フレーデル王国にて
フリッツには前日に行く事を伝えて急遽時間を作ってもらった。
到着してすぐ僕は要件をまとめてフリッツに話した。
「…他言無用だよ。」
「…なんて言ったらいいのか…。お前らしいと言うか…。それで、ここには別れを告げに来たのか?」
「まあ、そうなる可能性がある事を伝えにきたのと、もう一つは、フレーデル王国で研究している薬について聞きたかったんだ。留学していた時、国家機密で進めている医療プロジェクトの話があったのを思い出して…。癌の特効薬はないの?」
「あるにはあるが開発中で承認はおりていないぞ?」
「治験は?」
「治験は進んでいる。」
「治験の人、一人追加してくれない?」
「…やばくないか?責任とれないぞ?」
「あの言い方だと先は長くないんじゃないかと思う。やらせてみたい。」
「…とんでもない奴だな。こちらもリスクがあるんだ。条件がある。」
「うん。」
「まず、何かあった時の補償はできない事、それから、成功したら、お前を自由にしてもらう事を約束して欲しい。」
「伝えるよ。…うまくいくかは分からないけどね。フリッツは成功したら私を婚約者にしたいとか言わないんだね。」
「言う必要ないだろ?お前は俺の恋人なんだし。」
「…。」
フリッツの言葉に良心が痛んだ。
「しかしなぁ、ミハイルがお前にそんなふうにまで言うなんて…。よっぽどお前を大切に思っている証拠だ。」
「…ユーラは…私にとっても特別な存在だよ。」
フリッツが僕の目を見て眉をひそめた。
「リネア…。お前、まさか…?」
「…。」
フリッツが僕の腕をつかんだ。
「リネア…。お前…ミハイルの事を…?」
「…そうだと言ったら…どうする?」
フリッツが僕の腕をつかんだままソファーに僕を押し倒した。
「…嘘だと言ってくれ…。」
「フリッツへの気持ちは変わらないんだよ。今でもフリッツとの将来を望んでいる。…だけどあまりにもユーラといる時間が長すぎて、私はこのままだと…。」
フリッツが僕の口を塞いだ。
「…ミハイルとしたのか?」
「してないよ。フリッツとしかしてない。」
「…よかった…。」
フリッツが僕を抱き締めた。
「フリッツ…。ごめん、気持ち的には浮気をした気分なんだ。キスはしたし。」
「ミハイルに口説かれた上、四六時中一緒にいてそういう気を起こすなというのに無理がある。ただ、理解はできるが許せるかと言うと…話は別だ。」
「…別れる?」
「まさか。悪い子にはお仕置きをするまでだ。お前、いつまでこっちに?」
「明日にはエンゲル王国に行くつもり。」
「じゃあ明日までしっかりしつけてやらないとな?」
フリッツが物凄く悪そうな顔で笑った。
◇◇◇
フリッツの寝室につれていかれてからめちゃくちゃ意地悪をされて僕はおかしくなりそうだった。
「…フリッツ…もう意地悪しないで…。」
「簡単には許してやらない。俺にはお前しかいないのに、お前はそれを分かってない。簡単に別れるとか言うし。」
「ごめん…。」
「謝るな、余計腹が立つ。」
「…だけど、ニコちゃんの体調が戻らなかったら…その時は…。」
「リネアの馬鹿。なんでお前はそんなお人好しなんだ。」
「だって…。…っ。あっ…。フリッツ…。お願い…。」
「お前は俺といるのが一番合ってるんだ、そうだろ?」
「私だってそう思ってるけど…。んっ…。」
フリッツの攻撃が…やばすぎる。
「リネア、お前はどうしたい?ミハイルといたいのか?」
「…そういう訳じゃ…。だけどニコちゃんに何かあったら、私はユーラを放ってはおけない。」
「お前は…。」
フリッツが僕に深いキスをした。
「簡単に諦めるな。お前らしくない。」
「…。」
「世界最高の医療チームを結成させればいいんだろう?俺たちがやれないと思うか?」
「…」
「お前、なんの為の友人だ?お前にはたくさんの国の権力者の友人がいるじゃないか。エンゲル王国、シアナ共和国、メルア大陸、金でも権力でも使って治してやればいい。俺は明日朝とりあえず開発中の薬を確認するから、明日エンゲル王国へ行く時に同行させろ。分かったな?」
「…フリッツ…。」
「お前が俺を諦めても俺がそれを許さないんだ。」
「浮気をしても?」
「しても。…というかさせないし。俺にはお前しかいないからな。」
「…フリッツは私の話を聞いたら諦めるとばかり思っていたよ。仕事や国が一番の人だし、恋愛に振り回されたりはしないんだと思ってた。意外だったな…。」
「以前の俺ならそうだったけど、今は違う。俺はミハイルより執着心も嫉妬心も強いかもしれない。」
「…それやばくない?私が無理かも…。」
「もう遅い。俺はお前と一緒になると決めたからお前にはそれ以外の選択肢はない。」
なんか…フリッツって…。こんな人だったっけ?
めちゃくちゃ自分勝手じゃないか。
「…ミハイルは馬鹿だ。俺があいつなら、さんざんお前を手にいれるために策を練っておきながらいざ手に入りそうになった所で気遣いをみせ、身を引くような真似はしない。そもそも好きな女と一緒にいて手を出さないとかストイックすぎるだろ?」
「…」
そう言えばこの人ヴィルの不在に僕を狙った実積が…。
「俺から言わせればミハイルの父親がおまえが養子をやめるのを断った感覚の方が理解できる。」
「そう…?」
「だってお前込みの条件でスモーランドを救ったんだろ?」
「うん。」
「じゃあ合意の上での取引なんだからそれを今になって取り消す理由がない。」
「まあね…。」
「それに俺は好きな女が幸せならそれでいい、とかいう独りよがりの感覚は持ち合わせていない。一緒に幸せじゃなきゃ意味がないだろう?その為にお互い努力をしているのに。」
「…まだまだフリッツの知らないところがある事を知ったよ。手強いってことも分かった。」
「今更?」
「今更。…かなり愛が重い。」
「諦めろ。」
そう言ってフリッツは夜が明けるまで僕を寝かさなかった。
僕たちがもっと一緒にいれたら…。
フリッツは僕を抱き締めながら寝てしまったらしい。
忙しくて疲れているんだろうな…。




