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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
エンゲル王国編
226/350

誘拐 3

「それで?」


肘をついて足を組み、僕を見下したようにイーチェンが楽しそうに笑った。不快だ…。

ミオンとリンが僕たちに飲み物や食事を運んできた。飛行機にはパイロットの他は僕たち四人しか乗っていないようだ。


「イーチェンは私をどうしたい訳?」

「…そうだな、婚約者にしてやろうと思ってる。俺が飽きるまで。」


「あ、別に婚約者にしてくれなくていいんで。」

と言った瞬間また頬を叩かれた。


「お前は馬鹿か?」

その馬鹿を婚約者にする方がもっと馬鹿だろ?と言ってやりたかったがまた叩かれるのは嫌だから黙る事にした。


「…それで?私は婚約者になって何をするの?何か仕事をさせてもらえるわけ?」

「もちろん。お前は語学が得意だし見目も悪くないから海外の来客を婚約者としてもてなしたり、通訳や翻訳をしてもらおうと思う。それから、前言っていた新しいビジネスも一緒にやれたらと思ってる。」


「給料は?」

「もちろん払う。」


「…なんだかなぁ。こんな形じゃなかったらもっとワクワクしたのに…。」

「…嘘をついたお前が悪い。」


「…あのさ、とりあえずニコちゃん達が心配してるはずから、連絡してくれない?私を返す気がないならそれでいいから、無事だと伝えてよ。」

「そうだな。連絡しておく。お前は助けが来るのを期待するのは諦めろ。俺は居場所は教えないし、探させない。お前が逃げようとしたり助けを求めたらお前の両親を殺す。分かったか?」


「分かったよ。イーチェンが私に飽きたら返却してくれる?」

「こちらの情報を知りすぎていたら返すのは無理だろうな。」


こっちに来る前にフリッツに会いたかったなぁ。

フリッツがこの事を知ったらなんて言うだろう?馬鹿だっていうかな。心配するだろうな。ニコちゃんが二人で会うなって忠告したのに…。


「お前はこの状況で泣いたりわめいたりしないんだな。」

「そんな事をしたってどうにもならないしね。イーチェン、私にシアナ語の教師をつけてくれる?早く覚えたい。」


「分かった。ついたらすぐ語学の教師をつけよう。他には?」

「シアナ料理に興味があるから自由に厨房に出入りさせて欲しいのと、あとは自分のキッチンがあったら嬉しいな。」

「…お前は本当に食べ物への執着が強いな。」


「あと…。あのさ、寝室は…一緒なの?」

「…何だその質問?」


イーチェンの顔が赤くなる。

「だってさ、婚約者になるんだよね?で、キス以上もするの?私の部屋はもらえる訳?」

「…そう言う事、聞くか普通?」

「いや、だってさ…。気になるし。」


「…それは、お前次第だろ?」

あ、そこは無理矢理じゃないらしい。 

ちょっと安心した。


「じゃあ、とりあえず自分の部屋が欲しい。…あとさ、叩くのはやめてよ。話せばちゃんと分かるし。」

「…お前が気を付ければ済む話だ。俺をイラつかせるな。」


「…じゃあ、気をつけるよ。」

「…。」


「で、イーチェンは?私に何を望む訳?私は従順な臣下になる気はないからね。あくまでも今までの関係を変える気はないから。」

「そうだなぁ、その生意気な感じも俺はある程度気に入っているからこのまま目をつぶるとして、婚約者として人前に出る時はそれらしい振る舞いをして貰おうか。」

「婚約者らしく、ね。イーチェンの地位や権力を欲しがる女性はいくらでもいるだろうに、わざわざ私を連れてくるなんて物好きだね。」

「そういう女には興味がない。」


「…イーチェンは私を好きなの?」

「今まで会ったどの女より気に入ってる。」


「…。じゃあ、私の前では私の知ってるイーチェンでいてよ。今のイーチェンは知らない人みたいで落ち着かないよ。」

「あのなぁ、これが俺の素だし、お前の知ってる俺は偽善者の偽物だ。俺は自分の国で演技はしない。そこは理解して受け入れろ。」


「うーん…慣れるしかないの?意地悪イーチェンに。」

イーチェンが頬をまた叩こうとした瞬間、僕は防御した。

「…お前。」


僕はお返しにイーチェンの頬を思い切りひっぱたいた。

「な…っ?!」

「私がやられっぱなしだと思ったら大間違いだ。イーチェンに支配なんかされない。私はあくまで対等だ。」


「…お前、本当に女か?」

「今はね。」

「…とんだ跳ねっ返りじゃないか。まさか俺を叩く女がいたとは…。」


「私は一度か二度殺されかけたことがある。だからちょっとやそっとの脅しや暴力には屈しないし、やられたらやりかえす。例え相手が誰でもだ。」

「…」

イーチェンが目を丸くしてこちらを見る。


「はははっ!」


「…イーチェン?」


「リネア、お前はやっぱり変な奴だ。」

そういってイーチェンが僕の頭を撫でた。僕の知っているイーチェンの笑顔だった。


「…やっと名前を呼んでくれたね。」

「…'お前'は嫌だったか?」

「知らない人みたいに感じたよ。」


イーチェンが僕を抱き締めた。

「…やっとリネアを独占できる。」

「…物凄い反則技だったけどね。」


「こうでもしなければ俺にチャンスはなかったからな。」

「…こうまでする程の価値もないんだけどなぁ。」

「それを決めるのは俺だ。」

そう言ってイーチェンが僕の頬にキスをした。



こうしてシアナ共和国での僕の捕虜(?)生活が始まることになった。



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