それぞれの思惑
俺はスモーランドへ来た翌日、リネアを誘って散歩に出掛けた。
リネアが俺たちがいつ恋人になったかを質問してきた。
「リネア…お前は俺とこの国で会って、それからフレーデル王国に留学しに来て、付き合う事になったんだ。」
「そうなんだ。僕留学してたの…。」
「あぁ、お前がもし望むならまた一緒にフレーデル王国へ行って留学をする事も可能だが、どうする?」
「…行ってみたいとは思うんだけど…。」
「お前の友人もたくさんいるし、良かったら行ってみないか?お前が記憶を失くしても、ずっと俺を思い出さなくても、俺はまた一からやり直したいと思ってる。」
「…フリッツ…僕は男だよ?」
「…そうだな。最初に会った時もそんな感じだったから。」
俺はリネアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「…あ…。」
「ん?」
「今のさ、なんかひっかかった。」
「頭を撫でた事か?」
「うん、なんか…。前にもそうされた気がする。」
俺はもう一度、リネアの頭を撫でた。
「フリッツ…僕はフレーデル王国に行ってみたいと思う。だけどずっと両親とは離れていて心配させてしまったし、まだ帰国してまもないから少し時間が欲しい。誘ってくれてありがとう。」
「…ああ、待ってるから。」
リネア…。少しみないうちに綺麗になった。本当は抱き締めてこのまま二人でずっといたいのに、今はそれができない。
でも、またフレーデル王国へ来るチャンスを貰えたら、俺達はきっと恋人になれる気がする。
「あ、ユーラ!」
ユーラにリネアが飛び付いた。…すっかり懐いているようだ。恋人の雰囲気ではないが…。
「おはよう、早くから散歩?」
「うん、二人で少し遠くまで歩いてきたんだ。」
「そう。」
ミハイルはリネアの頬を触った。
「フリッツがフレーデル王国へ行かないかって。」
ミハイルが俺を睨んだ。
「…それで?」
「行ってみたいと思うんだけど、まだ帰国して間もないから少し休んでからにしようと思って。」
「…行くの?」
「うん、行ってみたい。」
「…君のこちらの両親やリスラ共和国の父上にも確認しないとね。君の一存だけでは決めれないから。」
「確かに。」
「…ミハイル、また遠くに連れていくなよ?」
「フリッツ、身内の話だよ。君には関係ない。」
「じゃあ、お前も来たら?また勝負のやり直しができるじゃないか。」
「ユーラ、行こうよ!」
「…とりあえず、まずはリネアの体調と気持ちが落ち着いてからにしよう。」
「それもそうだな。あ、お前、イーチェンには連絡したか?」
「したよ。」
「なんだって?」
「…イーチェンは私に謝っていた。もう一度リネアをシアナ共和国に戻して欲しいと言ってきたが断ったよ。危険はもうたくさんだ。」
「そりゃそうだ。で、イーチェンはどうするんだ?」
「さぁ、とりあえずしばらくはイーチェンには関わりたくない。」
「…だな。」
リネアの誕生日パーティーを一緒に祝った後、俺はフレーデル王国へ戻った。
また一緒にスクールへ行けたらどんなに幸せだろう。
ミハイルとニコライ大統領次第かもしれないが。
◇◇◇
フリッツが帰国した後、僕はリネアと久しぶりにキッチンで料理をした。リネアの好きなカニエルブッラを。
「ヴィル…お前、いつの間にか婚約者ができていたんだな。」
「そうだよ。」
「しかも相手がユーラの妹なんだろ?びっくりだよ。ずっと一緒にいたのに、いつの間にか色んな事が起こっていたんだな。」
「そういうお話が東の国にあったよね。玉手箱をあけたら未来へ行ってしまったって…。」
「ヴィルも僕の知っているヴィルじゃなくてお兄さんみたいだし。」
「…色いろあったんだよ。オスカル、君の記憶が戻らなくても、みんな君が好きで大切に思っているんだ。」
「うん…。それは分かったよ。ユーラもフリッツも僕を大事に思っていてくれるって。」
君がこんなふうになってしまうなんて。僕の大好きだったオスカルのままの人が目の前にいる。
アリーナには申し訳ないけど僕はドキドキしてしまった。やっぱり僕はオスカルが好きなんだ…。
「ねえ、オスカル。」
「何?」
「もう、このままここに残ったら?外交官を目指していただろう?君は色んな国の言葉も話せるし、スモーランドで仕事をしない?今の僕ならきっと君を外交官にする事ができると思うんだ。」
「…そんな事、できるのか?」
「うん、君が望むならね。」
オスカル…君との将来をもう一度望むことは可能なんだろうか?記憶を失くした今、僕が一番有利じゃないか?
もし一緒になれなくても、側に置いておきたい。オスカルを誰にも渡したくない…。
「…迷うよ。」
「とりあえず、まずは実家でゆっくり考えてみたら?急ぐことはないからね。」
そう言って僕はブッラをオスカルの口に入れた。




