ユーラとイーチェン
「本当に悪かったと何度も謝っているだろう?しつこくないか?お前…。」
「イーチェン、謝ってすむ話なら私は君を許す事ができただろう。今回、そもそも誘拐した事自体、私は今迄にないほど怒っているし君に失望している。そこへきて、再度誘拐されたと聞いたらもはや言葉がでない。」
「そのわりにここへ来てからずっと説教をしているじゃないか。いい加減聞き飽きた。」
「じゃあ早々に解決して貰おう。リスラ共和国大統領の娘で、私の妹が行方不明なんだ。国際問題だろう?」
「そんな権力をちらつかせなくともとっくに必死で探しているにきまってる!!俺だって焦ってるんだ!」
「とにかく、どこを探したかまず報告して。」
私は今回我が国の秘密警察や暗殺者等をリネア捜索に同行させた。絶対に死なずに生きて帰る為に。
イーチェンはまず、リネアが消息を絶ったと思われる帰宅時間と、彼女がいないことを気づいた時間、それから国の全地域で探しだした時間、場所、詳細を私に説明した。
シアナ共和国は広い、警察がいくら動いても隅々まで探すのは難しいだろう。
しかもどこかに隠されていたら、最悪殺されていたら見つけるのは不可能に近い。
それでも…。絶対に見つけてみせる。
「ミハイル、お前仕事はどうしたんだ?」
「父に返した。元々私の仕事じゃないからね。」
「跡を継ぐんだろう?」
「さあ…。それより今はリネアを見つける事を優先する。」
「…意外と自由というか、恋愛優先なんだな。」
「リネアだけね。私はリネアにしか興味がないから。」
「…そ、そうか。」
「一つ引っ掛かるのが、彼女はそんなに簡単に誘拐できる状況だったのか?」
「まさか。彼女が会社からでて会社の前のバス停までは2、3分。それからバスを降りて15分だが、警備もついていたし、うちの付近なら周囲に警備もいる。簡単に誘拐できるような状況じゃない。」
「じゃあたまたま誘拐されたんじゃない可能性が高いんだね?きちんと彼女の行動を調べ、誘拐に最適な場所を選択している。しかも身代金の要求もないなら金目的でもない。じゃあ、彼女がいなくなって得をするのは誰なんだ?」
「彼女は会社でも同僚に可愛がられていたし、いなくなって得をするような奴はいないはずだ。」
「イーチェン、本当に君が隠しているんじゃないよね?私から見たら君が一番怪しい。リネアをスモーランドに帰したくなくてこのような大がかりな騒動を起こしていたら承知しないよ?国際裁判にかけてやる。」
「…お前なあ、確かに俺はリネアを無理やり連れてきたが国中の警察を使わせるような真似はしない。」
私とイーチェンが客間で話をしていると部屋に一人の女性が訪ねてきた。
「イーチェン様、少しよろしいですか?あ…来客でしたか。」
「なんだ?俺は今忙しいんだ。」
「すみません、父が仕事の件で少しお話がしたいと…あの、そちらの方は?」
「お前には関係ない。用件は分かった、下がれ。」
「…失礼します。」
「…それが君の本来の姿?」
「さあな、俺もよくわからなくなってきた。ミハイル、俺も出来る限りの協力はするし今後も捜索は続ける。とにかく一刻も早くくリネアを探しだしたい。」
「…君の協力は不可欠だからね。とにかく今は協力して彼女を見つける事だけに集中しよう。イーチェン、君の女性関係は?」
「は?いきなり何を言い出すんだ?」
「君に想いを寄せている人や過去に付き合っていた人で君を恨んでいる人とか。」
「お前には関係ないだろう?」
「関係ないか分からないから聞いているんだ!私がただ君の女性関係に関心がある訳がないだろう!」
「…まともに付き合っていたのはさっき部屋へ来た奴くらいだ。」
「さっき部屋へきた女性?」
「あぁ、メイユイは俺の幼なじみでエンゲル王国へ行く前に付き合っていた。」
「イーチェン、まずは彼女を調べるように。」
「メイユイを?…あれが何かをできるとは思えないが。あとは…ひどい扱いをした女の数が多すぎて思い出せない。」
「…聞きたくなかった。」
「俺だって言いたくなかったし!お前だって絶対そのタイプだろう?そんな顔して!」
「…今私の話は関係ない。とりあえず、疑う要素が少しでもある者がいたら調べて欲しい。」
「…分かった。」
イーチェンが何か言いたそうな顔で私を見た。
リネア…とにかく君が無事でいる事を祈るしかない。
早く見つけて、連れて帰りたい。もう絶対にこの国には残らせない。




