失踪
「リネアが帰って来ていない?」
私はアリーナと電話で話をした。父上によるとリネアはスモーランドへの里帰りを許されたらしいが、何故かクリスマス当日にも帰ってきていないという。
私もリネアが来ているならスモーランドへ行こうと思っていたのにこれはどういう事だろう?
またイーチェンに何かされたのだろうか?
父上がイーチェンの父親に連絡すると信じられない回答が帰ってきた。リネアが一昨日誘拐され今国を挙げて捜索中だという。
また嘘をついているのではないかと疑ったが、本当に焦っていたようで嘘ではないと感じたらしい。
「今回は本当にヤバいな。リネアの両親にはとりあえず病気で行けなくなったと伝えよう。僕も何ができるか考えよう。」
「人の娘を誘拐した挙げ句、さらに誘拐されるとは…。あまりに無責任かつ愚かだ。」
「ミハイル、怒っていても仕方ない。フリッツには知らせるかい?」
「…知らせます。協力は多いに越したことはない。まずは彼女の命が最優先だ。」
私はフリッツに電話をした。気が重い。
「フリッツ、久しぶり。父の件ではありがとう。」
「ああ、ニコライ大統領から連絡があった。リネアもまたこちらにこれることになったと聞いたし、少し安心した。あのイーチェンて奴はやっぱりとんでもない奴だったな。」
「…実は、リネアが行方不明になったらしいんだ。」
「は?」
「一昨日から行方不明で、一人の時に狙われ誘拐された可能性が高い。ただ、身代金目的でもなく、国中で捜索しているらしいんだが全く見当がつかないらしい。私も今知ったんだ。」
「…。ヤバいな。」
「すごくヤバい。私は…行ってみようと思っている。」
「シアナ共和国へか?」
「ああ。もし、私に何かあって、それでリネアが生きていたとしたら…。その時は君にリネアを任せる。」
「じゃあ俺も行く!」
「いや、二人で無駄死にしてもいけないし、君はシアナ語も話せないだろう?うちは父も帰ってきたし、最悪、大統領はセルゲイか別の人がやればいい。でもリネアの変わりはいないんだ。私は彼女を失いたくない。」
「それは俺も同じだ。」
「君のポジションを変われる人はいないじゃないか。とりあえず彼女を探しだし連れて帰る。勝負はそれからにしよう。」
「…なんて言っていいか分からない。お前がそんなこと言うような奴だったとは…。」
「君は私の父親を救う協力をしてくれた。今度は私が動く番だ。」
「…俺もできる限りの事はするから。それから、絶対に連れて帰ってきてくれ。」
「そのつもりだよ。」
電話を切ってから私は父上の所へ向かった。
病み上がりにも関わらず山ほど仕事を抱えているから私も手伝うつもりでいたのだが…。
「父上、シアナ共和国へ行こうと思います。」
「…危険だよ。」
「…でも今もっと危険な場所に彼女がいるかもしれないんです。」
「…うん。私が彼女を養子にしなかったらこんなことにはならなかったからね。本来は私が責任をとって探しに行くべきなんだが…代わりに君が行ってくれるならありがたい。ただ、君にとっても非常に危険が伴うからきちんと護衛はつけていくように。それからGPSも。」
「わかりました。」
「こんなことなら彼女からGPSを外させるんじゃなかったよ。護衛も最小限にしろってきかないから一人にさせたらこんなことに…。」
「まずはイーチェンの所へ行きます。彼に連絡をとってください。」
「わかった。セルには連絡した?」
「これからです。」
「…シアナ警察がみつけられないところを君がみつけるというのは不可能に近いかもしれないが、行かないと気がすまなさそうだからね。」
「ええ、私に何かあったら申し訳ありませんが父上の跡は誰かにおまかせします。」
「うん、僕もしばらく死ぬつもりはないから…。気を付けて行ってくるんだよ。」
「わかりました。」




