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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
エンゲル王国編
224/350

誘拐

ニコちゃんの病室から僕はチャーリーズヘ向かった。新しい店舗が開店して、イーチェンはそこのマネージャーとして働いていた。


僕は閉店まで店に入って手伝って、帰り道に僕は自分がこれからどうするかを正直にイーチェンに話した。彼ならきっと分かってくれると思っていた。


話を一通りすると、イーチェンが今まで見たことのないような冷たい目で僕を見て僕の腕をつかんだ。




「約束…したよな?」

「…」

「メルア大陸に一緒にいこうって。」

「うん。」



「俺は約束を守らないのが一番嫌いなんだ。」

「イーチェン…。」


「お前とメルア大陸に行く為に店も頑張ってきた。セルやミハイルともうまく付き合って、ニコライ大統領の治療にも協力した。それなのにお前は…、リスラ共和国にミハイルといる事を選ぶというのか?」


「まだそう決めた訳じゃないよ。イーチェン…なんかいつもと違うね。知らない人みたい。」

怖い。昔スクールで見た事のある冷たい目、僕の知らない顔だ…。



「俺が今までお前に見せていたのは本当の俺じゃないからな。」

イーチェンが僕の頬を撫でた。背筋が凍る。


「イーチェン…?」

「俺はお前をシアナ共和国へ連れていく。」


「ちょっと待ってよ、私の意思とかは無視?」

「無視する気はなかった。だがお前が俺の存在を無視するなら、俺にも考えがある。」


「…考えって…。イーチェンはなんで私といたいの?お金も権力もないのに。」

「ニコライ大統領の娘なんだろう?金も権力もあるじゃないか。」


「…それが目当てなの?」

「いや、俺はただ気に入ったものは自分のものにしないと気がすまないだけだ。お前は今まで会ったどの女より面白いからな。それにあのミハイルやフリードリヒから奪ったら楽しいと思わないか?」


「私をイーチェンのものにして、それでどうする気?だいたいどうやってそんな事をするつもり?私はシアナ共和国には行けないよ?」


「…どうすると思う?」

「まったくわからない。」




「…こうするんだ。」

そう言ってイーチェンはハンカチで僕の口許を抑えた。



しまった、睡眠薬か…。

まさか、イーチェンがこんな事をするなんて全く予想していなかった。僕以外みんな警戒していたのに、僕は絶対大丈夫だって疑わなかった。

朦朧とする意識の中、僕は馬車に乗せられ意識をなくした。





◇◇◇


バレエの稽古の後、父上の病院に戻ると父上が仕事をしていた。

彼は病院でもほぼ毎日仕事をしている。リスラ共和国に住んでいた頃、彼はほとんど家に帰らなかったから彼がこんなふうに仕事をしているのを見たことがなかった。

私も時間があると資料の作成を手伝うようになったが毎日すごい仕事量だ。父上は一見かなりふざけた性格をしているが今更ながらとても努力家だったと知った。


「ただいま」

「おかえりセルゲイ。リネアは?」


「リネアには会っていませんよ?こっちに来ているんですか?」

「うん、君とイーチェンに話があると出かけていったんだ。…今何時?」

「12時です。」


「…遅いな。」

「…何かあったのでしょうか?」

「…イーチェンに連絡とれる?」

「はい。」


私はイーチェンに連絡をする。

「…ごめん、遅くに。リネアが君に会いに店に行ったはずなんだ。…え?夜9時には帰り道でわかれた…?…そう、ありがとう。」



「父上…イーチェンとは夜9時にはわかれたそうです。」

「まずいな。アパートに誰か行かせよう。」

「…事件か事故に巻き込まれた可能性は?」


「うん、誘拐の可能性もある。彼女が私の養子になったことを知るものなら、それもありうるだろう。」

「そんな…。兄上に連絡しますか?」


「いや、今ミハイルに連絡しても彼にはどうする事もできない。とにかく警察を呼んで、すぐに探してもらおう。なんだか物凄く嫌な予感がする。」


「リネア…。」


警察が病院に来て、事情聴取を終えてからも私と父上は心配で寝られなかった。



「僕が外に行かせなければよかったんだ。」

「父上のせいではありません。とにかく、情報を待ちましょう。」


私や父上でさえこんなに狼狽えているんだ。

兄上やフリッツがこの事を知ったら何て思うか…。


「セルゲイ、明日から念のためイーチェンを見張って。」

「父上?」

「彼はリネアに会っている。その後で彼女はいなくなったんだ。」

「イーチェンを疑ってるんですか?」


「疑うような理由がないとは言い難い。僕のせいで…。ただ、イーチェンが犯人なら命は無事だ。殺人や身代金目的ではないからね。」

「父上…リネアと何があったか話してくれますか?」


父上の話を聞いたが、だからといってすぐにイーチェンを疑う事はできなかった。



次の日の夕方、イーチェンはスクールへ行って二つの店に出勤していると連絡を受けた。アパートには誰も行った形跡はなかったようだ。警察からはまだ何の情報もない。


夜、店に行きイーチェンに会った。彼もリネアを心配しているようだった。彼がリネアを誘拐するなんて信じられない。イーチェンはよく分からないところもあるけど、そこまでの事をするような奴じゃないはずだ。


「フリードリヒだったりして?」

「え?」


「リネアがミハイルを選ぶと聞いて、逆上して監禁したとか…。」


「フリッツはそういう事はしないと思う。私のまわりにそんな異常な事をする人間はいないはずだよ。」

私はイーチェンを見た。

イーチェンは顔色ひとつ変えない。


「それはそうだな。俺も探すのを協力しよう。」

「助かるよ。」

「明日から少し組織を使って探させてみる。俺も動くから店を数日あけるかもしれない。その間店の事は店長代理に任せてもいいか?」

「分かったよ。私も時々見に行くから。」

「ああ、助かる。」


リネア、どうか無事でいて…。

君がいなくなったら…なんて、そんな事、考えたくない…。


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