
…信用がなくなったのは僕のせいだからな。フリッツがそう言いたくなるのも仕方ない。
「…はい。」
僕たちは、仮契約のサインを行った。
なんで、こんなふうになっちゃったんだ…。
「じゃあ、リネアはこのままこちらに置いていくから、荷物だけ改めて後日送ろう。彼女をよろしく頼むよ。」
「分かりました。」
「リネア」
ニコちゃんが僕の頭を撫でた。
「…はい。」
「とりあえず、足掻いてみなよ。」
「言われなくとも。」
「みんなが君にさじを投げたら僕が責任をとって妻にするから。」
「そうならないよう努力するよ。すべて私がまいた種だからね。」
「君のそういうところがやっぱり好きだな。」
ニコちゃんが僕の頬にキスをした。
「ニコライ大統領…。」
「何?」
「貴方にも渡しませんよ、リネアは俺のものです。」
「君が一番手強い相手だよね。」
「光栄です。」




