報告
僕が帰宅するとユーラがリビングで仕事をしていた。
「お帰り。」
「ただいま。」
「…食事は?」
「まだ。ユーラは?」
「うん、待っていたんだ。」
そう言ってユーラはスープとサラダとパンを用意してくれた。
「マルクたち、キャンプ楽しんでるかな?」
「そうだといいね、初めて自分たちから何かをしたいと言ったみたいだし。」
「…そうだね。」
食事を終えると今度はデザートとコーヒーが出てきた。
「ユーラ…。」
「何?」
「いい奥さんになれると思うよ…。」
「…何それ?」
…帰宅したらご飯とデザートまで出てきて、ユーラも忙しいはずなのにこの気遣いは何なんだ?
「ユーラは私に気を遣いいすぎじゃない?疲れない?」
「全然。疲れているのは君の方だろう?」
「…実家だ。」
「何?」
「ユーラといると実家にいる気がするんだよ。分かる?」
「今度は私が'おかん'だとでも言いたい訳?」
「そう、それ!母上だ!」
「…君がくつろげるのはいいとして母親の域まで到達したと言われたら喜べないな。」
「だって…快適なんだもん。」
「リネア…。デザートいらない?」
「いりますっ。ごめんなさい。」
「…で、父の件どうなったの?ずっと気になってたんだ。」
「そうだった。…あのね。」
僕はフリッツの所へ行った事、その後エンゲル王国でみんなと医療チームを組むことになった事、婚約の条件にニコちゃんが治療を受け入れる事、それから手術が成功したらレースや婚約の話をやめる事を話した。
「…シャーロット様まで協力してくれるの?」
「うん、あの人メルア大陸に行くのを楽しみにしてるしね。」
「…まさかルイーズに会うために…?」
「…多分。」
「…デイヴィッドさんやイーチェンも…か。何て言ったらいいのか。」
「私はフリッツに新薬を分けて貰えないか頼むつもりだったけど、フリッツに話したら話が大きくなって…。」
「…」
ユーラが顔に両手をあてた。
「…泣いてる?」
「泣いてないけど感動してる。イーチェンもデイヴィッドさんまで…。」
ユーラの座るソファーに僕も座ってユーラの頭を撫でた。
さらさらのユーラの髪。エンゲル王国へきてからずっと短いままだったけど最近忙しいせいか少し長めになって可愛い。
ユーラが僕の肩に頭をのせる。
「…フリッツにお礼をいわないとね。相変わらず彼は凄い行動力だ。」
「…フリッツだからね。」
「…フリッツには勝てないな。色々な意味で。」
「…フリッツとニコちゃんは別格だよ。超がつく変人だもん。」
「君には言われなくないってみんな思ってるはずだよ。」
「失礼だなあ。」
ユーラが微笑んだ。
涙で潤んだ瞳が綺麗で思わず見惚れてしまう。
「…ユーラは…ニコちゃんの仕事進んでる?」
「父の側近の人にもだいぶ慣れてきたからかなり仕事をふれるようになって落ち着いてきたよ。そういえば…ヤーパンとの国交記念式典に代理で参加をする事になりそうなんだけど、マルクとレナートと一緒に行く?」
「行きたい!いつ?」
「…再来月。スクール始まってすぐ休むのはまずいかな。」
「…そういえばさ来週からはじまるんだった。リスラ語やばいかも。」
「それだけ話せていれば大丈夫だよ。マルクとレナートも修学前スクールに入れようかと思って。彼らもずっと家にいるよりいいと思う。」
「そうだね。スクールに行くのが面倒になってきたな…。」
「駄目だよ、学業をおろそかにしたら。」
「ユーラはどうするの?」
「必要な授業だけ受けにいくつもり。」
「そういえばユーラは何を専攻してるの?エンゲル王国でも聞いてなかった。」
「…法学。」
「…そっか。やっぱり跡を継ぐつもりだったんだね。」
「…まあやりたいかやりたくないかと言われたらやりたくないと思ってたけど、私にはそれ以外の選択肢はないから。リネアは今も外交官を目指してるの?」
「最近はビジネスを始めたせいか経済学とかも興味があって。」
「じゃあ数学もきちんとやっておかないとね。」
「うっ…。」
「ヤーパンの件は君がちゃんと勉強できていることを確認したらにしよう。」
「頑張ります!」




