チーム結成
エンゲル王国についてすぐフリッツがセルを始めイーチェンとデイヴィッドさん、シャーロット様まで召集させてしまった。セルには予め僕たちの訪問の目的を伝えてある。
「大変お忙しい中、皆様の貴重なお時間頂きありがとうございます…。」
「リネア、堅苦しい。早く要件を言え。」
イーチェンにつっこまれた。
「では、早速要件を手短に話します。セルゲイ…。」
「はい。」
セルゲイが父親が癌を患っている事や、今のリスラ共和国の医療技術では彼を救えないこと、この話は限られた人しか知らない事を伝えた。
みんな困惑した顔で無言になった。
「…リネア、現状ロマノ大統領はどんな感じなんだ?」
最初にイーチェンが僕に質問をした。
「今のところ普通に話したりはできるよ。ただ治療そのものの体への負担も大きいから、かなりつらそうなんだ。」
「リネア…君がいきなり休学して何があったのか心配していたんだよ。まさかそんな事になっていたなんて。」
「…シャーロット様、私も挨拶もせず休学してすみません。」
「僕は昔から大統領のファンだったって話はしたよね?私のコネクションを使えば最先端の機械や経験豊富な医師を集める事は可能だと思う。」
「我が国でも今癌の特効薬の開発をしていて治験も進みある程度使える状況になっている事が確認された。リネアはそれを利用したいと言っているのだが…。」
「フリードリヒ殿下。シアナ共和国にもそれに近いも薬があるかもしれない。一度医療チームを結成し、何が最適かを検討する必要があるんじゃないか?」
「その通りだな。我々は医療の専門家ではないし、任せるべきだと思う。」
「そうだね…。場所は私の国を使うといい。そなたらの国からそれぞれ集まりやすいし国際言語で話せるし、こちらもある程度設備は用意できるはずだ。」
シャーロット様まで…。
「みんな…ありがとうございます。」
セルが頭を下げた。
「本当にありがとうございます。」
僕も続けた。
「期限はいつにする?」
「8月中にチームを結成し、9月から本格的に治療に入れたらありがたい。」
「なんとかしよう。」
「今回の一切の費用は父が負担します。プロジェクトは極秘で行うことをご協力頂けますか?」
「もちろんだ。大統領に何かあれば色々な国に影響するからな。」
「イーチェン…。」
「セルゲイも、リネアもこんな事ならもっと早く言って欲しかった。俺たちは友達だしビジネスパートナーだろ?」
「僕もだよ。メルア大陸で一緒にビジネスをする約束をしたじゃないか。」
「デイヴィッドさん…。」
「リネア、君は世界中で遊ぶつもりなのか?」
「シャーロット様、私は真面目にやっていますよ?」
「私もメルア大陸に行きたいと思ってるんだ。その計画をつぶさないよう早くミハイルの父親を治してしまおう。」
「…なんだリネア?このメンバー全員がメルア大陸に行く奴らなのか?」
フリッツが僕の肩に手をのせた。
「うん、あとルイとユーラもその予定。」
「…ずるい。」
「じゃあフリッツも短期留学できたら?」
「…考えておく。」
「フリッツは来なくていいから。ただでさえややこしいメンバーばかりなのにあんたがいたら騒がしくなるし。」
「セルゲイ、お前は俺を何だと思ってるんだ?!」
「…とりあえず、二人を無視して話を進めよう。」
僕はフリッツとセルを無視して他のメンバーと話を進めた。
何故か途中からフリッツが酒を持ってきてイーチェンがツマミを買いに行き飲み会が始まった。
シャーロット様が一番酒に強かった事、フリッツとイーチェンが気があいそうだったこと、この日は色々な発見があった。
僕はフリッツを乗せた飛行機でフレーデル王国を経由し、そのままリスラ共和国へ戻ることにした。
「寄っていかないのか?」
「うん、早くニコちゃんに話を伝えたいから。…フリッツ本当にありがとう、フリッツのお陰だよ。」
「お前のお陰だろ?俺はついてきただけだ。」
「…でもフリッツがいなかったらみんなに助けて貰おうとは思わなかったよ。」
「…お前さ、しばらくリスラ共和国にいるんだろ?」
「うん?」
「でまたミハイルと二人っきりになるんだよな?」
「ユーラもかなり忙しいから実際私が一緒にいるのは子ども二人なんだけどね。」
「はー…。仕方ないが嫌だ。しかも…イーチェンという奴。」
「イーチェンがどうしたの?」
「あいつ、俺とちょっとキャラ被ってないか?」
「…似てるところはあるけどイーチェンはもっとまともだよ?イーチェンに失礼だ。っ…痛いよっ。」
ユーラが僕の頬をつねった。
「あいつとメルア大陸でも一緒にいるんだろ?あいつは前回の印象より危険じゃないと思ったがお前と気があいそうだし、そういう意味で心配だ。」
「心配しすぎだよ。」
「お前が言うな!…とにかくまずミハイルだ。なるべく二人にならないように。食べ物につられないように、分かったな?」
「また犬扱いか…。」
飛行機はフレーデル王国でフリッツを降ろして、リスラ共和国へ戻ると、僕はその足ですぐ病院へ向かった。病室とは思えないスイートルームのような部屋でニコちゃんは仕事をしながら治療を受けている。
「…つまり、僕がその世界チームの治療を受ける事が婚約のサインの条件だと。」
「そう、その治療により完治が認められたらユーラと婚約しない事も条件にしてもらう。それからレースの破棄も、ニコちゃんの側室の話もね。」
「リネア…。君の行動はめちゃくちゃだな。」
「ニコちゃんに言われたくない。」
「まさか世界中を巻き込んでくるとは思わなかったよ。」
「使えるものはなんでも使えばいいと思って。あ、支払いはよろしくね。セルがそう言ってたから。」
「恐ろしい額の治療費だろうな。」
ニコちゃんが僕の頭を撫でた。
「リネア…、ありがとう、やってみるよ。どうせ死ぬならやらない理由がない。」
「うん、ニコちゃんがいないと私も嫌だよ。早く治して。」
ニコちゃんが僕を抱き締めた。
「リネア…。感謝する。」
「治ったらみんなにもお礼を伝えてね。シャーロット様まで協力してくれるらしいから。」
「…君の交友関係には驚くよ。しかもこんなふうにすぐに動いてくれる関係が凄い。君の人柄のせいだな。」
「みんなニコちゃんを早く治してメルア大陸で遊びたいらしいから…。」
「…責任重大だね。」
「そうだよ。みんなの留学がニコちゃんにかかってる。」
「僕の治療の間、君はどうするの?」
「エンゲル王国にはセルがいるからニコちゃんはセルに任せて私はマルクとレナート、それからユーラをサポートするつもり。どちらにしても王制に変えるんでしょ?」
「うん、選挙は来年1月を予定している。」
「分かった。ニコちゃんは医療の準備が整い次第移動するから、それまでにこちらの事をある程度やっておいてね。」
「はい。…リネアもエンゲル王国に来て欲しかったなぁ。」
「不安ならアリーナを行かせようか?」
「彼女に弱いところは見せられないよ。君は僕をある程度理解してくれてるし、話しも合うし…。」
「私も行ける時はお見舞いに行くから。」
「うん、待ってる。」
「治ったら新しい彼女でも探したら?」
「そうだね…。まだ僕も若いしね?」
「そうだよ。格好いいし、面白いし…。」
「リネア、僕が治ったら僕を彼氏になんてどう?対象になる?」
「冗談きついよ。」
「冷たいっ。」
「そんなくだらない冗談言えるならまだまだ大丈夫だね。じゃあ私は今からユーラの所へ行くから。」
「うん、またね。ミハイルによろしく。」
なんだったんだ?
病気になって気弱になっているんだろうか…?




